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ⅩⅩⅣ/処女検査⑤

2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 ベトはただ、剣を背負って城の中を進んでいた。

 愛剣を取り戻すと、随分気持ちは楽になった。
 この剣を持って、負けたことはない。
 まあ負け=即・死だから、それは当然といえば当然だったが。

 この先なにがあっても、この相棒と一緒ならという気分にもなっていた。

「……どこだ、アレ?」

 廊下を進み、壁に張り付き、ベトは口中で呟いた。

 先ほどの出来事が、気にかかっていた。
 とつぜん目の前に現れ、聞いたことがないことをまくしたて、この愛剣を渡してくれて――まぁそれは助かったが、そしてどこかへ消えてしまった。

 なぜ場所を、言わなかった?

 助けてやると、言ったのに。

「どこにいる、アレ……」

 もうあれから、かなりの時間が経っているはずだ。
 腹の減り具合でわかる。
 いい加減、力が入りにくくなってくる頃合いだし。
 ドンパチするならそろそろ出くわして欲しいんだが――

 人の気配。

 ベトは息をひそめ、気配を殺し、様子を窺った。
 誰か?
 また貴族か?
 手を脇と腰の間に、差し込む。
 暗殺なら、こっちの方が都合がいい。

 ざっ、ざっ、といくつもの足音が迫ってきた。
 ひとりじゃない。
 これは10人以上の行進だと判断し、ベトは咄嗟に窓から身を乗り出し、両手で枠に手を引っ掛けて身体を支えた。
 そして目だけを、覗かせた。

 銀の美しい長髪に、目を奪われた。

「ア、レ……?」

 アレは十数人もの偉そうな格好を率いるような格好で、歩いていた。
 いや実際形だけ見れば、引っ立てられていると言った方が正しいだろう。

 一瞬助けに飛び出そうかと考えた。

 しかしそれにしては妙な空気を感じた。

「…………」

 1秒未満考え、ベトはあとを追うことにした。
 頃合いを見図り、廊下に着地する。
 ある程度の距離を保てば、まず見つからない自信はある。

 アレはじっと、前だけを見ていた。
 振り返る様子はない。

 いや違う、とベトは気づいた。
 あれは様子が無いのではなく、余裕がないのだと。





 張り詰めている。
 珍しいと思った。
 しかしそれは当然だとも思った。

 元々あの子は、強いわけじゃない。
 だが使命感に体中を縛りつけて動いている――と、ベトは一人解釈していた。
 多分に理解が難しいところもあるが、人がひとを完全に理解することは難しい。
 それは自身においてもそうだし。

 だがそれにもまして、今日のアレには余裕がまったくなかった。
 張り詰めた気配が、こちらまで伝わってくる。

 ――なにを狙っている、アレ?

 不安が、胸を覆っていくようだった。
 あのアレがここまで覚悟を決めている状況。

 バカなことはしてくれるなよ?
 ベトは初めて祈った。

 しかし従者を引き連れた様な形のアレの行進は止まらず、廊下を進み、その先の巨大な扉は開かれ――

 今まで見た中で、それは最大の広さを誇っていた。

 端から端までが、視界に収まりきれない。
 そして圧倒的な豪奢さで飾りつくされていた。
 金銀財宝が置かれ、赤い絨毯は高価なもので、かしずく本物の従者たちの数はとても数え切れるものではなかった。

 その最高峰に、その人物は君臨していた。

「――なんだ?」

 まるで人を虫けらか何かのように見ている、その視線。
 玉座にふんぞり返り、肘かけに頬杖をつき、左右から半裸の美女に扇で仰がせているその人物が誰なのか、わからないわけはなかった。

「申し上げます、国王陛下エリオム十四世様!」

 アレのすぐそばを歩いていた白髪の男が、声をあげた。
 見るからに、それは裁判官の服装をしていた。
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