あ、昨日も会ったねぇ?

2019年11月27日

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 次の日。

 必要なところはパソコンでメモをとったり、隼人と喋ったりしながら午前中の授業を終え、昼休みを迎えた。
 いつものようにサークル室に向かう隼人を見送り、僕は昨日立てた作戦を早速実行してみることにした。
 頭が飽和状態であらかじめ買っておくのを忘れていたパンを、久々に並んだ行列にうんざりしながら買う。

 選ぶ時一瞬迷ったが、せっかくだから昨日薦めた30種類のスパイスのカレーパンを買った。
 ようやく買い終えて店を出る時、レジに立つおばちゃんの肩越しに購買部内の時計が目に入る。

 昼休みが始まって少しの、十二時二十三分――昼休みは十二時十分から十三時まで。
 吹き抜けに出るドアを開けて、指定席の椅子を覗くと――いた。

 いつものように、厳かな感じを受ける全身真っ黒な格好で……昨日教えた30種類のスパイスのカレーパンを食べていた。
 ちょっと嬉しい。

 ――――よし!

 気を引き締めて彼女の傍まで行き、出来るだけ軽快な声を意識して笑顔を作った、

「あ! 昨日も会ったねぇ?」

 ――が、

 返事どころか、またしてもこっちを向いてくれることさえなかった。
 ……OK。


 昨日と同じように、呼びかけてるのが自分のことと思ってないわけね。
 なら……と、昨日と同じように彼女の左肩を叩いて気づかせようと右手を近づけ――昨日と全く同じように、彼女は物凄い勢いで振り返った。

 まるで背中に目でもついてるんじゃないかと思える超反応。
 ひょっとして、僕って匂うんじゃないのか……と一瞬その手を引っ込めて匂いを嗅いだが、特に異臭はしなかった。

 そんなことしてる間にこっちを、大きく目を見開いて、でもやっぱり感情の宿らない瞳で見つめる彼女に気づく。
 気を取り直して再び、

「あ! 昨日も会ったねぇ?」

 全開の営業スマイルを作る。

 彼女は――こくり、と不思議そうな顔で素直に頷いた。
 そ、そこで頷くか?

「……う、うん」

 想定外の反応に一瞬次に何を言うか忘れた。

「……で、さ。そ、そこにいるのまえからきになってたんだよねっ」

 慌てて言ったので凄い棒読みまくし立てになる。

「ぶっちゃけ……携帯の番号とアドレス、教えてくれないかな?」

 その無邪気な様子に多少気圧されながらもなんとか最後は作戦通りに切り出した。
 最初彼女は少しの間ぽーっとこちらを眺めていたが、不意に思い出したように、

 こくり、

 と静かに頷いた。

「――え? …………マジで?」
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