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ⅩⅩⅡ/魔女裁判③

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「……お前が契約したのが、神だという証拠はあるのか?」

「ありません」

「ならば、なぜ神だとわかる?」

「あの全身が塗り替えられ、覚醒し、変質したような感覚。あれが神でなくて、なんだというのでしょうか?」

 なにかが乗り移ったかのように、娘は饒舌にしゃべる。
 初めから、なにかが欠けていると思っていた。
 それに、フィマールは気づいた。

 気づいて然るべきだった。

 恐怖が、すっぽりと抜け落ちている。
 いやもっといえば、感情という感情が娘からは一切見受けられない。

「娘よ」

「はい」

「お前は……処女か?」

「は……? は、い」

 フィマールの言葉に、少し戸惑いながらアレは答えた。
 それにフィマールは少し眉をひそめ、

「では本裁判は、一時休廷とする」

 いきなり木槌を打ち鳴らし、それを合図とするように一斉に聴衆たちは去っていく。
 それにアレは呆気にとられたようにえ? え? と周囲を見回す。
 その両脇を固める警備がガッシリと両腕を掴み、

「あ……あの、なんでしょうか?」

 フィマールが目の前にきていた。
 彼は刻まれたしわを深くするように思案気な表情を作り、

「今より、処女検査を行う」





 衛兵が、交代した。
 外は、白み始めていた。
 既に時間は6時間を越えただろう。
 となれば、そろそろなんらかの結果が出た頃だろうか?

 まだ悠長に、こんなところで待っていていいものか?

「……おい、衛兵さんよ?」

「…………」

 見張りの衛兵は、黙して語らなかった。
 そっちとしてもほとんど罪人相手に話すことはないってとこだろうけど、しかしそれじゃあ今は困る。

 仕方ない。

「――――」

 音もなく、立ち上がる。
 そして足音もついでに気配も立てず、鉄格子に近づいた。
 衛兵に気づく様子はない。そのまま脇腹と腰の、間――の服の内側にこさえた特製のポケットから、薄い薄いそれこそ紙のような長さ4センチのナイフ、を取り出す。

 それをなんの痕跡も残さず、男の首筋にあてがう。

「――――」

 そのまま男は背中からこちらに倒れてきた。
 それを左手一本で支え、右手で尻ポケットを漁る。
 予想通り出てきた鍵で、ガチャガチャと解錠。

「晴れて自由の身、と……さて、これからどうするかね?」

 シンプルに生きてきた身としては、こういう経験は少ない。
 捕われなどというヘマをしたことも、逆にさせたこともない。
 一人対城、というところか。

 まずはともかく、武器だった。



 足音と気配を殺して、石畳の廊下を進んだ。
 豪勢な建物だ、あちこちに絵やら壺やらと飾られている。
 その中には立派な盾や、剣の類も見受けられた。
 後ろ髪引かれる思いだったが、やはり愛剣に勝るものはないと諦める。

「――――」

 進む。
 壁にぴたりと、背中をつけて。
 人通りは多くはない。
 やはり捕まえた魔女に気を取られているのだろうか?
 ならば好機と考えていいはずだ。

 しかし、とベトは思う。

 こうするのが正解なのか、まったく確信は持てなかった。
 武器よりも、アレを探すべきなのかもしれない。
 そもそも牢を出るべきではなかったのかもしれない。
 だいたいここまできたのが――

 目を瞑った。
 いつもこうして、ベトは気持ちを切り替えてきた。

 考えるのをやめる。
 それは簡単にいった。
 いつもベトが、戦いにおいて選択している行為だったからだ。

 そうだ。
 一度戦いに身を投じれば、もう考えるという行為は余分にしかならない。
 気の迷いが、明暗を分ける。

 いまもしこうして城の中をうろついているのが間違いなら、もう受け入れよう。
 ベトは開き直り、改めて剣の探索を始めた。

 と、

「……おい、聞いたか?」

 人の話し声が聞こえた。
 それに思考と歩みをとどめる。
 そして廊下の曲がり角までいき、そこで息をひそめた。
 向こうを見る。
 貴族のような格好をした男二人が、談笑しながらこちらに歩いてきていた。

 というよりは、ひそめき合っているという方が近いか。

「あぁ、例の魔女……魔女裁判から、処女検査に回されたらしいな」

 処女検査?
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