女の子に声をかけるぜ!①

2019年11月22日

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 ぴくん、と切間の体が反応し、

「……いってない。俺はやっぱり、家族にとって恥さらしだ」

 いつもの切間らしからぬ暗い、愚痴っぽい口調だった。

 本音が出てるな、と僕は思った。
 こんなにこいつが酔ったのは、ひょっとしたら家で何かあったからかもしれない。

「――へ。俺は、大丈夫さ。天下の切間敦さまだからな。へいきへいき。そんなことより、お前だよ。俺は実はお前が心配でたまんないんだよ。しろしろしろしろ、真っ白くん。世間知らずなお前がいつもびくびくしながら生きてるのを見てると俺は、はらはらして夜も眠れないんだよ」

 ――なんとなく、胸に"くる"ものがあった。

「……なんだよそれ。僕のどこが世間知らずでびくびくしながら生きてるって言うんだよ」

 そんな僕を切間は薄く笑いながら、

「へへ。ま、明日はせいぜいびびって動けなくならないように、気合入れていけ、よ……」

 何か返事をしようとして、やめた。
 そのまま切間は寝息を立て始めた。

 なんとなく顔を伏せて、手に残ってるリンゴ酎ハイを一気に空にした。
 視線を窓の外に移し、決意を固めた。

 明日だ……。


 次の日。

 授業を終え、昼休みになり、決意を秘めていつもの場所に向かう。

 耳に、悲鳴の残滓(ざんし)が残っていた。
 昨日の夢は酷かった。
 二日続けてあれを見るなんて滅多になかったのに、やはり、怖がっているのだろうか?

 いつもより酷かった悪夢を忘れるように堅く拳を握り締めて、階段をのぼった。
 購買前の行列や集まっている人たちの服装が目に入る。
 長袖だけだったのが今じゃ半分ほどは半袖が混じっていて、季節の変わり目を感じさせた。
 そういえば教室のエアコンもいつの間にかクーラーに切り替わっていた。

 一気に階段を駆け上がり、ドアを開ける。
 観客席の上の、天窓の外の風景が目に入る。
 胸がすくような真っ青な空が広がっている。
 元気が出た。
 きっとうまくいく。

 視線を下げる。
 彼女はいつもようにいつもの場所にいた。
 全身どころか雰囲気すらも覆っているような、黒衣。
 真っ直ぐに前だけを見据えたその瞳。
 左から二番目のパイプ椅子。

 心を落ち着かせて、深呼吸をする。

 躊躇(ためら)ったらダメだ。
 躊躇えば、きっとタイミングを失う。
 深呼吸をしなが数をかぞえる。

 ……三……二……一、
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