第46話「かなりまずい文面」

2020年10月7日

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目次

本編

『へえ、それって格ゲーとかガンシューティングとかのことかな。それなら僕も結構やるよ。
 でも、ゲームが好きなんて少し意外だなぁ。ならさ、今度一緒にゲーセンにでも行かない?』

 ――――うゎ……。

 打ち終わった後に内容を確認して、頬が引きつる。
 まずほとんど初対面の相手に意外とか失礼だし、それにいきなり話飛びすぎだし、誘い方が強引だし、おまけに色気も何もないデート場所だし……。

 かなりまずい文面だとは思った。
 だけど、女性に話を合わせるのが苦手な僕としては、それでも考えうる精一杯だった。

 それにどこをどう変えればいいかわからなかったし、なるようになれと祈るような気持ちで送信した。

 今度はすぐには返事が来なかった。
 携帯を握り締めて、待受画面を見つめながら返事を待つ。

 周りの音がまるで聞こえない。
 意識が集中しすぎているせいか、実際に物音がしていないのか。

 まるで自分だけこの世界から切り離されたみたいだ。
 携帯以外の世界が、遥か遠くのものに感じる。

 耳鳴りが聞こえるくらい、緊張する――

 携帯が震えた。

「!」
 ボタンを押してメール画面を呼び出し、見る。

『ゲーセン?』

 ……まさか、知らないのか?
 打ち返す。


『ゲーセンっていうのはゲームセンターの略で、みんなで遊べるようにゲームがたくさんおいてある場所のことだよ』

 すぐに返信。

『いつ?』

 ……えー、と…………

 手が震える。携帯まで遠くのものに感じ始める。

『僕はいつでもいいよ。暗戸さんに合わせるよ』

 息が乱れる。
 心臓がどくどくと脈打つ。
 まるで全身が心臓になったみたいだ。
 期待と不安が複雑に入り混じったような感覚が頭をかき乱し、脳みそが湯立つ。

 返信が来た。

「!」

『明後日』

 今まで頭から消え去っていた曜日感覚を呼び起こす。
 昨日の空手は、黒帯研究会があった。
 そんで一昨日……は、切間に相談したから、道場稽古は休みの日。

 つまり一昨日は水曜日で、昨日は木曜日。
 必然的に今日は金曜日。

 だから明後日は――――日曜日……だな、うん。

 週に一度の休養日。
 今のところ予定は、ない。
 それに、もし何かあったとしてもキャンセルしてやるぜ!

 気合が入った。
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