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ⅩⅥ/育ての親①

2020年9月25日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 仲睦まじいアレとマテロフと、それを見つめる仲間たちを置き去りにして、ベトとスバルは会議室に移った。
 会議室と言っても、二階の奥にある真ん中に円卓が据えられ、周りを10に満たない椅子が取り囲んでいるだけだ。
 壁際にはいくつかの本棚、広さはベトの部屋の三つ分ほどと言ったところか。

「で、どういうことだ?」

 ベトは窓際に移動し、対面のドア側にいるスバルを睨む。

 スバルは気づいていなかったかもしれないが、ベトはスバルがアレにその辺りを匂わせていたのを知っている。
 その上で、なぜあんな堂々としているのかを問い詰めている。

「まぁ、見ての通りってとこだな」

 悪びれる様子もない。
 らしいといえばらしいスバルの言葉に、ベトは苛立ちを覚える。

「……わかんねーよ。てかわかんねーから聞いてんだから、っとと答えろよ」

「わかったわかった……わかったから、そのガントレットはしまえぇええ!」

 いきなりスゴイ形相でスバルは雄叫びをあげ、頭を抱えて円卓の下でぶるぶる震えだした。
 二回も殴ったことがすっかりトラウマになったらしい。

 とりあえず話をするために、ベトは無言でガントレットを外した。
 それを確認してスバルはふーっ、ふーっ、と鼻息荒く、

「は、外したな? は、外したよな? よ、よし……はふーっ! じょ、嬢ちゃんのあの変てこな力に関しては、もうみんな知ってるわな」

「……知ってる、のか?」

 眉をひそめるベト。
 だがそれとは対照的にブタから人間への進化を遂げようとしているスバルは、

「ぶふー、ぶふーっ……あ、ああ。お前が出て行ってから、マテロフと一緒にアレが出かけてな」

「ま、マテロフとか……?」

 さらに眉間にしわを寄せるベト。
 そしてスバルは簡単な経緯をベトに伝え、

「で、なんかなかよくなって帰ってきたっぽいマテロフから、俺にまず報告があってな。で、そのあと一度出撃があってな」

「あったのか!? 出撃が?」


 それも寝耳に水だった。

 あったとは、思わなかった。
 戦況は比較的安定してた方だったから、出かけたっていうのに。

 だがスバルは極めて冷静に、

「ああ。その時に、アレの嬢ちゃんの力が発揮されてな。俺たちひとりの被害もなしに、大戦果を挙げることに成功したって寸法よ」

 バカな、とベトは思った。

「……一緒にいったのか? アレも?」

「ああ。っていっても一人残しとくのもあれだから同行させただけなんだけどな。まさか嬢ちゃんがあんなすごい隠し玉持ってるなんてよ。みんな驚いて、なかには一生ついていくって奴まで現れたっていう寸法よ。やーよかったよかった」

 スバルは無責任に喜んでいた。

 その様子は、まるで天使の降臨のようだったという。

 スバルの傭兵部隊は、籠城戦に駆り出されたという。
 攻撃が激しい最前線で、敵からの侵攻を食い止めろという話だったという。

 そこでスバルの隊は、大変な苦戦を強いられた。
 敵は大量の弓兵を抱えており、そのうえ矢が底を尽きることはない。
 ほとんどが歩兵であるスバル隊は、近付くことすら困難だったという。

 一斉掃射の矢が降り注ぐ中、アレは誰も気づかないうちに最前列に歩み出ていたという。
 スバルが気づき、叫び、マテロフが青ざめ、走りだす中、アレは降り注ぐまるで集中豪雨のような矢を、白痴のように見上げ――

 その雨が、すべて宙に縫いつけられたという。
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