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ⅩⅩⅡ/魔女裁判②

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 アレの言葉に、傍聴席の聴衆たちは言葉を失った。
 一部にはざわめき、彼女の罵る言葉を発している者もいる。

 そして裁判長の席に座るフィマールは、再度尋ねた。

「――お前は、魔女ではないのかね?」

「わたしは、神の使いです。魔女などではありません」

 笑顔。
 鉄壁の。
 決して崩れない。

 それに、見ている者たちは寒気がする思いがした。
 傍聴席には既に200近くの人間たちが取り囲んでいる。
 席の高さは3メートル近く。
 さらにみな絢爛豪華な装いに身を包み、アレは粗末で着古されて汚れた元は白いであろうローブひとつで、足元には靴すらなし。

 そして手に杖を持って、やっという状態で立っている。
 周りには二人の警備が固めて、向こうを張る裁判官は自分を含めて、経験豊富にして老獪を自負する長老格が三人。

 それに対して、まさか笑っていられる者がいようとは。
 フィマールは自慢の白ひげをさすり、

「ほう、神の使いか。ならば神は、お前になにか使命を与えたというのか?」

「はい。わたしに、世界を変えろと」

 今度は決定的に、傍聴席が騒乱に変わった。
 口々に何事かを――というよりなにごとか、と喚いている。
 こうなれば立場上、

「静粛に、静粛に!」

 ゴンゴン、と木槌を打ち鳴らす。
 それに静寂が戻ってくる。
 だがしかし余韻は確実に残っているようだった。
 それはまぁ当然だろう。

 なによりフィマールも、動揺を抑え切れてはいなかったのだから。

「娘よ。世界を変える、といったな?」

「はい、いいました」

「して、それは世界のなにを? どのように? 変えるという意味だ?」

「それはわかりません」

 笑顔でいってのけた。
 それに今度は、聴衆から怒号が巻き起こる。

「ふざけんなッ!」
「いい加減にしろ、この魔女が!」
「なにが世界を変える、なにが神の使いだ!」
「なにひとつまともにモノを言えないのか!?」

「静粛にっ!」

 木槌を鳴らすが、今度はなかなか静まらなかった。
 それだけ今の発言が、聴衆の怒りを煽るものだったということだろう。

 それはフィマールにしても、同じものだった。





「……娘、いまわからん、と言ったか?」

「はい、いいました」

「それで、どう変えるというのだ?」

「わかりません」

「……すまんが、わしにはお前がなにをいっているのかわからんのだが。わしにもわかるように説明してくれるか?」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、すまんな心配させて……」

 妙な光景だった。
 裁かれているはずのアレの方が、裁く方の三人の裁判官の中心にいて額を押さえるフィマールを気遣っている。
 それに聴衆たちは、先ほどとは毛色の違うざわめきを始めた。

「それで、今のはどういう意味かね?」

「あ、はい。だからわたしはですね、世界を変えるというただひとつの意思の元に動くだけなんです。方法なんて、わかりません。ただ神のご意思に、従うだけです」

「むぅ……」

 頭を抱える。
 なるほど、今までの娘とはまったく違うことは確かだった。
 まずこの状況に物怖じしないことが尋常ではない。
 さらにその行動指針も理解できない。

 この子をどう裁くべきか、実際悩むところだった。
 まずは、この辺りから始めるか。

「……お前は、神のお告げを聞いたのか?」

「聞いていません」

「ならばなぜ、神の使いなのだ?」

「神と契約したからです」

「契約?」

「はい」

「それはどういった契約だ?」

「この命と引き換えに、世界を変えると」

 聴衆がざわめく。
 口ぐちに、なにか言い合っている。

 フィマールは続ける。

「命と引き換えだと? それはいったい、どういう意味だ?」

「わたし一度、死んでるんです」

 聴衆が、大きくざわめく。
 それにフィマールも目を瞬かせる。

 一度死んでいる?
 この娘が?

 だとすれば、ひょっとして――

「……娘、お前はもしかして――」

「なんですか?」

 娘に変化は見られない。
 変化が無い。
 おかしい。
 異常だ。

 そして契約、という単語。
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