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ⅩⅣ/悪魔憑き④

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「……殺したいとかしたくないとか、そういうんじゃないと思うんですよ。ひとを殺すって。半端じゃないでしょ、それ?」

「だな」

 同意を求めるベト(こども)に、オレアンは微かに頬を歪めた。

「なら、それでもなんで殺すのかって。なんか気になるんですよ、最近。どうしてかっていうと、ちょっと話長くなるんですけど……」

「なるほど、だがまぁその疑問はそう悪いことではないさ。なんで殺すか、か……あまり考えたことはなかったなあ」

「マジっすか?」

 思わぬ言葉に、ベトは顔を上げた。

 それにオレアンはお? と愉しげな表情を浮かべた。
 ベトはオレアンにとって可愛い弟分だが、なにぶん恥かしがり屋なのかなかなか面と向かって話さない所があった。
 だからこういうところをみると、オレアンはつい嬉しくなってしまっていた。

「意外か?」

「意外っすね。神父さんはそんなことばっかり考えてるものと思ってたっす」

「神父はな。まあ、おれは違うな」

「なるほど」

 妙に納得している。
 それはそれでオレアンにとって複雑な心境だったが、まあいい。

「なぜひとはひとを殺すか……単純に言えばそれは、既にひとではないからだろうなあ」

「ひとじゃ、ない?」

「ああ。たとえばこの戦争、実際戦争を起こした領主は手を下さないだろう? つまり当人はひとをひととしてではなく、領主を寄こさない厄介な存在、という見方をしている。次に実際駆り出される兵士だが、敵と会話したりしないで、命令のまま排除する。な? 誰も殺す時、相手をひとと見ていない。
 豚とか牛と一緒だ。もし彼らが殺される瞬間を見て、なお嬉々としてその肉を喰らえるか? いや喰らえるかもしれないな……今のあまりいい例えじゃないな、うん」

 独りごちて、またも神父は杯を空にする。
 いくらでも飲める。
 それがベトは、なんだか誇らしかった。

 たいていのことが、ベトは出来た。
 ひとより足の速さも剣の重さも判断力も動体視力も、勝っていた。
 傷に対する耐性も、根性も、気合いも。

 だから自分よりなにかが上回っているオレアンが、誇らしかった。

「ひとじゃないんですね……殺す時って」

「そうだな。その時は、ひとはひとと見ては――」

「ひとじゃなくなってるから、殺せるんすね俺は」

 ふとした、呟きだった。
 ふとすれば聞き逃してしまいそうなそれに、オレアンな静かに、息を呑んだ。

 そして酒も飲んだ。

「――ぷぁ。どうしたベト、らしくないな」

 らしくない。
 そう感じた。
 いつも真っ直ぐ、シンプルに考え、迷いなく。
 それがベトだった。

 その男が、自分を省みている。
 ベトもちびり、と酒を舐めて、

「せんせい……悪魔憑きって、本当にあるんですか?」

 遂に当初の目的に、たどり着いた。







 その少女は、問いかけにやはり同じようにくりっ、と頭を傾げた。

「魔女っテ、なんですカ?」

 掴まれている。
 襟首を。

 そして持ち上げられている。
 身体全体を。

 先ほどまでと、そっくり立場が入れ替わった構図。
 だが少女の手は、口元に当てられている。

 可愛らしく。

 そして自分は少女の頭上、30センチほどのところに吊り上げられている。
 でなければ少女より20センチは背が高い自分がこうして持ち上げられる道理はない。

 そしてその自分の襟首には、少女の手もなにもかかってはいなかった。

「なんですか、ですって……それは貴女みたいな、許してはいけない存在を言うのよッ!」

 そこでマテロフは、爆発した。
 冷然とした強い女性でもなく、傭兵仲間もかくやと思える男性風でもなく、ただの一人の等身大の二十歳過ぎの女性として。

「なによこれッ! 手を触れずになにかを動かせるなんて……在り得ないじゃないっ! それになにそのイラつかせる変な喋り方、いっくらいっても筋を曲げない頑固な主張……わけわかんないわよ! 貴女人間じゃないわ! その在り方、その口調、力……
 だったらなんで、わたしを救ってくれなかったのよッ!!」
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