第94話「バズーカ砲 vs レーザー光線」
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本編
神龍はこんな細くて長い体をしてるくせに、力は強い。
ある日アリーナで、逆立ちして腕立て伏せを始めたのを見た時は、僕も目を疑った。
そんなやつの手が触れた瞬間、ボールがぺちゃんこに潰れてるのが見えた。
まるで煎餅だ。
どんだけ力込めてんだ?
そのまま、まるで爆発したかのような勢いでボールはぶっ飛んでくる。
まずい。
狙いはコートの右隅。
僕はネットのすぐ傍。
彼女もコートの左隅にいるから、とても間に合わ――
炸裂音が耳を打った。
続いて視界の上方に舞い上がるボール。
……え?
呆気にとられ、僕は後ろを振り返る。
うわぁ……
そこには砂が盛大に舞い上がっていた。
もうもうと視界を遮るその中に、確かにさっきまでは反対側にいたはずの彼女が、右手を伸ばして倒れこんでる。
……凄い。
あの打たれた瞬間、まさに電撃的ともいえる反射速度で体ごと飛びついてボールを拾ったのだ。
普段の彼女からは想像もつかないその運動神経に――
キッ、と彼女が僕を睨む。
その光景に見とれていた僕はハッ、と我に返る。
慌てて走っていって、上がった球をトスで彼女に向けて上げた。
それに合わせて彼女はまたも宙高く舞い上がり、
どん、
と重たい音を立て、今度は神龍の真右の空間に撃ち込む。
レーザーのように突き刺さろうとする高速の球。
神龍が体の向きをくるっ、と変え、レシーブで打ち上げた。
弾けるような音。
宙に舞い上がるボール。
まだ闘いは続くかと思われた。
が――
とん、とん……とボールは二、三度バウンドして、砂の上で停止した。
今度は打ち上げた方向が悪かった。
隼人のはるか後方。
それに隼人自身もその光景に見入っていたため、反応ができなかった。
彼女が一回転して着地する。
まるで曲芸師だ。
彼女が神龍を見て、笑う。
神龍も口元を吊り上げて、答える。
パチパチパチ、と僕と隼人は手を叩く。
ついでに浅瀬の家族も拍手をしてくれた。
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