第47話「嘘みたいな熱気に包まれて入道雲が高かった屋上で、嘘みたいな十九分間」

2020年4月4日

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 むしろ開き直った。

『いいよ。何時にどこに集まろうか?』

 しばしの間をおき、携帯が震える。

『学校。9時』

 ――ていうと、平日の学校のスケジュールと何も変わらないなぁ。
 ちょっと笑ってしまった。

『うん、じゃあ日曜日に』

『うん』

 ……携帯を閉じる。
 そのあと力尽きたようにばったりと再び屋上に横になる。

 体中から力が抜ける。
 今頃になって、緊張で体が固まっていたことに気づく。

 汗が一筋、額をつたって頬に落ちる。
 全身に、うっすらと冷たい汗をかいていたことに気づく。

 太陽が眩しい。
 同時に、遠くに感じていた感覚が戻る。

 暑さが戻り、入ってきた時に聞こえた蝉の音も激しく耳を叩く。
 冗談みたいだとも、夢みたいだとも思った。

 今まで色々作戦立てて女の子にアプローチしてきたけど、こんなに上手くいったことはない。
 一応夢じゃないかと頬をつねる。

 ……痛い。

 携帯を開き、横目で待受画面を見る。
 今日は五月三十日、金曜日。時刻は十二時四十一分。

 嘘みたいな熱気に包まれて入道雲が高かった屋上で、嘘みたいな十九分間だった。





 放課後。

 四限目のマーケティング戦略の徳島(とくしま)先生の授業を終えた僕は、教室の前で待ち伏せしていた切間に拉致された。

 人が少なくなった三階のカフェテリアの、奥のソファー席の一角を陣取って、作戦の首尾についての追求が行なわれた。
 僕も素直におおまかな経過を話し、感想を求めると、

「お、上手くいってんじゃん!」

 第一声がこれだった。
 まさかそうくるとは……。

 あまりに首尾よく行き過ぎてて逆に不審に思ってる僕にとって、その感想は予想外のものだった。
 一応聞いてみる。

「会って二日目で何の前触れも無くいきなり番号聞いてきた男に、何の抵抗もなく素直に教えるか? 普通」

 だけど切間は笑顔さえ浮かべて、

「だから言ったろ? オレもそのやり方で五人ゲットしたって!」

 僕の背中をばしばしと叩く。
 そう言われると、さすがは百戦錬磨の切間のやり方だったか、と感心せざるを得ず、根拠のない不審感は振り切って次なる作戦を立てることにした。

「――っかし。朝の九時から、てのは、かなり早いな……」

 まず切間は、彼女が提示してきた時間に眉をひそめた。
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