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ⅩⅧ/哀しい笑顔①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 あえていえば、彼女に聞いてしまいたかった。

 他人任せだった人生と、こうして自分で選びとっている人生のどちらが幸せかと。
 それが出来ない自分に、結局は不自由さを感じるしかなかったが。

「……きたか。思ったよりも早か――いや、予想通りか」

 それはあくまで希望的観測を含む予定日数だ。
 事実はこの通り。

 ベトは普段よりも二時間は早く目覚めた原因――窓の外へと、寝ぼけ眼を向ける。

「……これはこれは朝から、団体さんのご到着で」

 口元に、笑みが作られる。

 そこには絢爛豪華な飾りつけがされた白馬黒馬なかには茶馬に乗ったこれまた豪奢無欠な鎧を着込んだ騎士様たちの大名行列だった。
 その数ざっと見ても、50はいる。
 戦闘でもないのに、大仰しいことこのうえなしだった。
 おかげで朝から飯の準備をしてた仲間たち4名が右往左往して怯えている。

 戦況は、拮抗している。
 実際どんな与太話だろうと、戦力になると聞けば下にも置かぬおもてなしで有無を言わさぬ連行を迫り、馬畜生以下の扱いで駆り出されるのだろう。

「胸糞わりぃ」

 ベトは呟き、手早く装備を整えて、ドアに向かう。
 相手がきちんと身なりを整えている以上、こちらもそれなりの支度が必要だろう。

 そして下で未だ寝転げている同居人に、

「おい……おい、あんた」

「ふにゃむにゅ……ふぁい?」

 どこまで平和的リアクションだった。
 相変わらず緊張感がないが、今日はそんなことを言っている場合じゃない。

 手早くぺちぺち頬をはたいて、

「おい、おいおいおいおい」

「ったい、たいたいたいたい痛いよベトォ……」

「お、もう起きたか?」

「お腹痛いよォ、もう食べられない……むにゃ」

「はいべたなオチをどうも……っと」

 物理的な痛みには耐性が出来てしまったような厄介なアレの鼻と口を、両手で摘む。
 そのまましばらく放置。

 ふんふふーん、と鼻唄なぞ口ずさむ。
 傭兵仲間に伝わる伝統的なものらしく、歌詞は一切不明。
 おそらくは勇気を喚起しているものかと。

「――――――っぷあああ!」

「お、反応あり」

「くはっ、かはっ、ごは、ぐぇ……おええぇぇええええ!」

「うあ、あんたってなにえづきやすいタイプ?」

「へ……べ、ベト?」

 涙目で肩を激しく上下させて咳き込むアレは、そこでようやく目の前に立って自分に色々悪戯する人物に気づいた。
 だがここにやってきて、ベトが自分を起こしたことは初めてのことだった。
 だから状況が――まぁ元から意味不明な状況だが――掴めず、ひたすら咽ながら疑問符をいくつも浮かべている。

 それにベトは、初めて出会った時を彷彿とさせる姿――身を屈め、覗き込むように送る笑みを、送った。

「あんたに……チャンスが、巡ってきたぜ?」

「チャンス、ですか?」

「ああ、世界を変えられるかもしれない、チャンスだ」

 アレはベトを見上げたまま、胸に手をやった。
 そこに至るのは期待か、不安か、ただの動揺なのか――一瞬だけ思いを巡らせ、ベトは言った。

「軍隊が来てる。あんたの力を見込んでだ。ついていけば、あんたは兵器として戦場に駆り出されるだろう。そしてあんたの力が本当に悪魔のものだと言うなら、たぶんこの戦争こっちが勝つだろう。そうすれば世界は変わるかもな。戦争のために向けていた生産力を国力に回し、人々も自活し、国は豊かになるかもしれない。どうする?」

 あまりに端的といえば端的な問いかけ。
 そして無知になものには残酷ともいえる説明。

 ベト自身、この言葉の意味はわからなかった。
 だがこうしなければならない、という衝動にかられてやっていた。

 この結果どうなればいい、という意図すらない。
 もしついていくなら、厄介払いが出来る。
 自分たちの仕事はなくなるかもしれないが、祖国を捨てればことたりる。

 戦争なんてどこにでもある。
 逆に残るというなら、それはそれで面白くなるかもしれない。
 逆賊として狙われ、この力がどこまで通じるか、自分とどこで野垂れ死ぬか。どの道まともな道は残されないだろう。
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