風立ちぬ 航空機への愛と堀越二郎へのリスペクトを込めた伝奇作!

2024年4月10日

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宮崎駿最後の作品

御存知スタジオジブリ宮崎駿の皮肉を込めてだが、現在進行形では引退作品だ。

この作品実は一度ギブアップしている。

話の流れが不明瞭で、主人公を演じている庵野秀明のあまりにも棒読みな声でどうも話している内容が入って来ず、主人公の夢のシーンがあまりに多すぎて肌に合わなかった。

一緒に見た先輩曰く、主人公眠りすぎ。

全く以て同意だった。

しかし、ロンドンに留学したときに知り合った建築家で芸術家の友達が、この作品の良さを語っていて、それで興味を持ってもう一度見てみることにした。

かなり印象が変わった。

今までの作品の様に、じっくりと感情移入して、一つ一つのシーンに入り込んで、そうやってストーリーを追うのではなく、全体を大雑把に、タイムラインに沿って流れるように把握することによって、視えてくるものがあった。

愛とリスペクトを込めた堀越二郎と自分のための作品

これは、伝記だ。

いわゆる、エンタテインメント、娯楽作品として、描いていない。

これは、最後の作品と言うことで、引退作と言うことで、いわゆる費用対効果や、大衆受け、そういったものを考えていないのだろうと思う。

宮崎駿は、この零戦を作ったという、堀越二郎を大変にリスペクトしているのだろう。

風立ちぬと言う作品を通して感じられるのは、いわゆる航空機、それに対する熱烈なまでの愛と、堀越二郎、その生涯の、匂い立つようなまっすぐさ、苦しさ、辛さ、それでも追いかける夢のまばゆさ、それだった。

これは、宮崎駿と言う1人のクリエイターが、一般大衆や、誰かのためではなく、どこまでも自分のため、そして堀越二郎のために、作った作品なのだろうと感じられた。

自分が見て、そして作って、心のそこから、満足いくような、そういった作品を、全身全霊で作ろう。

だから、この作品は、ある意味で大衆や、観劇者を、置いてきぼりにしている。

感情移入できる前から、どんどん話が進むし、整合性を取るために、ご都合主義とも言える夢の中で尊敬するカプローニ伯爵に出会って、知ることのない世界や、技術や、構想や、考えなどを聞いて、それでどんどん先に進んでいく。

運命の出会いも次々と訪れ、ありえないような偶然も続き、そして苦難があって、ようやく我々の気持ち追い着いたところで、悲劇的とさえ言えないような別れや、余韻も残さないような終劇。

何も知らずに、普通の作品と思って、ただ見ただけだったら、これは確 かに評価ができないというか、難しいものだと思う。

だけどすでに述べたような背景を持ってみるのならば、わかるところがある。

正直私は、この作品は、エンタメ作品として、他のそういったものとは同列には評価しない。

そういった観点から言えば、決して勧められるものではない

しかし、宮崎駿と言う、スタジオジブリと言うまさに世界に誇るアニメクリエイター集団を作り上げ、世界に名だたる様々な傑作を作り出し、今年鬼滅の刃無限列車編に抜かれるまでずっと興行成績1位を保ち続けた千と千尋の神隠しと言う作品まで作り上げた彼だからこそ、これをつくりあげる事は決して責められるべきものではないと思う。

知ることで浮かび上がる視点

そして、クリエイター的な観点を持つものや、様々な映画に触れてそういった裏側まで覗ける者には、響くものがある。

彼は、この2時間の映画と言う時間の中で、彼が駆け抜けた人生そのものを全てきっちりと描きたかったのだろう。

そう考えてみると、最後の瞬間の、奥さんである里見菜穂子が唐突に夢の中に現れ、生きてと告げて消え去っていくそのシーンの、その本来の意味が浮かび上がってくる。

その後の、カプロー二伯爵の、さぁ今日は飲もう、良いワインがあるんだと言う言葉も、また洒落が効いていて、人生の酸いも甘いも苦味も味わい尽くしたからこその一言だといえる。

これはスルメのような作品だと思う。

硬くて酸っぱくて苦くて、何がいいかわからないが、いろんな美食に飽きた後にかみしめると、悪くないと思える。

こういう作品に会ったのは初めてかもしれない。

そんなふうに感じられた。

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