ⅩⅩⅦ/王との問答①
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目次
本編
王の前に揃う敵の数は、正確には13。
おあつらえ向きに、不吉な数が残ってやがる。
体力も限界に近く手傷も負った現在では絶望的に厳しい数字だ。
おあつらえ向きに、不吉な数が残ってやがる。
体力も限界に近く手傷も負った現在では絶望的に厳しい数字だ。
そしてなによりの問題は、目の前でピンピンしてる槍斧(ハルバート)を構えた隊長格の男だった。
こいつは強い。
もうダントツに強い。
それが一度の手合い――よりも前に会った瞬間に、直感的に感じられた。
だいたいあの超重武器である槍斧(ハルバート)を扱える時点で、まず常人ではありえない膂力だ。
それに加えて巨躯、そしてあの突きのスピード、恐ろしいまでの冷静さ。
まだ万全ならなんとかなるかもしれないが、この状況なら自殺行為に近い。
愛剣も先はへし折れてるし。
だが、やらないという選択肢はなかった。
「邪魔、だこらァ!!」
愛剣を振りかぶり、叩きつける。
しかし男は造作もなく、槍斧(ハルバート)の腹で受け止める。
それも、片手で。
こっちァそれだけで今まで生き残ってきたっていうのに、まったくアイデンティティーを破壊してくれる。
「まだやるか、首斬り公?」
今度は斧の部分が、振り下ろされる。
次は逆にこちらが、剣の刃部分で受け止める。
しかしあまりの重さに、膝をつく。
やはり強く、そしてこちらの体力は残っていない。
まず勝てない、と直感した。
その途端、死が脳裏を駆けた。
「ッ……ンのやろう!」
気合いで、押しのける。
そして打ち合いは諦め、刺突を繰り出す。
先が砕けたそれで、首を狙う。
それを男は、受けなかった。
ただつまらなそうに首を捻って躱し、近い間合いで槍斧(ハルバート)を使わず拳――ガントレットでこちらの腹を、殴ってきた。
折れたアバラが、砕けるのを感じた。
「カッ!? ハッ、く、あああ……ッ!」
膝をつく。
身体が真っ二つに引き裂かれたような衝撃だった。
さらに喉の奥から、なにかが込み上げてきて――吐き出した。
「ゴァっ!」
真っ赤な、血の塊だった。
内臓をやられたのかもしれない。
そこに槍部分の穂先が、振り下ろされる。
「ぐ、ぇえ……っ!」
血を吐き散らしながら、前のめりに転がってそれを回避する。
もう恰好も糞もない。
ただただただただ死なないために、必死だった。
「あ"……あ、ぁああ……!」
そして前のめりで、剣を構える。
ただただただただ、殺すために必死だった。
他の兵は、突っかけては来なかった。
おそらくは隊長であろうこの男に、全幅の信頼を置いているのだろう。
助かるが、実際は助かっても何でもないだろう。
「そんなに、俺の首が欲しいか?」
「欲しか、ねぇよ……オレが欲しいのは、そこのそいつの、首だ……」
指さす。
壇上の上を。
その言葉に、隊長格の男は表情を厳しくする。
「――身の程を知らぬ言葉だな。王に……とは、言葉にするのも憚れる暴言だ」
ひときわ鋭く、斧が振るわれる。
それを体勢を崩しながら、受ける。
それにより吹き飛ぶが、アバラにかかる負担を少しでも軽くする。
しようとした。
全然ダメだった。
「――――!!」
べこん、と腹がへこんだような錯覚すら覚えた。
どうしようもなく飛んだ先で、うずくまる。
その際足も大いに擦り剥く。
血の道が、出来ていた。
それでもなお、剣を杖にして、立ち上がる。
「ぐっ!?」
湧き上がる嘔吐感を堪え切れず、口から――血の塊が、吐き出された。
まるで、魂が零れていくような感覚だった。
力が、流れていくような。
「惨めだな」
「……っせぇよ」
エリオムに言われたが、しかしンなことはわかっていた。
だけどそれでも、立ち上がるしかなかった。それしか、出来なかった。
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