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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

『彼女は……ありゃあ別に暗いんじゃない。単に感情表現が下手なだけだね。お前が引き出してやれよ』

 そこまで考えて、不意に切間の言葉が頭の中に甦った。

 ――切間、攻めていいんだよな?
 別に嫌なんじゃなく、感情表現が下手なだけなんだよな?

 息を吸い込み、僕は彼女の疑問に答えた。

「もっと一緒に、いたいから。もっと暗戸さんのこと、知りたいから」

 自分の言葉に打ちのめされた。
 し、しまった……! か、考えなしに、僕はなんつう臭くてストレートな物言いを……

 手の平の携帯が震えた。
 びくっと体が跳ねた。
 いきなりの不意打ちだった。

 まるで腫れ物を触るみたいに慎重に顔の前に持ってきて開くと、やっぱり送信元は目の前の彼女だった。
 また三文字だった。

『なんで』

 言葉を失う。
 再び突き出された疑問。

 なんで。
 今度は、

 なんで一緒に、いたいのか。
 なんで彼女のことを、知りたいのか。

「……今まで暗戸さんのこと、誤解してたみたいだから。本当はどんな女の子なのか、気になったからなんだけど……」

 再び携帯が震える。
 今度はちゃんとした文章がつづられていた。

『なんで私のことなんか気になるの?』

 ……"なんか"?

「なんで自分のことを、私のこと"なんか"、なんて言うの? それは良くないと思うよ」

 彼女は俯いたまま、その帽子のつばに表情を隠している。
 再び携帯が震える。

『なんで?』


 ただ、?マークがついてるだけで、ただそれだけで悲痛な文章に見えたのは、僕の気のせいか自意識過剰なのだろうか。

「僕は、他の誰でもない暗戸さんと、一緒に買い物をしたいんだ。だから、そんな自分を卑下するような悲しいことは、言わないで欲しい」

 少しの間があった。
 彼女の姿は動くことはなく、ただ俯いたまま。

 その間に、首筋を流れる汗と耳朶(じだ)を叩く蝉の鳴き声と周りの店の喧騒を思い出し、携帯が震えた。

『わかった』

 彼女が顔を上げた。
 そこには、一見するといつもと変わらぬ人形のような無表情があった。

 でも僕は気づく。
 彼女の目に、今までの無感情とは違う、何らかの光が秘められているのを。
___________________

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