真昼の幽霊

2019年12月29日

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 体は発熱し、動悸が速くなる。
 待ち合わせ場所である学校に向かう徒歩二十分の道のりの中で、僕は思う。
 なぜ僕はこんな日に女の子と学校で待ち合わせをし、わざわざゲームセンターに行くのだろう……。

 八時四十分過ぎ、校門前。

 一瞬、陽炎の向こうに真昼の幽霊を見た気がした。
 思ったより早く着いたと思い正面玄関を見てみると、それよりも早く彼女はいたのだ。

 待ってる場所はいつもの指定席ではなく、玄関前。
 座らずに立っている、ということ以外はいつもの通りだった。

 黒一色の服を身にまとい、両手で同じく黒いバッグの取っ手を握り、その視線は前方の虚空を捉えて離さない。
 暑いはずの背筋に、冷たいものが一筋流れた。

 真っ白な世界の中で、その黒さは有機物の感情を持ってなかった。
“暑さ"という概念を持っていなかった。

 まるで人形のような印象を、再び受ける。

「……や、やぁ。早かったんだね」

 その感覚を振り切って彼女が見つめる虚空に割って入り、声を掛ける。
 彼女は僕の存在を認め、頷く。

 それが"無機物"ではなく"人間"であったことに安堵し、胸を撫で下ろす。

「じゃ、じゃあ行こっか?」つっかえつっかえ促す。

 頷く。

 異世界のような空気のまま、最初の目的地であるゲームセンターに向かうため、学校前のバス停に向かう。
 正面玄関を出るとすぐに車輌乗り入れようの坂道に出る。
 それを二人並んで歩き出す。数歩も歩かないうちに、額の汗を手の甲で拭う。

 ――暑い。
 空から降り注ぐ真っ白な光線は、僕の体から生気という生気を汗という形にして搾り出すかのようだ。
 動くのがだるい。

 なのに彼女は、まるで暑さというものを感じていないかのようにその歩みは淀みがない。
 いざ話を始めようとすると緊張で、喉が渇いた。

 唾を飲み込んでから、声をかける。


「……え、と。ゲームセンターは、初めてなんだよね?」

 頷く。
 表情に淀みはない。

 続ける。

「あのさ。銃で撃つやつとか、カーレースで勝負するやつとか、色々あるんだ。ゲームが好きなら、きっと楽しいと思うよ!」

 反応は、無い。
 気遅れる。
 沈黙に負けないように、続ける。

「えーと……それで、ね。……そう、プリクラとかもあるんだ! プリクラは好き?」

 彼女は淀みなく歩き続ける。

「……えー、と…………」

 しばらく沈黙が流れる。
 再度額の汗を拭う。
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