Ⅱ/不自由③

2020年2月16日

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 プライヤはその唐突な質問に眉ひとつひそめることもなく、

「みなさん、お優しいですから。わたし、生かされてるんですねー」

 生きる目的じゃなく、生きている理由が返ってきた。

「……そうか。悪いな、時間とらせて」

「いーえ」

 そう笑って、プライヤは来た時と同じ唐突さで戻っていった。




 ベトが旅立ってから、次の日の夜九時過ぎ。

 アレとマテロフは帰ってきた。
 そのさらに三日後、ベトはアジトに帰ってきた。

「よォ」

「あ、ベトおかえり」

 最初に交わされた会話が、それだった。
 ベトは軽い感じで片手を挙げ、アレは無邪気な笑顔で迎え入れた。

 その傍らには見慣れない人影がいた。

「……と、マテロフ?」

「やァ、よく帰ったなベト」

 これまた聞き慣れない挨拶が返ってくる。
 それにベトは目をパチパチさせる。

 この弓姫から、こんな愛想が送られる日がくるなんて――

「その姿を見るまで、完全にその存在を忘れていたよ。今までどこで野垂れていた?」

 毒舌になっていた。
 これはこれで、大概ウザかった。
 が、まぁ、今まで見たく黙殺されているよりはいいかと思い直した。

 一応。

「あーまー、適当に野垂れてたさ。まーあんま気にすんなよ。ンなことより、アレはこの三日間、どうしてた?」

「楽しかったですよ。マテロフさんに弓矢を教えてもらってました」

「え"?」

 思わず、変な声が出た。
 マテロフの方を見る。

 マテロフはなんてことない顔で弓の手入れをしながら、

「……悪いか?」

「いや、わりぃなんてこたねぇが……どんな風の吹きまわしだ?」

 答えたのは、アレだった。

「だってわたしたち、友達に"なれる可能性が"あるんですよ?」

 嬉々とした言葉に、ザワついていた周囲もまとめて、静まり返る。
 ベトは口を開けて唖然とし、アレは嬉々とした笑顔で――マテロフは弓と短剣を握ったまま、ピクピクとこめかみを痙攣させて、

「ちょっ……おい、アレ――」

「っへぇ、そうか友達になれる可能性がね! おいみんな、聞いたかよ!?」

『おう、聞いたぞ!!』

 ベトの号令に、どっと周囲が騒ぎ出す。
 当然こんな面白い話を黙って見過ごす奴らじゃなかった。

 一斉に、

「へいへい、マテロフどういうことだよ?」
「可能性ってなんだよ可能性って、なってやれよ可哀想によォ!」
「それともあれか、焦らしてんのかよ?」
「まるで恋人同士みたいだなァ、おい!」

『ギャハハハハハっ!!』

 と大爆笑する仲間たち。

 それにマテロフはこめかみをヒクヒクさせ、ベトも一緒になって笑い、よくわかってないアレも一緒になって慎ましく笑った。
 笑い合った。
 楽しげに。

 マテロフは一気に、爆発した。

「うるっさいぞお前らっ! 囃し立てて、バカみたいに笑って私をバカにしてるつもりかァ!!」

「おーい、弓姫が怒ったぞー」
「うひょー逃げろ逃げろー」
「狙撃されるぞー」

「貴様らァ――撃つ」

 静かに宣言。
 手入れ途中の愛弓を構え、狙う。

 ベトを。

「……って、俺かよっ!?」

「貴様だ……諸悪の、根源……ッ!」

「なんでだよ!?」

「死ねッ!」

 叫び、本当に矢が放たれる。
 それをベトはギリギリ首をひねって、躱す。
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