第88話「ぶいぶいぶいぶいとVサイン」
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本編
「はよっ。早いね、君らは」
その言葉に、隼人は楽しそうに隣を――彼女を見る。
「ふっふっふ……聞いてよ、しんや。よづっちゃんはね……なんと、一時間前に来た僕より早かったんだよ~」
「来るな、一時間前なんかに。……てか暗戸さん、それより早かったの!?」
目を剥いて尋ねる僕に硬い笑顔のまま、彼女はぶいっ、とVサインを突き出す。
……てされてもなぁ。
「楽しみだったからねぇ」
隼人もVサインを彼女の方に突き出す。
なんかさらに仲良くなったみたいだった。
本当にこの二人は相性良いと思う。
それを微笑ましく思いながら、神龍の方に向き直る。
「神龍、ちっす」
「おう」
目線を変えず、言葉に抑揚もない。
相変わらずの無愛想振りだ。
まぁ、これはこいつのスタイルだから、それで機嫌が悪いとか判断出来ないのだが。
「りゅうちゃんも僕より早かったんだよ~」
げっ。マジか……
「お、お前も楽しみにしてたみたいだな?」
空を見上げたまま、指だけVサインを作ってこちらに向ける。
「……はは」
愉快な愉快な"変な"集団だった。
笑顔で、堅い表情で、無表情で。
ぶいぶいぶいぶいとVサインを突き出しあっている。
これからの展開にこれ以上ないほどの巨大な不安が去来する。
そこまで考えて、ふと思った。
「こんだけ集合したなら、切間も誘えばよかったかな?」
「そうだね。なんか、あっちゃんだけ仲間外れにしちゃったみたいだしね」
神龍も同意する。
「うむ。久々にあいつにも会いたかったのだがな。最近ゼミではどうなんだ?」
最近のあいつの『暴走振り』を思い出す。
「相変わらず、みんなをぐっちゃぐちゃに掻き乱してるよ。この前の第二次中間発表会なんか、みんな研究成果としてフォトショップとかイラストレーターとかの習得経過を発表してるのに、あいつだけブレイクダンスの習得経過とか言って、教室の真ん中で回りだすんだからな。まぁ、いつものように先生だけは面白そうに見守ってたけど」
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