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Ⅻ/ベトの離脱③

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 ぼんやりお日様を眺めていたら、声をかけられた。

 でっぷりした体躯にひかる禿頭、スバルだ。
 スバルは初めて会った時から、折りを見て声をかけてきていた。

 それは笑顔を見せて、猫なで声で、親しげに。
 それがアレには、気が置きにくいものだった。

「…………はぁ」

 こっちにきて、三日。

 さすがに無視し続けるのも気が引けるので、一応おざなりに申し訳程度な返事をかえす。
 それにスバルはお決まりの苦笑いを浮かべ、

「はは……今日は、100回くらいやってたみてぇじゃねぇか? どうだ、剣の感触は?」

 くらいというか、きっかりだ。どうやら数えていたらしい。
 そういうところも、アレには気が許せない一因に他ならなかった。

 それに、剣の感触。

「――重いですね」

 それぐらいしかない。
 スバルは頬を引き攣らせ、

「そ、そうか。まぁ女子供には扱いにくい武器よなぁ。嬢ちゃんは、あれか? 今までスプーンより重いものは持ったことがないっていう口かい?」

「そうです」

 明らかな冗談めいた口調に、アレは即答した。
 もったことがない。
 事実だから。

 スバルの苦笑いは、凍りついた。
 そして――質の変わった笑みへと、変貌した。

「――嬢ちゃん、昨日の夜のことは覚えてるかい?」

 明らかにご機嫌を窺うような口調から、こちらのうちを覗き込もうとするような感じに。

 それにアレは、なんの感想も抱かない。
 抱く必要性というか、そういう条件反射をそもそも持ってはいなかった。

 だから単純に、その文章のみをくみ取る。

「覚えていません」

 ただ一言。
 わかりやすいくらい、単純な答え。

「……まったく?」

「ぜんぜん」

「ほんの少しも」

「ないです」


 ない、という言葉にスバルはしかめっ面を、笑顔に戻す。
 この子がないというのなら、それはないのだろう。
 だが一応ここまでは聞いておかなければならない。

「じゃあ昨日ベトの前で倒れたところまでは覚えてるだろ?」

 無言で首肯、スバルは続ける。

「じゃあ、そのあと起きたら……」

「今朝ですよ? それがなにか?」

 ややキツメな顔で見つめられ、スバルは再び苦笑い。

「そうか。いや悪かったなあ、邪魔して。じゃあな」

 手を振って、去っていく。
 それを無言無表情無動作で見送り、アレは人心地つく。

 苦手だった。
 理由なき、好意が。

 恐れていた。
 アレは、ひとを。

 今でも。
 それは無理もない事だった。

 ずっとベッドの上で祖母とだけ会話を交わし、そこから窓を見て暮らしてきて――ひとの無関心も、悲哀も、そして狂気と暴力も、見てきた。

 それ以外、見てきたことがない。
 一度として子供は許されることも、パンを与えられることはなく――代わりに酷い罰を、その身に刻みこまれていた。
 祖母も自分を、所有物のひとつのように見ていた。

 だから苦手だった。
 だけど生きるためモノのように振る舞い、それが正しいと信じていた。

 なのに実際は、祖母は本当に優しかった。
 自分の感覚は、何一つとして信じられるものではなかった。

 そしてそれは同時に、世界というものがより遠くに過ぎ去ったように錯覚させた。
 わからない、ということほど怖いものはなかった。

 だから一定の距離が、必要だった。
 なのにベトに対してだけは、安心できた。

 好意のようなものが、見受けられないから。
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