Ⅵ/急襲①

2019年10月18日

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 ベトの許可のあと、アレの返事に続き、みんな素ぶりに走りだす。
 おいおい、他に筋力トレーニングだとか模擬戦だとか槍突きだとか弓だとか色々鍛錬はあるだろうが?
 という疑問はもう置いておいた。

 好きにしてくれ。

 そう無理やり割り切りベトは自身の愛剣に手をかけ、

「じゃあ、俺もや――」



 ガンガンガン、と切迫するように荒々しく鐘が三回、かき鳴らされた。



『!』

 それに一斉に、傭兵たちが訓練の手を止め、そちらを目を向ける。

 見張り台から、赤い旗が振られていた。

 急襲。

 最初に反応したのは、その場で一番実戦経験が長く、かつ先行部隊を取り仕切る立場の、ベトだった。

「っ! ……おい、一番隊二番隊行くぞ! レックスとマテロフは俺に続け! ――と、アレ=クロア!」

 素早く周りを見渡し現状把握し仲間に指示を出しながら自身も素早く駆け出――そうとして、隣のアレの存在を思い出した。

 一斉に動き出し殺気立つ仲間たちに、アレはわけもわからず動揺していた。
 そして、怯えていた。
 みんなの突然の、変貌ぶりに。

 無理もない。
 だけど構っている、余裕もない。
 チッ、とベトは軽く舌打ちしてアレの両肩を掴み、

「――おい、あんたボサっとすんなよ! 急襲だ、敵が、来るんだよ! さっさと部屋の奥に隠れろ、いいか、絶対に出てくんなよ!」

「ぅ、え、あ……」

「いいかッ!」

「あ、は、ぅ……」

「ベト、なにしてんだよ行くぞっ!」





 レックスが、声をかけてくる。
 もう時間がない。
 ベトは再び舌打ちして、

「チッ……いいな、出てくんなよ! ベッドで布団かぶって、震えてろっ!」

 言い残し、茫然自失なアレを残し、ベトは愛剣を手に戦場に駆けて行った。

 ベトとレックス、そして二番隊隊長のマテロフは騒然となった鍛錬場を抜けて最前列である、物見台下までたどり着き、螺旋階段を一気に駆け上がった。
 そのまま監視係まで走り寄り、

「状況は?」

 ほとんど無駄な言葉を省いた質問に兵士は向こうに向けられた双眼鏡から視線を外さず、

「……敵兵、目視できるだけで50から60。騎馬隊を編成し、こちらへ向けて進軍中。衝突はおよそ――10分後」

「はやっ……くそが、ろくに態勢を整える暇もねぇじゃねぇか……スバル!」

 報告を聞き、即座にベトは踵を返してカンカンカンと螺旋階段を下りてそのまま出撃ゲートへと向かい、そこにいるスバルと合流する。
 スバルは集まってきた傭兵たちを整列させているところだった。
 その数、およそ80。
 さらに用途に応じて一から三番隊に分けられている。
 そしてさらにそれぞれに隊長がいて、その隊を仕切る手はずなのだ。

 それにあとから来たレックスと、マテロフが合流する。

 ベトはスバルの傍に寄り、それにスバルは指示を送り続け耳だけそばだて、

「ベトか、現状は?」
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