“氷のハイキック”セルゲイオシポフ テイシェイラに一本勝ち、ぺタス、グラウべに勝った世界大会3位ピチュクノフより強いロシア戦士!
ロシアンカップ二連覇
第8回全世界空手道選手権大会に強豪ロシア勢の主将的な立ち位置で紹介され"氷のハイキック"、"冷徹な貴公子"と言う二つ名を有し、第8回世界大会で7位入賞した男だ。
しかし私は当時あまり情報源がなかったために、その世界大会での、主にグラウベフェイトーザに押し切られた試合しか見ていなかった。
しかし実際のことを調べてみると、その戦歴は輝かしく、その戦いは素晴らしいものがあると言う。
それを今回は時系列よって、解析、紹介していきたいと思っている。
彼の名が、一躍有名になったのが、1999年の、第7回世界大会。
そこで、初出場ながら外国人三強と言ってます間違いのない、ニコラスペタス、グラウベフェイトーザを破り3位に入賞を果たしロシアの存在をアピールしたアレクサンダーピチュクノフが、試合後に、ロシアには私より強い選手がいる、と言わしめられたことが初と言っても間違いでは無いかもしれない。
セルゲイオシポフは2000年、および2001年のロシアンカップ軽重量級を二連覇している。
上段膝蹴り、下突きの、映像で見る限りまさしく骨太の試合で勝ち上がっているようだった。
そんなオシポフは2001年に開催された、第2回世界ウェイト制空手道選手権大会に出場し、軽重量級にエントリー。
第2回全世界ウェイト制大会
日本の軽量級王者、池田祥規選手を相手に、非常に近い間合いから重たい下突きを連発し、その最中に全くモーションをつけない鋭い上段膝蹴りを突き上げる。
特にその肝臓を狙った左の下突きは強烈で、その破壊力に徐々に池田選手が蝕まれているようだった。
延長戦に入っても機械のようにペースは変わらず、時折上段回し蹴りも交えて、さらに左中段廻し蹴りの連打が決定打になり、場外に叩き出し、その年の全日本ウェイト制を制した男を相手に文句なしの判定勝ちを決める。
準々決勝では池田雅人を相手に、重たい左下突き、とんでもなく早い右上段回し蹴りを見せつけ、会場を驚愕させる。
基本的には相手の攻撃は全く避けず、躱さず、受けず、捌かず、前進してただただ自分の攻撃を思いっきり当てていく。
そして正拳突きで腹を叩いて、下段を上げて、相手にゆっくりのペースに慣れさせてからの、急激にスピードをと軌道を変える右の上段回し蹴りを直撃。
衝撃、池田選手は全く抵抗できずにマットに崩れ落ちる。
これが、氷のハイキック。
準決勝は、日本の次期エース候補、田中健太郎。
序盤はお互い、ローキック、そこからオシポフはいつも通りの下突きと言うよりは鉤突き、それに対抗したてのインローと言う構図になる。
間合い、スピード、ぴったりと相性が良い2人と言えるだろう。
田中健太郎はセルゲイオシポフの下突きの威力に、少しずつその腕でさばき出す。
ガードする。
つまりはその手が、自分でも気づかないうちにだんだんと降りていく。
何しろ突きしか放さないのだから、ある意味仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。
だから必然的に、ダメージと言えば田中健太郎のローキックの方が上回っているように思われる。
試合は延長にまで及び、田中健太郎がが攻略法を手中したように思われた。
その上段回し蹴りも2回ガードしているし、もう大丈夫だろうと。
しかしそんな状況だと言うのに、セルゲイオシポフが全く変わらず、むしろ体をたたきつけるように密着しての下突きで、田中健太郎を押し返していく。
それに田中健太郎も危機を察知して回り込み、相手の顔をまっすぐ見て再度攻略し直そうとした、その直後。
左の胸の正拳突きで体を横にずらして、視界から消失させ、それに右の正拳突きでブラインドして、完璧なる死角から放たれた氷のハイキックで、田中健太郎はなすすべなく膝からマットの上に倒れ込んだ。
まるで、将棋の最後の詰めの形を観たようだった。
