Ⅵ/急襲③

2019年11月17日

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 大上段にこちらの背中を狙っていた敵兵の腹に、突き立てる。
 鎧を貫き、そして背中に生えた。
 狙いと使い方さえ間違えなければ、まだ刃物としての扱い方も可能だった。

 戦場では常に360°、全方位に注意を配らなければならない。
 それは視覚だけでは当然足りるものじゃない。
 聴覚に加えて、嗅覚、さらには風の向きを触覚で感じ、なにより直感を研ぎ澄まさなければならない。

 ピリピリとした、緊張感。

 色がない世界に来てしまったような、集中力の高まり。

 考えるなんて、無駄だ。

「らァ!!」

 袈裟に、敵兵の盾の上から打ちこむ。
 その重みに敵兵は片膝をつく。

 細かい技術がないから、武器に大剣を選んだ。
 多少雑な攻撃でも、有効に持っていくことができる。
 何より力がモノをいう。シンプルだ。

 だからいい。

 だから、生き残れた。

「ぐぅう……ああア!!」

 さらに上から力を加え、盾ごと相手を押し込み、そのまま地面に叩き、潰す。
 敵兵は強烈な勢いで兜ごと頭を地面に叩きつけられ、脳味噌を強烈にシェイクされ、そのまま動かなくなる。
 さらに喉に、剣を――

 返り血に、目を瞑った。

「ハァ、ハァ、ハァ……べっ」

 口に溜まった血と一緒に、吐きだす。
 いつ切ったかなどまったくわからない。
 気にもならない。

 そんなこと、どうでもいい。

 次――

「おい、貴様!」

 視線を巡らせようとしたベトに、不意に声が掛かった。
 別に珍しいことでもない。
 そちらへ目を向ける。

 馬に乗った大柄な男が、戦斧(バトル・アックス)を肩に乗せてこちらを睥睨していた。





「たかだか傭兵風情が、ようも我が栄光の餓狼兵団(がろうへいだん)の同志たちをこうも殺してくれたものよ……前に出ろ! 一対一の決闘を申し込む!」

 ほらきた。

 ベトは敵に悟られぬ程度の、微かな笑みをその口元に浮かべた。
 大剣を、カチャリと両手で握り直す。

「あぁ、いいぜ……やろうぜ、男の勝負だ」

「おうよ! 決闘こそ男の本懐!」

 くす、とベトは笑う。
 バカだ。
 こちらの狙いに気づくこともなく、バカな幻想に捕われている。
 こういうバカは本当に扱いやすい。

 大剣を、正眼に構える。
 それを開始と見たか馬上の大男は戦斧を大上段に構え、

「では――行くぞォ!!」

 馬を駆り、突撃してくる。
 まったく、騎馬のくせに歩兵と尋常な勝負もくそもないよな……とベトは嘲り――

 思い切り、横っ跳び。
 馬の進路から、離脱する。

 そして地面を滑り馬とすれ違いざま、思い切り剣を後ろに振りかぶり――

 馬の前足を、叩っ切る。

「ヒ、ヒヒィ――――ンッ!」

「っ、お、ぬお、落ち着……ぐぉお!?」

 足首の一番細いところを狙った一撃。
 何度も何度も練習し、そして実践を積み重ねた熟練の技だ。

 馬は当然のようにバランスを失い、倒れ、そして乗っていた大男は、落馬する。
 目を回し、頭を押さえている。

 それを上からうすら笑いで、ベトは見下ろす。

「――どうした? 随分と戸惑ってるみたいだが?」

 それに気づいた大男は屈辱に歯噛みして顔を上げ、

「ぐ、ぉ……き、貴様我が栄光の黒騎士号をよくも……!」

「あの世でも言ってろ」

 大剣、一閃。

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