真っ黒な携帯

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 不意打ちだった。

 切間からケースとして教えられてはいたが、まさか本当にOKを貰えることがありえるとは夢にも思ってなかったので、完全に意表を突かれた。
 しばしの間僕の口からは何も出てくることはなく、二人の間に沈黙が流れる。

 だけど、いつまでも呆気に取られてる場合ではないので、

「……じゃ、あ」

 ポケットから携帯を取り出した。
 白いボディに赤いカラーリングの、F-1カーを連想させるシャープなフォルム。

 それを見て、彼女もバッグから取り出した。
 真っ黒な携帯だった。

 まるで服に合わせたかのような……実際合わせているのかもしれない、彼女なら……おまけに何の飾り気もない。
 ただひたすらに真四角な形をしていた。

 でも機能はちゃんと新しいもののようで、ついていた赤外線通信でお互いの情報をする。
 番号とアドレスと一緒に、彼女の名前が送られてきた。

 暗戸夜月(くらど よづき)。

 かなり変わった名前だと思った。
 暗かったり夜だったり――でも今の僕にはそれを気に掛けてる時間も余裕も、なかった。

 一度深呼吸をして、覚悟を決める。
 用意しておいた台詞を頭の中で反復して、

「……面と向かって話すの緊張するからメールするね! ちょっと待ってて!」

 一息で言った。
 笑顔も引きつってたと思う。

 言ったあと、逃げるようにダッシュで離れながら、前日から作っておいた

『いきなりメールしちゃった! ご趣味は?』

 というメールを送る。


 必死だった。
 心臓なんか本当に早鐘みたいにバックンバックン鳴ってうるさかった。

 走る。
 屋上まで駆け上がって、ガラス張りのドアを引き開けて、中に入って、横になって、心臓が落ち着くのとメールが来るのを待った。

 暑かった。
 まだ五月の終わりだというのに、もう蝉の鳴き声が響き始めている。
 ぎらぎらと照りつける真っ白な太陽と、突き抜けるような真っ青な空が、意識を漂白していく。

 ――デートの約束まで持っていく。

 不意に切間の言葉が頭に甦った、その時。

 意外な程早いタイミングで、携帯が震えた。

 授業中に音が出たら困るのでマナーモードにしてたから、バイブだ。
 飛び起きて画面にかじりつく。
 画面には一言、

『ゲーム』

 と書かれていた。

 ……えーと。

 返事を打って、送った。

『どんなゲームが好きなの?』

 またすぐに返信が来た。

『敵を殺すやつ』

 意外だな。そう思った。

 まずこんなに速くメールを返せるほど携帯を使い慣れてる、ということもそうだし、ゲームが趣味というのも、もっと浮き世離れしてると勝手に思い込んでたから意外だと思った。
 敵を殺すやつっていうのは、やっぱりRPGとか格ゲーとかシューティングゲームのことなのかな?

 ――なら、
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