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ⅩⅨ/決別③

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 その凄惨な光景に、連れたちが慌てる。

 ベトはその血を避けもせず浴び、口元で舐めとった。
 理解した。
 自分の立場を。

 そうか。
 ならもう、後戻りはできないな。

「アレ」

「はい」

 驚いたことにアレもまた、バケツでひっくり返したような血を浴びていた。
 全身で。

 それによりトレードマークの銀の髪と薄汚れてはいるが白いローブは、赤くまだらに染まる。
 それは見る者を引き攣らせる異常な光景だったがその中で、アレはいつものように笑っていた。

 快活に。

 それにベトも、いつものように不敵に笑う。

「世界を変えるぞ」

「はいっ」

 アレの声は、晴れやかだった。


 全滅させるのに、二時間もの死闘を演じることになった。
 結局は傭兵仲間たちも手伝ってくれた。
 それがなくては、逆にやられていたのは確かだったただろう。
 なにしろアレは、ただ見ているだけだったのだから。

 それではベトと国軍の、1対50の構図だ。
 いくら勢いどったと言っても、無謀な数字だろう。

「さて、こっからどうすっかな?」

 ベトは頭をかきながら――血に濡れているためいつものようにふけは飛ばなかったが、

「これで俺たちは、国を完全に敵に回した形になるな」

 その声は内容と反して、微かに嬉々とした響きを持っていたものだった。
 それにアレもなぜか笑顔で、

「そうですね。ではわたしたちは、どうしたらいいと思いますか?」

「城に乗り込もう。現国王の首を取れば、相手方も誰を相手にしているのか、否応なしにわかるしな」

「……本気で言ってるのか、ベト?」

 その声に割り込んだのは、いわずもがなスバルだった。
 その姿は泥と血と汗にまみれ、酷いものだった。
 鎧もあちこち陥没し、出血もある。だがこれでも仲間の中では被害は低い方だった。

 呻き、倒れている仲間たちは半数以上、三分の二に及んでいる。
 残りも痛むか所を押さえて、息を整えるので精いっぱいという感じだ。
 こうしてまともに会話に参加できるのは、僅かに4人に過ぎなかった。

「ああ、本気だ。ていうか本気で、頭のネジが外れたらしい。だいたいがこんな魔女(やくびょうがみ)を連れてきた時点で、年貢の納め時だったんだろう。こうなりゃいくとこまでイクだけだな」

「……アレは、どう考えている?」

 マテロフが尋ねる。
 手元には愛弓。
 彼女のまたあちこちに擦過傷を抱えていたが、長距離狙撃手という職業柄重傷は免れていた。

 アレはマテロフの問いかけに、やはり笑みで返した。

「ベトを、信じます」

 言葉が変わっていた。
 そこにはハッキリとした意思があった。

 出来る出来ないじゃない。
 ベトがいれば大丈夫、と。

 そこにはマテロフ――というよりも他人では計り知れない信頼関係がはっきりと見て取れた。
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