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”重戦車” 塚越孝行 ~極真史上最強の五人

2021年7月18日

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この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

受けの達人

個人的に彼は世間に正当な評価をされていないと考えている。

特にその真価について、誤解を受けていると解釈している。

重戦車と言うキャッチフレーズと、一見して攻撃的に見えるその180センチ115キロと言う体格から、いかにも膂力に任せた乱暴な組み手スタイルと勘違いしている人は多いと思う。

既に紹介した塚本、ウイリーが、いわゆる蹴り、突きを極めた、攻撃の特化型だとするならば。

塚越は、受け、捌き、そして合わせ、返し、交差法などの、いわゆる守りを究めた達人である。

正直彼の凄さは、伝えるのは難しい。彼の試合は、基本的に前2人のような見てわかりやすい圧倒的な一本勝ちが少ないからだ。

彼はいわゆる、いぶし銀というか、玄人好みな戦い方をするのである。

将棋でいえば大山康治のようなタイプだ。いやむしろこっちの方が分かりづらいか(笑

いわゆるどっしり構えて、隙をなくし、相手からの攻め手をなくさせて、無理矢理、もしくは誘ったところに無理な攻撃が来たところを、つぶしてしまう。

そういう実に高度な駆け引きをするタイプなのだ。

塚本徳臣を追い込む

それがどれほどのものかと言うと――この見解に関しては私の先生と一致しているのだが、先に述べた同時代の史上最強の一角である塚本と、お互い無傷で、大技が当たらなく、真っ向勝負したのならば、まず十回に十回――塚越が勝ってしまうだろう。

それほどのものなのだ。

それほど穴がない、完成された受け、さばき、合わせの技術を持つ選手なのだ。

事実としてぶつかり合った、第38回全日本大会決勝と、第42回全日本大会準決勝では、あの塚本がそれぞれ左下段廻し蹴りを効かされてしまっている。



既に述べた通り身長180センチ体重115キロと総重量級な体格にして、本戦から最終延長まで連続してラッシュがかけられるスタミナ、暴風のようなスピード、そしてあらゆる技を今使いこなす器用さ、柔軟性、そして奥足への左の下段廻し蹴りと言う、通常当てるのが難しい技を主な武器として扱い、ほとんどすべての相手に対して有効だと言うその渋さ。

その強さが遺憾なく発揮されたのは、第9回世界大会。

日本最大の危機を救った、第9回世界大会

ベスト8に、日本人は塚越と塚本の、2人のみ。
そして塚本は、準々決勝で敗れるという、異常事態。

初めて日本から王座が流出するかもしれないという緊急事態。

その塚越が――史上最強と呼ばれた外国人4強の、そのうち3人を連続して破らなければいけないと言う圧倒的に厳しい状況。

その中――準々決勝では “シベリアの皇帝" と呼ばれたロシアのデニスグリゴリエフ、準決勝では “神童" と謳われたブルガリアのヴァレリーディミトロフ、そして決勝では “バルトの魔人" と恐れられたドナタスイムブラス。

この3人を立て続けに、圧倒的に破ってしまったのだ。

シベリアの皇帝、神童、バルトの魔人の連続撃破

“シベリアの皇帝" デニスグリゴリエフを、接近して突きとロングレンジの蹴りを封じ、左下段を効かせ、


“神童" ヴァレリーの代名詞下段踵蹴りヴァレリーキック、踵落としを完ぺきに封じ、膝蹴りで意識が一瞬飛ぶこともあったものの、左下段で完全にバランスを崩させ、


“バルトの魔人" ドナタスの、そのバズーカのような突き、膝蹴りを完全に回し受けで捌き切り、左下段を効かせてからの右下段で完全に圧倒した。

体重別世界大会である第3回カラテワールドカップでも重量級で優勝しているし、全日本大会も36回大会は圧倒的な戦いぶりで優勝している。

34回、38回、42回はすべて塚本徳臣に敗れている。
逆に言えば塚本徳臣と時代さえ違えば、全日本大会を四回も五回も優勝していた可能性が高い。

さらに言わせてもらえば第8回世界大会も、準決勝で鈴木国博に敗れて3位で終わっているのだが、私から見てどうしてもその時の塚越が鈴木に劣っていたとは、そして引き分けに持ち込まれるような戦いであったとは、思えなくてならない。

どうしても時節、時流というものがある。
どうしても大会は、どちらかに流れが、どちらかに勝たせようという空気があることは否めない。

しかし、私は個人的に一度彼に指導を仰ぐ機会を得たことがあり、その際その辺りのことを訊いたことがある。

しかし彼は、笑うのだ。
人懐っこそうな、人のよさそうな笑顔で。

たら、れば、を言うことは元来憚れる。
事実同時代で腕を競い合ったからこそ、それほどまでの高みにまで登ったことも事実なのだろう。

しかしそれでも研究している、知っている身としては、歯がゆい想いを抱えていることもまた、事実なのだ。

極真空手を20年以上やってきた私から見て、彼が極真史上最強の一角にあることは間違いない。

受けの達人、塚越孝行。

どうか彼の凄さ、素晴らしさが、正確に世間に伝わることを願っている。

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