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2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 僕は今、彼女の服装を見て、まるで喪服みたいだと思った。

 つまりはそういうことだ。

 僕は今、自分の頭の中で作った架空の世界と現実をごっちゃにしているんだ。
 いわゆる妄想ってやつだ。
 そう見れば暗闇に揺れるススキは幽霊だし、自分の影はドッペルゲンガーだ。

 なんだ?
 あれは遺骨か?
 そう僕は言いたいのか?

 考えろ。
 もし遺骨だとして、バッグの中に入れて持ち運ぶ必要がどこにある。
 百歩譲って何らかのやむにやまれぬ事情があって持ち運ぶ必要があったとして、何でバッグなんだ?
 なんで骨壷に入れてない?
 知ってるだろ、骨を焼いたら箸を使って一つ一つ拾って渡して骨壷に入れるって。
 バッグに直接入れて運ぶだなんて聞いたことが無い。

 だから結論は、僕は今、彼女の格好を見て、喪服を連想したあと指二本分のほんの僅かな隙間からたった一瞬ちらっと白い物が見えたことにより、現実を酷く捻じ曲げた妄想をしているだけなんだ。
 理性を担当する自分がそう言って、僕自身を説き伏せようとする。

 だけど、感性担当の自分がどうしてもさっきの物が骨に見えて、そしてあのバッグが骨を直接入れた禍々しいものに見えて、彼女自身がそういう骨を直接入れた禍々しいバッグを持ち歩く不吉なものに見えて、仕方なくなっていた。

 急速に血の気が引いていくのを感じる。
 冷静になれ、と何度も自分に命じる。
 再びバッグを見た。
 相変わらず指二本分開いていたが、指二本分は指二本分だ。
 再び確認する気も起きない。

 思っていたら、急に上の方から手が伸びた。
 黒い薄い手袋をした、彼女の手だ。
 それがバッグに伸びて、ジッパーの開いた隙間に入る。

 かちゃ、

 音がしたような気がする。
 何か硬い物がぶつかり合うような無機質な音。それは一回だけ、耳にも残らないような呆気なさで、消えた。

 そのあと彼女は何も無かったかのようにジッパーを閉じた。
 じっとバッグを見つめる。

 本当にあの音が響いたのか、今では正直自信がない。
 理性担当と感性担当の自分がしのぎを削りあい、僕自身何が本当かよくわからなくなる。

 パニック寸前だった。
 奇妙なプレッシャーに耐え切れなくなり、そのまま視線を上げて彼女を見た。

 全身を厳かな黒衣の衣装で包み込み、漂わす雰囲気は冷たく、視線は真っ直ぐ前を向いたままだった。
 動かない。

 その口には先ほどから食べているパンが動き少なく頬張られている。

 急に、視界が広くなった。
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