お嬢ちゃん

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 おばちゃんはいつものように豪快に笑いながら対応している。

「あらぁ、変わった格好してるのねー」

 とか

「手袋までしちゃって……どっかのお嬢さん?」

 などと、いつものように陽気な声が購買部に響く。
 ある意味でおばちゃんはこの学校のマスコットだと思う。

 対して彼女は、やっぱりひたすらに寡黙だった。
 無言で提示された金額をバッグから出した財布から取り出し、無言でお釣りを受け取り、質問に対しては頷くか首を横に振るかで答えていた。

 しかしその仕草は、僕にはお高くとまっている、というよりも、ただ単に愛想の振り方を知らないように見えた。
 その視線は伏せがちで、うまく答えられないことに対する申し訳ないという雰囲気が漂っていた。

 だからおばちゃんも、結局彼女が最後まで無言で通してしまっても気にせずにこにこ笑い、

「まいどー! またね、お譲ちゃん!」

 という声で僕たちを送ってくれた。
 その気持ちは、僕もわかった。



 ――で、元の場所に戻ってそのパンを食べてるわけだが。
 なんか、思ってたよか幼い感じの印象を受けるなぁ……と僕は思った。

 並んで歩いた時に見た彼女の身長は僕の肩にも届かないくらいのもので、手を伸ばして頭を置くのにちょうどいいなとか思った。
 間近で見ると、思ってたよりも手足は華奢で、顔は小さかった。
 白いきめ細かく柔らかそうな肌は、凄く触ってみたくなった。

 そして、さっきのまるで子供みたいな無邪気な反応とおばちゃんへの対応は勝手に思い描いていた人形みたいな印象を払拭するのに充分なものだった。

 なんか、最初に感じてたミステリアスな感じなんてなくなったなぁ。
 僕はすっかり肩の力が抜けて、のんびりと彼女の食べる様子を見ていた。

「おいしい?」


 彼女はこちらを見向きもせずに頷くことのみで答えて、一心不乱に食事に集中していた。
 彼女が最後の一欠片を口の中に入れる。

 それをもぐもぐと大きく租借して飲み込む。
 頃合いを見計らい僕は尋ねる。

「あのさ」

 少し不思議そうな顔をしてこちらを向く。

「そのバッグの中に、」

 頷く。

「骨…………なんて、入ってないよね? あははははっ」

 訊いてる途中で冷静に考え直し、『まさか入ってるわけないだろ?』と訊いたこと自体が恥ずかしくなり、笑って誤魔化したあと『ごめん、ごめん。変なこと聞いて』と続けるつもりだった。

 ――が、

「…………」

 頷く。

「はは。ご…………え?」

 一人冗談のような空気の中にいた僕は、なぜか重くなってしまったその空気の中での彼女のその反応を、理解することが出来なかった。
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