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ⅩⅣ/悪魔憑き⑥

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 しかし感じている当人が言うことしか出来なくてかなしいというのもなかなかに突きぬけた感性であり、そして自分がかなしいとはいったいどういう意味なのか?

 アレは涙を零し続け視線を宙に漂わせたまま、

「……運命に逆らえナイのが、かナしい」

 ピシリ、と何かにヒビが入ったようにマテロフは感じた。

 自分がなにに、憤っていたのか。
 村を襲った野盗にか?
 対抗手段を講じなかった村にか?
 来るのが遅れた援軍にか?
 それとも何もかも最悪になるまでなにも出来なかった自分にか?

 違った。

 自分は、その運命の歯車そのものを、呪ったのだ。

「か、な……っ、あ、貴女、に……!」

 なにがわかるの?

 とは言えなかった。
 わかるのだろう、この少女には。

 詳しい事情は、最初の荷馬車で同席した時と食事の席で聞いている。
 似た様な境遇だ。

 いや自分はこうして自分の足で歩けて、剣を振ることが出来るだけマシなのかもしれない。
 なにもかもを諦めずには、済んだから。

 目の前の少女は、どんな運命をすら受け入れ、諦め、このように悲しむことしか、出来なかったのだから。

「ッ……く、ぅ……!」

 それこそ悲しみが、倍して肩にのしかかるような心地だった。
 自分を苦しみ、そして縛りつけ未来永劫決して離さないものの正体が、見えてしまった。

 その、結末が。

 決して自分は、幸福にはなれない。
 この鎖に、捕われている限りは。

 だから哀しい。
 わたしは、哀しいのだと。

 気づかずマテロフは、涙をこぼしていた。

「っ……ぅ、く……ぅう!」

「マテロフさん……」

 顔を覆い泣き崩れるマテロフに、アレが寄り添う。
 そして両肩を抱き、正面から、マテロフを覆った。

 それはまるで、吹きつける雪から彼女を守るように。
 世界の悲しさから、彼女を守るように。


「う……あ、ぅ……そんな、そんなことって……!」

「哀しいですか……哀しいですよね、哀しいですよね、哀しい、ですよね……」

「うぅ、あぅ……ううううぅもう、嫌……ッ!」

「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 ダダをこめる子供のようになったマテロフに、アレはなぜか謝罪の言葉を吐き続けた。
 マテロフはそれに、ただ身を委ねた。

 端的に言えば、甘えた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい、マテロフ……」

「ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい、マテロフ……」

 心地よかった。
 その言葉の意味するところなどどうでもよく、ただ自分が欲していたのはその言葉なのだと思った。

 ただ、謝罪が欲しかった?
 誰でもいいから?

 いや違う。

 マテロフはただ――優しい言葉で、癒されたかった。
 それも誰でもいいわけではなく、自分のことを芯から理解してくれる相手に。

「う、ぅ……ふぅ」

 気持ちが落ち着き、整理され、あるべき場所に置かれ、そしてマテロフは、身体を起こした。

 その瞳は、以前のものとは違っていた。
 絶望し、沈み込み、目の前のものから眼を逸らし接触を拒んでいたものではない――少しだけだが、野盗が来る前のパン屋の看板娘と評判だった頃に、戻って。

 くるり、と軽快にマテロフはアレを見つめる。

「ありがとう」

 一文字一文字、噛みしめるように発音した。

 初めてだった。
 事件以来、この言葉を口にするのは。

 なぜしたのかは、わからなかった。
 だけどなぜか、したくてたまらなかった。

 アレは口元を柔らかく緩めて、目を線のように細めて、こちらまでつられるようなそれはそれはまるで春の日に見る太陽のような笑みを浮かべた。

「よかった」

 彼女が、魔女なわけがない。

 天使がいるとしたら、こんな娘だろうとマテロフは思ったりした。
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