新着記事

Thumbnail of new posts 092

: 空手および格闘技

“格闘マシーン”黒澤浩樹 初出場優勝最年少 松井章圭と死闘,下段で一本勝ちの山を築き上げた軌跡!

魂の下段廻し蹴り それに命をかけた選手というのが私の知る限り、四人存在している。 ...
Thumbnail of new posts 083

: 空手および格闘技

“武芸者”木村靖彦 日本連続準優勝,世界連続6位で日本を支えた大黒柱!

左中段廻し蹴り 極真空手の歴史の中で、様々な得意技を持つ選手たちを見てきたが、そ ...
Thumbnail of new posts 109

: 空手および格闘技

極真史上最強に名を連ねる五人の空手家たち

極真史上最も強い人間とは誰か? そう考えた場合に、極真空手を20年以上行ってきて ...
Thumbnail of new posts 128

: 神アニメレビュー

【かおす寒鰤屋】この程度の雨なら濡れるのも風情だ――名作漫画名言

骨董がテーマのジャンプ漫画 ジャンプ漫画の中でも極めて珍しい、骨董をテーマにした ...

記事ジャンル一覧

関連記事

  • ⅩⅢ/弓兵⑦

    最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む___________________ 本編  痛みに、顔をしかめる。 だけど場所を選んでいる余裕はなかった。  掴んだ端から血が滲むのもお構いなしに、マテロフは ……

  • Ⅵ:開戦

    最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む___________________ 本編  口からついたのは、本当に湧いて出た疑問だった。 エリューは木片の山から身体を起こし、 「こうなること、知ってた筈じ ……

  • Ⅸ/不吉な兆し①

    最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む___________________ 本編 「……使命、ね」  考えていた。  使命。 使わされた命。 命の、使い方。  そんなものがあるだなんて、考えたことも ……

  • Ⅶ/傭兵の生活⑥

    最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む___________________ 本編  その日の夕食。  アレは生まれて初めて、おばあさん以外の人と一緒に食事をとることになった。  それも、大人数の異性 ……

#24「欺瞞」

2020年10月7日

まずはブログランキングにクリックのご支援
何卒宜しくお願いします。

 にほんブログ村 にほんブログ村へ 
 にほんブログ村ランキング   人気ブログランキング

最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む
___________________

目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 ぼくにはその意味が、最初理解出来なかった。

「棚多さん……?」

「……お嬢ちゃんかな?」

「わたしの名前は、マヤ」

「そうか……そうですか」

 棚多さんは、穏やかに微笑んでいる。
 それにマヤは、無表情で応えている。

 二人の間でだけ交わされるやり取り。

 病に冒された老人と。
 若く美しい少女。

 それが月夜に、見つめ合っている。
 病室で。

 世間で言う常識からかけ離れた空間で。
 それがぼくに、なんともいえない感覚を与えた。

 感傷?
 思い入れ?
 懐かしさ?
 違和感?

 どれもそうであり、どれもどこか違う気にさせた。

「マヤさんは、成海さんとどうするつもりですかな?」

「わたしは遼のことが、好き」

 前置きもなく告げられたその事実に、身体の外と内側がひっくり返ったような錯覚を味わった。

 衝撃とも違う、柔らかな――波紋が広がるようなその、言葉。
 ただじんわりと、身体に、心に、広がっていった。

 これが、好きっていう――

「なら、どうするつもりですかな?」

「遼のしたいようにする」

 3秒から5秒ほどだろうか、棚多さんはマヤからの答えに沈黙したあと、ぼくの方を見た。

「成海さん」

「なんですか?」

 自然と言葉に、動揺は現れなかった。
 この状況下に、身体の方が先に適応しているということだろうか?
 むしろそれは心の方が先だろうか?

 どちらでもよかった。

「あなたは……」

 そして棚多さんは、言葉に詰まった。
 どう考えても、それはそう見えた。

 思いのままに言葉を紡いでいた彼がそんな風になったのは、おそらくは初めてのことだろう。
 ぼくは黙って、次の言葉を待った。

 棚多さんは視線を切り、窓の外を見た。

 月が煌々と照らす、外の世界を。





「今晩は月が、美しいですなあ」

 ぼくもその、視線を追う。

「そうですね。綺麗ですね」

 欺瞞だった。

 ぼくはほとんど、月なんて見ない。
 言われたから、そちらの方を向いているに過ぎない。
 だいたい普段はカーテンがかかっていて、彼女が来たかどうかの目印ぐらいにしか思っていない。

 だけどそれでも。

 それを差し引いてもなお。

 今宵は月が、美しいモノに感じられた。

「成海さん」

「はい」

「あなたは、マヤさんと……」

「なんですか?」

「マヤさんと、どうなさるおつもりですかな?」

 考えたこともない。

 というより考えようもない。

 必然、答えようもない。

「……わかりません。というより、ぼくには先がありません」

「わかっていらっしゃいますか、な?」

 どうとでも取れる質問。

 どう答えるのが正解なんだ?

「――彼女のことなら、少しは」

「それでも、なお?」

「いや……というより、ぼくにはその価値が、あるのかどうか」

 探り探りの会話。当人同士でしか――というより当人同士ですら、よくわかっていないだろう。
 こんなやり取りに意味があるのかはわからなかった。

 だけどこれは、本気と本気の言葉のぶつかりあいなのだと魂で、理解した。
 だからぼくも、本気で応えた。

 棚多さんは少し考えたそぶりを見せたあと再び彼女を見て、

「あなたは成海さんのしたいようになさると言いましたかな?」

「そう」

 彼女は動かず、表情もすら微動だにさせず僅かな言葉で応えていた。

 それこそ最初に見た、絵画のように、美しく。

「なれば、あなたの望みはなんですかな?」

 マヤが初めて、言葉に詰まった。

「…………な、」

 と言ったような気がした。
 だけどさ、かもしれない。
 とりあえずあ行であることは間違いなさそうだった。

 マヤは一旦言葉を切り、

「一緒に……」

 なんて端的で、そして様々な意味が含まれた言葉だろうと思った。
 そしてそうであるならば、ぼくはそうしなければいけないだろうと思った。

 ぼくはあまりに一方的に、彼女から貰い過ぎた。
 だからそれに応えるためなら、なんでもするつもりだったから。

 棚多さんは、たっぷり十秒は経ってから、こちらを見た。

 万語を費やしたい顔をして、みたび夜空の月を仰いだ。

「よい、月夜ですな」

 ただ一言、そう告げた。

 そして次の日ぼくに、発作が起きた。
___________________

続きはこちらへ! → 第3章「memory」

クリック👍のご支援お願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村へ 
ありがとうございますっ!🙇