第47話「嘘みたいな熱気に包まれて入道雲が高かった屋上で、嘘みたいな十九分間」
最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む
___________________
本編
むしろ開き直った。
『いいよ。何時にどこに集まろうか?』
しばしの間をおき、携帯が震える。
『学校。9時』
――ていうと、平日の学校のスケジュールと何も変わらないなぁ。
ちょっと笑ってしまった。
『うん、じゃあ日曜日に』
『うん』
……携帯を閉じる。
そのあと力尽きたようにばったりと再び屋上に横になる。
体中から力が抜ける。
今頃になって、緊張で体が固まっていたことに気づく。
汗が一筋、額をつたって頬に落ちる。
全身に、うっすらと冷たい汗をかいていたことに気づく。
太陽が眩しい。
同時に、遠くに感じていた感覚が戻る。
暑さが戻り、入ってきた時に聞こえた蝉の音も激しく耳を叩く。
冗談みたいだとも、夢みたいだとも思った。
今まで色々作戦立てて女の子にアプローチしてきたけど、こんなに上手くいったことはない。
一応夢じゃないかと頬をつねる。
……痛い。
携帯を開き、横目で待受画面を見る。
今日は五月三十日、金曜日。時刻は十二時四十一分。
嘘みたいな熱気に包まれて入道雲が高かった屋上で、嘘みたいな十九分間だった。
放課後。
四限目のマーケティング戦略の徳島(とくしま)先生の授業を終えた僕は、教室の前で待ち伏せしていた切間に拉致された。
人が少なくなった三階のカフェテリアの、奥のソファー席の一角を陣取って、作戦の首尾についての追求が行なわれた。
僕も素直におおまかな経過を話し、感想を求めると、
「お、上手くいってんじゃん!」
第一声がこれだった。
まさかそうくるとは……。
あまりに首尾よく行き過ぎてて逆に不審に思ってる僕にとって、その感想は予想外のものだった。
一応聞いてみる。
「会って二日目で何の前触れも無くいきなり番号聞いてきた男に、何の抵抗もなく素直に教えるか? 普通」
だけど切間は笑顔さえ浮かべて、
「だから言ったろ? オレもそのやり方で五人ゲットしたって!」
僕の背中をばしばしと叩く。
そう言われると、さすがは百戦錬磨の切間のやり方だったか、と感心せざるを得ず、根拠のない不審感は振り切って次なる作戦を立てることにした。
「――っかし。朝の九時から、てのは、かなり早いな……」
まず切間は、彼女が提示してきた時間に眉をひそめた。
___________________
続きはこちらへ! → 次話へ進む