ⅩⅤ/不自由③
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本編
プライヤはその唐突な質問に眉ひとつひそめることもなく、
「みなさん、お優しいですから。わたし、生かされてるんですねー」
生きる目的じゃなく、生きている理由が返ってきた。
「……そうか。悪いな、時間とらせて」
「いーえ」
そう笑って、プライヤは来た時と同じ唐突さで戻っていった。
ベトが旅立ってから、次の日の夜九時過ぎ。
アレとマテロフは帰ってきた。
そのさらに三日後、ベトはアジトに帰ってきた。
「よォ」
「あ、ベトおかえり」
最初に交わされた会話が、それだった。
ベトは軽い感じで片手を挙げ、アレは無邪気な笑顔で迎え入れた。
その傍らには見慣れない人影がいた。
「……と、マテロフ?」
「やァ、よく帰ったなベト」
これまた聞き慣れない挨拶が返ってくる。
それにベトは目をパチパチさせる。
この弓姫から、こんな愛想が送られる日がくるなんて――
「その姿を見るまで、完全にその存在を忘れていたよ。今までどこで野垂れていた?」
毒舌になっていた。
これはこれで、大概ウザかった。
が、まぁ、今まで見たく黙殺されているよりはいいかと思い直した。
一応。
「あーまー、適当に野垂れてたさ。まーあんま気にすんなよ。ンなことより、アレはこの三日間、どうしてた?」
「楽しかったですよ。マテロフさんに弓矢を教えてもらってました」
「え"?」
思わず、変な声が出た。
マテロフの方を見る。
マテロフはなんてことない顔で弓の手入れをしながら、
「……悪いか?」
「いや、わりぃなんてこたねぇが……どんな風の吹きまわしだ?」
答えたのは、アレだった。
「だってわたしたち、友達に"なれる可能性が"あるんですよ?」
嬉々とした言葉に、ザワついていた周囲もまとめて、静まり返る。
ベトは口を開けて唖然とし、アレは嬉々とした笑顔で――マテロフは弓と短剣を握ったまま、ピクピクとこめかみを痙攣させて、
「ちょっ……おい、アレ――」
「っへぇ、そうか友達になれる可能性がね! おいみんな、聞いたかよ!?」
『おう、聞いたぞ!!』
ベトの号令に、どっと周囲が騒ぎ出す。
当然こんな面白い話を黙って見過ごす奴らじゃなかった。
一斉に、
「へいへい、マテロフどういうことだよ?」
「可能性ってなんだよ可能性って、なってやれよ可哀想によォ!」
「それともあれか、焦らしてんのかよ?」
「まるで恋人同士みたいだなァ、おい!」
『ギャハハハハハっ!!』
と大爆笑する仲間たち。
それにマテロフはこめかみをヒクヒクさせ、ベトも一緒になって笑い、よくわかってないアレも一緒になって慎ましく笑った。
笑い合った。
楽しげに。
マテロフは一気に、爆発した。
「うるっさいぞお前らっ! 囃し立てて、バカみたいに笑って私をバカにしてるつもりかァ!!」
「おーい、弓姫が怒ったぞー」
「うひょー逃げろ逃げろー」
「狙撃されるぞー」
「貴様らァ――撃つ」
静かに宣言。
手入れ途中の愛弓を構え、狙う。
ベトを。
「……って、俺かよっ!?」
「貴様だ……諸悪の、根源……ッ!」
「なんでだよ!?」
「死ねッ!」
叫び、本当に矢が放たれる。
それをベトはギリギリ首をひねって、躱す。
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