第77話「変で極端で歪な街」
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本編
人間いつまでも童心を忘れてはいけないと思わされる。
それに僕自身、青臭い友情万歳なところもある。
それは、やはり小学生のときの記憶が起因している部分はあると思う。
神龍との出会いはおかしなものだった。
ある参加型の授業でグループ作業をすることになり、僕は偶然神龍と同じグループになった。
その時の神龍は凄かった。
人の言うことは聞かないわ、話し合いには参加しないわ、そのくせ言葉は命令口調だわで……当然の結果として、あっという間にグループから孤立してしまった。
孤立してからも神龍はむっつり顔のまま傲慢そうに腕を組んで、グループ作業を手伝おうともしなかった。
でも僕は、そんな神龍に興味を持ってしまった。
その姿が、キャンプ場での事件が起こった後の頃の、不器用だった在りし日の自分の姿に重なってしまったから。
ある日のグループ作業の授業前。
少し早目に教室にやって来ると、神龍も既に来ていた。
教壇手前の一番前列の席の右端で、一人で何か読んでいた。
一つ後ろの席からこっそりと肩越しに覗いてみると、早瀬市の観光用ガイドブックだった。
心を決め、肩に手を乗せて一言、
――旅、好きなのか?
僕は神龍に、今回の旅の趣旨を尋ねた。
「今回はどういう企画なんだ?」
最近は山系が多いから、久々に違う趣向を凝らしたいと思っていたが、
「海だ」
「海……か?」
眉をひそめる。
海?
それって旅というか、発見というか、そういうこととは無縁のような……そんな僕の疑念をよそに、神龍は窓から視線を外さず言った。
「照ヶ崎(てるがさき)海岸の海の底には何があるのか、気にならないか?」
…………今回は潜水をすることになりそうだ。
僕は頬をかいた。
繁華街に出れば遊ぶ場所も買い物する店も一通り揃っている。
だから一見発達してるように思われるが、一歩郊外に出ると、山と田んぼが地平線まで広がっていたり、海と砂浜しかないような場所に出ることができる。
変で極端で歪な街、早瀬市。
それでもやっぱり僕がここを嫌いじゃないのは、一つには慣れ親しんだ故郷であることと同時に、僕と神龍がバカ出来るのにこの環境が大きく手助けしてくれているからだと思う。
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