天気の子 辛口批評!?時代の申し子が陥ったヒット次作の罠!

2024年4月10日

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君の名は、の次作

『君の名は』の大ヒットの続編として作られた、天気の子。

圧倒的CGによる背景の美しさ、キャラクター造詣の可愛らしさ、音楽のキャッチーさなどから大量の宣伝広告が打たれ、実際のところ大規模な観客動員を呼んだ。

天気をコントロールする少女という設定もわかりやすく、古来から語り継がれる雨乞いの巫女などを喚起させて、その反対と言うことで、ストーリーの壮大さを予期させやすい。

しかし私は劇場で見る事はしなかった。

大きな理由は特になく、なんとなくとしか言いようがないかもしれない。

しかしある日妹と会って話しているときに、作品を見た感想を聞き、それで鑑賞してみることに決めた。

曰く、「まじくそ」

こんな一言で興味が湧いてしまうというのもどうかと思うが、とにかくどちらかで振り切っている事は間違いないなと思った。

まずこの作品に関して言えることが、冒頭のアンチキャッチーさが半端じゃないなと言うことだ。

入り辛い冒頭とファミリー向けとは言えない雰囲気

高校一年生の家出、世間の拒絶、就活地獄、ネカフェ難民、日本の暗部とも言える歌舞伎町への逃避――

正直俺は何を見せられているんだろうと思った。

というかこれ、全然内容がファミリー向けじゃないだろう。

そしてそんな折、主人公の森嶋帆高は幾多の偶然から個人雑誌を発行している男の下に拾ってもらい、そして記事の執筆を任せられる。

そんな中、たまたま目にした銃を拾う。

記事の執筆って高1の未経験者でもできるような簡単なことで、一応平和神話が成り立っている日本でそんな簡単に銃を簡単に拾う場面に出くわすんだろうか。

そしてそんな歌舞伎町の、ある意味世界の掃き溜めのような場所で、閉店間際のマックからの偶然の再会を果たしたその少女は、錆びた崩れかけの非常階段を昇った先にある不思議な鳥居で、天気を変えることが出来た――。

私の主観だが、おそらくこの監督は、歌舞伎町に取材に行った際、この非常階段を見つけ、その上の鳥居を見つけ、そこで天啓的なひらめきを得たと感じたのではないだろうか。

これはすごい、汚い中にある、不思議な神秘さ、すごいぞ、これに日本は、世界は釘付けになるぞ!

そこに至る挿入部が、高1の家出や、世界の不条理との遭遇、いわゆる現在の世界の情勢の縮図、そこからの危険な脱却といったところだろうか。

煽情的なヒロインと昔からの手法

そして少女は人々のために晴天をもたらし、それは社会現象となっていき、お金の問題は解決し、その代わりのように少女はその存在を少しずつ失っていく。

その余波として世界的な大混乱が起きて、そこから人目を避けて一宿を求めて、ラブホテルで小学5年生の弟と3人で大騒ぎする。

この天気の子のヒロイン天野陽菜だが、登場当初から正直気になるほどに扇状的に描かれている節がある。

その服装もデニムのホットパンツにノースリーブのホワイトパーカーというこれでもかというほど露出が高いものだし、喋り方もやたらと挑発的で、どこか男を弄んでいるような感じすらするしてしまう。

設定としては主人公より年下の15歳と言うことだが、そんな女の子が初対面の異性相手にいきなりタメ口で、話してるのにそっぽ向いて晴れるよーとか、どうなろうとかぶっきらぼうに言ったり、異性のことを名前を聞くでもなく、名前を聞いてもなお、やたらと君、君と読んだりするだろうか?

高1が、歌舞伎町でいろいろ画策すると言う時点でなかなかな状態なのに、親がいない中学3年生の女の子の家に行かせたり、わざわざラブホテルに泊まらせたりする必要があるだろうか?

それをうがった見方と言われればそうかもしれないが、どうしても作家視点でそういう狙いが透けて見えてしまうのは否めない。

特に正直笑ってしまったのは、最序盤ともいえる取材での怪しい占い師が如何にもうさん臭く語っていたシーンがすべて本作のネタバレだったこと。

まさかとは思ったが、いやおそらくとは考えたが、その通りとは予想の斜め上というか一周回って予想通りというか……。

さらには警察に追いつかれ、取り逃がすというシーンが何度も繰り返されたこと。

いやさすがにここまでは警察が無能すぎるし、展開としてもどうかと……。

そしてクライマックスシーンでヒロインの雫を求めて助けるために、線路を走るシーンだ。

どう考えてもそこで走らせる必要はないと思うし、今更今時そんな昔からありふれた疾走するシーンを演出する必要があるんだろうか?

いやでも確かに君の名はでもそれは使われていたから、だがしかし……。

そして拳銃を拾っていた伏線もしっかり回収して、最後の感動の再会のシーン。

これ関しては世間では散々言われてはいるが、あまりにも泣かせのう泣かせようと狙いすぎだ。

物議を醸す感動シーンの演出、そこに至る監督を取り巻く状況

全体の動きを止めて、いかにもな音楽を流して、そして動き出す2人。

まるでさあ皆さん、ここですよ、ここが皆さんが求めていた感動して、泣くシーンですよ、さあどうぞ、さあ泣いてください、さあ感動してください、どうぞどうぞ!

そんなふうに言われている気分だった。

作品を見て、こんな気分になったのは初めてのことだった。

そして世界が姿を変えたとか、最終的にやっぱり再会したとか、その辺の印象は正直なんとなくしか覚えていない。

私個人的な感想としては、やはり前作の君の名はであまりにも商業的にも作品的にも多大な成功を収めてしまったが故に、今作はこのような形にならざるを得なかったのではないかと考えている。

この新海誠と言う監督、もともとは短編や、もしくは連作の作品しか作っていなかったように思っている。

私も秒速5センチメートルと言う作品を拝見したが、なるほどなと言う印象を持った。

一瞬の感情や、何気ない切なさを表現したり、やはり周知の通り背景やキャラクターの造形の美しさには定評がある。

しかし、君の名はで大成功を収め、

そして次の作品でも、それと同等、もしくはそれ以上の商業的成功が求められていたのだろう。

宣伝広告をバンバン売って、様々なコラボレーションや、関連商品を作って、失敗は許されない状況。

そんな中で、いわゆる安牌というか、狙っていくというか、わかりやすく奇抜なものを差し込んでいき、そして満足してもらおうと言う作品を作った。

実際この作品は全面的に否定されているわけではなく、好んでいると言う意見も少なからず拝見している。

しかし私としては、前述したところはあまりに透けて見えてしまって、そして監督の苦悩や、その狙いも露見してしまっているので、純粋に楽しむ事は難しい作品となってしまった。

狙って作られた商業感動作品。

その中で生きた登場人物たちも、どこかこの世の象徴のように感じられて、不自由さを覚えずにはいられなかった。

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