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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 意外な言葉だった。
 てっきり朱鳥はこっちのことなんて気にせずに、さっさと教室に向かってしまったものだと考えていた。

「にしても……なんであんた、そうなの?」

 朱鳥が一歩、また一歩と大島に近づき、挑発的な言葉を投げかける。

 それに事態に頭がついてきた大島も、

「……妹かよ。なんだよ朱鳥、お前もお兄ちゃんのピンチに駆けつけてきたとでも――」

「しゃべんな」

 大島の物言いを文字通り封じる、冷徹な言葉。
 それに大島は言葉を詰まらせ、遥は息をのんだ。

 朱鳥は、眉をしかめていた。

「人のこと、気安く呼ばないでくれない? 妹とか朱鳥とかお前とか、すっごい馴れ馴れしい。キモい。てか死ね」

「――――ッ! し、死ね、だと……っ!?」

「そうよ。死になさい」

 大島の剣幕も、ものともしていない。
 朱鳥は大島の目と鼻の先まで間合いを詰めて、近距離で下から、傲岸不遜に睨みつける。

「そうよ、今すぐ死になさいよ。目ざわりなのよ。うざいのよ。徒党を組んで、弱い者いじめばっかして、偉そうにして。何様のつもりよ、冗談じゃないわよ、死ぬのが嫌なら今すぐ消えてわたしの前から」

「っ……ぐ、ぐ!」

 言われ、畳みかけられ、大島は最初こそのけぞっていたが――恥辱と怒りに顔を真っ赤に染め、

「い、言ってくれるなこのくそ女(あま)ァ……女は殴らないとか考えてんじゃねぇだろうなぁ、あァ!?」

「脅しこめばいいとか思ってる。低能」

「っ……さえずるなやこの女――――ッ!」

 叫び、激昂した大島は拳を振り上げ、そして――



「おまえ、女に手を出すのかよ?」



 二人の向こうから、さらに別の声が上がった。

 それに遥、そして大島が拳を振り上げた姿勢で目を向け――ポケットに両手を突っ込み、口の両端を吊り上げこちらを悠然と眺める、天寺司と目が合う。

 それを見とめ、大島は呆然とつぶやく。

「あ、天寺……」

「よっ、久しぶりだな。元気してた?」

 声が震える大島とは対照的に、天寺は楽しげだった。
 目をきらきらと輝かせ、あまつさえ笑顔まで作っている。

 その様子に大島は振りかぶった拳を下ろし、ギチリと歯を噛み締めた。

「……舐めんじゃねぇぞ、天寺。あん時は不意打ちだったからやられたが、今回はそうはいかねぇぞ……こっちは三人だし、それに今――」

「あー」

 突然天寺が声を上げて、大島の言葉を遮る。

 その行動に大島も眉をしかめ、遥もわからないという顔で見守るなか、天寺は片眉を上げ、

「その前に、これ以上痛い目見る前に、もうやめねーか? 無意味だろ? 神薙に手を出すのも、オレにやられんのも」

 あんまりといえばあんまりなその物言いに、はじめ大島は目をまん丸に見開いていたが、やがて震えだし、

「――ざけんなよ、天寺。てめぇ、今俺をやっとかないと、今度は俺ァ遥を殺すぜ? それが嫌なら、てめぇが今俺に殺されるしかねぇんだ。わかったか、あァッ!?」

 それは酷く哀しく、遥の耳に響いた。

 チンピラには元来、なにも無い。

 努力もせず、信頼関係も築かず、ただ態度で脅しつけることで自分の優位性と居場所を作り出す。
 だからその優位性を失ってしまったら、居場所がなくなってしまう。だから、引けない。後ろ盾などは無くとも声を張り上げ、虚勢を張らなければならない。

「あ~……っしゃーねぇなぁ」
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