最初から最後まで、この形を、これを狙って、そのように戦い方を進めていた、そうとしか思えない。
恐るべし、まさしく恐るべし。
そして決勝は日本の総大将、後の世界大会王者、木山仁。
木山はいつも通りローキックを放ちながら、軽やかなステップワークを見せる。
すると木山の外回しからの踵落としに合わせて、壮大で超高速の後ろ廻し蹴りさえ見せるオシポフ。
まだこんな技を隠し持っていたのか…。
しかしここまでの激闘で足を痛めているようで、木山のローキックが効果的で、さらにはそのステップワークにややついていけないような気配を見せる。
得意のパンチも、空振りが増える。
上段回し蹴りも、間合いが開いていれば見えないこともない。
そして木山仁のインローキック五連打、上段回し蹴りも木山仁のガードを超えることができず、最後はラッシュに飲み込まれる形で、準優勝となる。
次いでオシポフは翌年に行われた極真パリ国際空手道選手権大会出場。
世界王者に一本勝ち
ウェイト制の世界大会よりもさらにスピードを増した勢いで、対戦相手を圧倒。
特にこの大会では下段回し蹴りも効果的に使われており、準々決勝では伝家の宝刀氷のハイキックによる1本勝ちを含めての、危なげのない決勝進出。
そしてそこで待ち受けていたのは、後の第9回世界大会で優勝を果たし、K-1でも活躍する、"褐色のマシンガン"エヴェルトン・テイシェイラ。
お互いがパンチが得意な同士の、難敵中の難敵。
この巨大な黒い壁を相手に、いつも通りまさに真っ向勝負。
しかし前年の世界ウェイト制と変わったのは、下段蹴りをある程度さばくようになったところだろうか。
ハイキックを出せばハイキックを返し、パンチは下突きvs正拳突きと、なかなかに好対照な2人。
がむしゃらにラッシュするテイシェイラに対して、もしくはそれを的確にさばきながら、やはり的確な下突きを急所に当てていく。
手数で圧倒され、何とか延長に持ち越し、やはりこのままではテイシェイラかと思われた、その直後。
つっかけてきたテイシェイラの腹に下突きを当て、効かせて、勢いを止めてからの、下を向いての意識を完全に下に向けての、氷のハイキック一閃。
巨身体が天を仰ぎ、大きく揺らいだ。
あの絶対的な強者、無敵ともいえる肉体を持つエウェルトン・テイシェイラが、上段回し蹴りで技ありを奪われた。
会場騒然。
オシポフはその快挙に珍しく右手を振り上げ、天を仰ぎ、何度もその右手で、十字を切った。
それはまるで自らが信じる神に、心から感謝の祈りを捧げるかのように。
そこで初めて、冷徹な貴公子の顔に、笑顔が見えた。
この男も笑うのか、そんな当たり前のことを今更ながら思い知らされた。
この男も勝利すれば、男的に勝ち得ることができたら、嬉しいと思うのだなと、そんなことを考えたりした。
そうした瞬間に、急にこの男のことが胸に響いている自分を見つけた。
なるほど彼は武道家として、空手家として、そういう一面を普段見せないようにしているだけで、内面はもしかしたら違うのかもしれないと。
その上段回し蹴りは確かに氷の一撃だが、その心の内は決して氷ではないと。
氷のように見えるところまで、叩いてきた位で、研ぎ澄まして磨き抜いてきたと。
その様はまさに、武道家であり、極真空手家そのものでは無いだろうか。
そして最後にオシポフは引き上げる時、観衆の歓声に応え、その右手を掲げて、また再びかすかな笑みをたたえた。
そして仲間と掌を合わせ、素晴らしい戦いを讃えあい、そしてしっかりと抱擁。
次の人物は両手で抱えて、自分よりもはるかに重いであろう体を持ち上げる。
おそらく日本でも、このような彼の姿を報道していれば、もっと名前が行き渡り、もっと人気になったのではないだろうか。
少なくとも私は、彼の戦闘スタイル、その氷のハイキックの鮮烈さ、佇まい、そして皆の期待に応えるところに、すっかり惹かれているところがある。
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