第93話「ビーチバレー決戦」
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本編
彼女は終始無言無表情。
いや、若干頭をひねってはいたか。
あんま見るのもあれなので、二人が準備してるのを一緒に見て、時折ちらちらと盗み見た。
やっぱ白くてすんげー可愛かった。
初めて見る太腿は凶悪なしなやかさで、熱とは別のもので倒れてしまいそうになった。
肩もすごい繊細。
胸も主張し過ぎない大和撫子な魅力に溢れていた。
ああっ……残念なのが、髪が長くて毛量が凄いので背中と……お尻がまったく見えないことなのだが。
――て僕は何を言っているのだろうか?
そんなことを思ってるうちにコートが完成し、かくして隼人、神龍ペアVS僕、暗戸さんペアによるビーチバレーが始まった。
じゃんけんの末、先攻は隼人チームになる。
「行っくよー」
隼人が掛け声と共に、軽いサーブを打つ。
緩くボールが弧を描いて、こちらの陣地に落ちてくる。
それを彼女がレシーブで受け、僕がトスを上げる。
太陽の位置と重なり、ボールが一瞬逆光で見えなくなり――
それと重なるように、彼女の影が舞い上がった。
「……うぇ?」
変な声が出る。
それくらい、彼女は高く舞い上がっていた。
……一メートルくらい跳んでないか、あれ?
彼女の影はそのまま空中で、まるで弓のように大きくしなり――
どん、
と重たい音を立て、前方に一回転した。
同時にボールはレーザーのように一直線に吹き飛び、隼人の左隣の砂の上にざくっ、と深々と突き刺さる。
隼人は一歩も動けなかった。
神龍もぼんやりと彼女が飛んでた辺りを見つめていた。
ボールはその半ばまで砂に埋もれ、ぎゅるぎゅると回転を続ける。
打ったというよりも、"撃ち落とされた"って言った方が正確かもしれない。
……なんだあれ。
僕は呆然と、一回転して着地した彼女を見つめる。
隼人は困ったように笑っている。
一方の神龍はじっ、とそのボールを見つめていたが、不意にニヤ、と闘争心剥き出しの笑みをその顔に浮かべた。
……とうそうしん、剥き出し?
「来い、白柳」
気になる表情は変えないまま、神龍がボールをこちらに投げる。
何となくヤな予感はしたが、しょうがないのでボールを受け取り後ろのラインまで下がり、ほどほどの力でサーブを打った。
神龍がそれを拾い、隼人がトスを上げる。
それを神龍が――って!?
神龍は思っくそ跳んでいた。
それこそ顔を真っ赤にして、体全部伸ばせるところは伸ばして鳥のように羽ばたいてた。
元々身長が高いから、ネットなんて悠々見下ろしてる。
そして――
力一杯打ってきやがった!
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