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第68話「発作」

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 僕は痛む頭を両手で押さえ、目を瞑ったまま地面に片膝をついた。
 耳鳴りがし、意識がぼやける。
 それを頭を振って抑えてなんとか顔を上げて、瞼を開き、そこで僕は動きを止めた。

 彼女が猛烈な勢いで頭を掻き毟っていた。
 目を堅く瞑って俯きながら、がしがしがしがしと両手をその長い髪の中で暴れ回らせる。
 何本も髪が抜け、そこには爪が食い込んだのだろう赤い血が付着していた。

 彼女が膝をついた。
 そのまま地面に額を叩きつけた。

 僕は言葉を失った。
 何度もごんごんと頭を叩きつける彼女。

 帽子は落ち、長い髪はカーテンのようにその顔を覆い、だけどその地面には真っ赤な血が付着していく。

「げええええっ」

 僕は目を剥いた。
 彼女がいきなり吐いた。

 そしてそのまま地面に転がり、白目を剥いて痙攣を始めた。
 彼女の長い髪が、黒装束が、砂で、吐瀉物で、白く汚れていく。

 そこまで見て、僕は動いた。
 自分でも圧倒的に遅かったと思う。

「暗戸さんっ!」

 叫びながら駆け寄り、肩を掴んで引き起こす。


 いきなり彼女が思い切り目を見開いた。
 突然のそれに、一瞬心臓が止まるかと思った。
 なんとか自制心を働かせ、彼女に呼びかける。

「暗戸さん、しっかりしてっ。落ち着いてっ」

 彼女はぶんぶんと頭を振り、体を折り曲げうずくまろうとする。
 それでも僕は根気強く言葉をかけ続けた。
 それ以外、やるべきことがわからなかった。

 突然彼女の動きが止まり、体の力が抜ける。

「暗戸さん!」

 呼び掛ける。
 あまりの唐突ぶりとぐったりした様子に、一瞬死んだのかと思った。

 左手の脈を取る。
 ちゃんと血は流れていた。

 気づくと、周りに人だかりが出来ていた。
 無理もない。
 真っ昼間に往来の真ん中で叫んだり倒れたりすれば人も集まる。

 でも、今はそれを気にしている余裕はない。
 彼女がとりあえず落ち着いたことに安堵して、顔を見る。

 心臓が跳ねた。

 彼女は泣いていた。
 彼女の頬には、ハッキリと涙が伝っていた。

 ……何が、

 彼女は虚ろに目を開き、以前のような無表情でこちらを見ている。

 ……何が、あったんだよ。
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