新着記事

畑山隆則と坂本博之のボクシング世界タイトルマッチ

: 名勝負徹底解説

畑山隆則vs”KOキング”坂本博之 パワーvsスピード打ち合い制したのはヴォルグのホワイトファングだった!

日本史上最高試合 日本ボクシング史上において、BEST BOUTの1つとされる、 ...
大山道場で極真空手家の初代師範代石橋雅史

: 空手および格闘技

“先師望月”石橋雅史 初代師範代安田英治 黒崎健時と大山茂 芦原秀幸に盧山初雄そして山崎照朝を育て極真空手の礎築いた功績!

大道無門、先師望月 大山倍達が生前よく引用していた漢文だと言い、それをさらに自ら ...
ジェラルドゴルドーやケニーウーテンボガードに小笠原和彦に勝った極真空手家ニコラス・ダ・コスタ

: 空手および格闘技

“貴き獣”ニコラスダコスタ 不敗神話を欧州やオセアニアで築き世界大会でも王者松井章圭以外には敗けなかった気高き英国紳士!

ジェラルドゴルドー、小笠原和彦に勝利 第3回世界大会で"南アの巨魁"、身長198 ...
ムエタイ史上最強の天を突く膝蹴りディーゼルノイ・チョー・タナスカン

: 空手および格闘技

“軽機関車”ディーゼルノイ “天才児”サーマート、ベニーユキーデと戦った大貫忍やテコンドーにも勝利した、知られざる変幻自在の技術、その深淵を覗く!

天を衝く膝蹴り ディーゼルノイ・チョー・タナスカン。 天を衝く膝蹴りとして、過去 ...

記事ジャンル一覧

ⅩⅩ/火中の対話②

2020年10月9日

まずはブログランキングにクリックのご支援
何卒宜しくお願いします。

 にほんブログ村 にほんブログ村へ 
 にほんブログ村ランキング   人気ブログランキング

最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む
___________________

目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 嘘だった。
 別に獣を侮っているというわけでもないが、結局これからずっとアジトで起こったような襲撃には備えなければならない。
 山を越えたからといってこの状況を変えるつもりは毛頭ない。

 だがそれをアレに言ったからといって、栓無いことだろう。とベトは解釈した。というか自分のことを話す習慣がベトにはなかった。

「…………」

 しばらく沈黙が流れたあと、アレは傍まで寄ってきて、ベトの隣に腰を下ろした。
 ベトはそちらへ自身の身体を覆っていた毛布をわけ与え、

「どした? 王都まで、まだ長いぞ? 夜はしっかり寝とかねぇと、もたな――」

「ベトは……なんで、泣かないの?」

 意味がわからない質問だった。
 だからオウム返しに、聞き返すことにする。

「……泣く? オレが? なんで?」

「辛い…じゃなくて、悲しい……も違うで……え、と 」

「おいおい……」

 その状況に、ベトは冷や汗をかいた。
 最初の荷馬車でのやり取りを思い出していた。

 あの時のような苦労はご免被りたかった。
 話はさくさくと終わらせるに限るから。

 だが予想に反してアレはしばらくしてから言葉を選ぶように、

「ベトは、死にたいの?」

 沈黙。

「……死にたかァ、ねぇな」

 確信をつくかのように、柄にもなくベトは戸惑う。
 こんなこと、もう慣れっこのはずだったが、いやはや人間の適応力の低さには恐れ入る。

 まったくこれまで、よく生きてこれたもんだ。
 いや逆か?

 さらにアレは、畳みかけてくる。

「なんでいつも、笑わないの?」

「笑ってんだろ?」

「笑……楽しく、笑わないの?」

「…………」

 夜空を見上げる。
 急に起こったなぜなに問答だった。
 まるで生まれたばかりの子供でも相手にしている気持になってくる。

 だが構わないと思う自分がいるのが不思議だった。
 こうして夜空なんて見上げてしまっている。

 現状がもうどうこう出来る範囲を大きく逸脱してしまっているから、既に腹でも括ってしまっているからだろうか?
 いずれにせよ、思った。

 嘘をつく意味も、もうないか。

「あんたは、生きてんのか?」


「生きてる」

 即答かよ。
 ベトは心中ツッコミ言葉を変え、

「自分の意思でか?」

「いえ、神のご意志で」

 予想通り以前聞いた御高説がやってきた。
 それに微かに笑みを作り、

「オレは、今までオレが殺してきたやつのために、生きてる」

 沈黙。

「……殺してきた人たちが、浮かばれるようにですか?」

 そうだよな、あんたはそういう発想しか持ち合わせてないよな。
 だけどベトは、それでいいと思った。
 なにもかも理解する必要は、ないと思う。

 いや、逆か?
 ベトは考える。

 アレの人を惹きつける理由が、なにもかもを受け入れそのうえで導く懐の深さに在ると思う。
 だとするならば、ここはその意図を伝えるべきだろうか?
 だいたいこのままいけば十中八九というかそれ以上に、二人は犬死するだろう。

 犬死にというあたりがなかなかにしゃれてると自負する。
 ならば先の憂いもない、か。
___________________

続きはこちらへ! → 次話へ進む

クリック👍のご支援お願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村へ 
ありがとうございますっ!🙇