りゆう

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 支障はない……のか?

「い、いいかな?」

 今までネガティブな訊き方ばかりしてたから、ここで方向を変えてみる。

 そこで彼女は俯いていた顔を上げた。
 黒目がちのつぶらな瞳が僕を射抜く。
 それは微かに揺れていた。
 彼女の唇が動き、

 丸く開き、

 引き結ばれ、

 三角に開いた。

 それを見て、僕は正体のわからない胸騒ぎがした。
 理由はわからない。
 それに、読唇術が出来ない僕には、その意味はわからないし。

 僕が黙っていると彼女はまたしばらく俯き、突然思い出したように顔を上げ、バッグの中に手をやった。
 一瞬どきりとしたが、彼女は例の黒い真四角の携帯を取り出し、何かを一心不乱に打ち出した。

 突然僕の携帯が震え、メールが来た事を告げる。
 まさか――と思い、慌ててポケットから取り出し、差出人を見る。

 案の定、それは目の前の彼女からのメールだった。

 そこまでして喋らない理由も気になるが……そう思いながら、メールを読む。
 そこにはたったの三文字の言葉がつづられていた。

『なんで』

 ――一瞬言葉に詰まり、返信を打つ。

『なにが?』

 送信。
 返信はすぐに来た。

『付き合って欲しい、りゆう』

 体が硬直する。
 聞かれ、僕の心は体だけ真夏の空の下に残し、宙に舞った。


 理由。
 彼女と一緒にアクセサリー屋に行く、理由。
 来て欲しい、理由。
 自分に問いかける。

 何で僕は、彼女に一緒にアクセサリー屋に来てほしい?
 浮かんだ理由。

 ……彼女と、もっと一緒にいたいからだ。
 その理由。

 彼女と……もっと話したいからだ。
 その理由。

 彼女のことを……もっと、知りたいからだ。
 その理由。

 好きだから……とはまた、違うと思う。
 そういう動機というより……そう、気になるんだ。

 元々抱いてた薄気味悪くて危険なイメージが、一緒にいると、話してるとどんどん変わった。

 今日一日彼女は本当に色々な顔を見せてくれた。
 最初は考えていた通りの硬い感じだったけど、初めてらしいゲームセンターの前で見せた挑むような目つき、入ってからの子供のような反応、やるゲームやるゲームに発揮された集中力、真剣さ、切間と亀々うどんを巡る遠慮のないやり取り。見るたび見るたび、他にどんな顔を持ってるのか知りたくなった。

 本当の顔を見たくなった。

 だからもっと、一緒にいたくなった。
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