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第62話「りゆう」

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 支障はない……のか?

「い、いいかな?」

 今までネガティブな訊き方ばかりしてたから、ここで方向を変えてみる。

 そこで彼女は俯いていた顔を上げた。
 黒目がちのつぶらな瞳が僕を射抜く。
 それは微かに揺れていた。
 彼女の唇が動き、

 丸く開き、

 引き結ばれ、

 三角に開いた。

 それを見て、僕は正体のわからない胸騒ぎがした。
 理由はわからない。
 それに、読唇術が出来ない僕には、その意味はわからないし。

 僕が黙っていると彼女はまたしばらく俯き、突然思い出したように顔を上げ、バッグの中に手をやった。
 一瞬どきりとしたが、彼女は例の黒い真四角の携帯を取り出し、何かを一心不乱に打ち出した。

 突然僕の携帯が震え、メールが来た事を告げる。
 まさか――と思い、慌ててポケットから取り出し、差出人を見る。

 案の定、それは目の前の彼女からのメールだった。

 そこまでして喋らない理由も気になるが……そう思いながら、メールを読む。
 そこにはたったの三文字の言葉がつづられていた。

『なんで』

 ――一瞬言葉に詰まり、返信を打つ。

『なにが?』

 送信。
 返信はすぐに来た。

『付き合って欲しい、りゆう』

 体が硬直する。
 聞かれ、僕の心は体だけ真夏の空の下に残し、宙に舞った。


 理由。
 彼女と一緒にアクセサリー屋に行く、理由。
 来て欲しい、理由。
 自分に問いかける。

 何で僕は、彼女に一緒にアクセサリー屋に来てほしい?
 浮かんだ理由。

 ……彼女と、もっと一緒にいたいからだ。
 その理由。

 彼女と……もっと話したいからだ。
 その理由。

 彼女のことを……もっと、知りたいからだ。
 その理由。

 好きだから……とはまた、違うと思う。
 そういう動機というより……そう、気になるんだ。

 元々抱いてた薄気味悪くて危険なイメージが、一緒にいると、話してるとどんどん変わった。

 今日一日彼女は本当に色々な顔を見せてくれた。
 最初は考えていた通りの硬い感じだったけど、初めてらしいゲームセンターの前で見せた挑むような目つき、入ってからの子供のような反応、やるゲームやるゲームに発揮された集中力、真剣さ、切間と亀々うどんを巡る遠慮のないやり取り。見るたび見るたび、他にどんな顔を持ってるのか知りたくなった。

 本当の顔を見たくなった。

 だからもっと、一緒にいたくなった。
___________________

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