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Ⅵ:開戦

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikukose

本編

 口からついたのは、本当に湧いて出た疑問だった。
 エリューは木片の山から身体を起こし、

「こうなること、知ってた筈じゃ? それなのに、なんで……」

「んー」

 エリューの必死の言葉、そして一歩また一歩と間合いを詰めてくる兵隊たちを引き連れたロプロスのプレッシャーにも関わらず、オルビナは飄々としたまま、

「もう、うんざりしたってとこかな」

「うんざり?」

 そこでオルビナは遠い目をして、

「……何度見捨ててきたか。何度救える命を、目の前で散らしてきたことか。なにが賢者オルビナか。たった一人の人間をすら、保身のために救うことが出来ない。それに、まぁ……こんなレベルと渡り合えんようじゃ、魔王なんぞお話にもならんだろうしね」

「言ってくれる」

 とつぜんロプロスが、口をきいた。

 それにエリューは目を剥く。
 まさかこの化け物が、言語を解するなんて――

「なんだね、鳥の化け物? 言いたいことがあるのなら、言いたまえよ」

「オルビナ=アトキン。我らに害する集団の、長たる者よ。貴様が魔法を使役するという情報を聞いてはいるが、所詮は人間。我らが兵団精鋭六柱相手に、どのように戦うつもりだ?」

「精鋭か。それこそ笑わせるね。魔王どころか発端のスペルですらない身が」

 一瞬の、言葉の火花。

「ならば、その身を持って試すがいい――」

 そして、開戦した。

【――apel tech semia】

 詠唱、同時オルビナの前方に、三つの魔法陣が現れる。

 それぞれ赤、緑、黄色で形成されており、四重の円の間に筆記体の言語が描かれていた。
 それらはゆっくりと、オルビナを守るように旋回する。

「く……くくくくっ!」

 その静の動きとは対照的に、ロプロスは一直線に襲いかかった。
 蹄で地を掴んで蹴り、翼を広げて加速し、その爪を、振りかぶる。

【――egidemint poala】

 詠唱、そして右斜め上方の魔法陣が発光――そこを窓とするように灼光の矢を、射出する。

「ぬるいわっ!」

 それをロプロスは、右の鉤爪で振り払う。
 光が、砕け散る。

 そのまま勢いを留めず、一気に間合いに入る。

「――しゃあ!」

 振り上げられる、左爪。一本一本が常人の拳ほどもあるそれは、一撃で岩すらチーズのように削り取れそうだった。

【el shield(緑の恩恵)】





 詠唱、同時オルビナの左の魔法陣が発光――そこを窓とするように、巨大な蔦が無尽蔵に溢れだし、それはまるで砂地獄のようにオルビナを覆い、爪の一撃を代わりに受け、削られた。

【kina railas(赤の牢獄)】

 さらに詠唱、右斜め上方の魔法陣が発光――そこから生まれた炎の檻が、ロプロスを包み込んだ。

 肉が焼ける音と臭いが、辺りに漂う。

「ぐ……ぐぅおおおおおおお!」

 雄たけびと共に、ロプロスは翼を強烈にはためかせ、炎と熱波を消し飛ばす。
 発生した風が、オルビナのローブと髪を大きく揺らす。

 ギロン、とロプロスの縦に瞳孔が走った目が、オルビナを睨みつける。

「ぐ……ぐ、くく、く。やってくれたな、人間よ。なるほど、さすがに我らに楯突こうなどと考えるだけはあるということか。ならば――こちらも本気で、いかせてもらおう」

 そして、周りで動向を見ていた鳥人たちが、一斉に飛びかかってきた。

【――kle zhena tic orpilas(理の杖に、知の衣よ)】

 それにオルビナは、即座に対応。右手を右斜め上方の赤い魔法陣に、左手を下方の黄の魔法陣に添え、掴み、そして回転、引き抜き――そこから赤い杖と、黄のベールを、顕現させる。

「来るがいい、魔の属性を背負いし者どもよ」

 そして、杖の先で地面を打つ。
 同時、一匹の鳥人の足元から、爆発が巻き起こる。
 それにより鳥人は吹き飛ばされるが、その土煙から他の五匹が、殺到する。

【log gig ar liate(閃幕弾)】

 迎撃呪文、赤の魔法陣が高速回転し、そこから無数の光弾が射出される。
 しかしそれを鳥人たちは空中で方向転換しながら避け、肉薄していく。
 その後ろから先の爆発に巻き込まれた鳥人も、追随してくる。

【ogira tona stansiala(護城の巨盾)】

 次いで左の、緑の魔法陣を起動、そこより現れるのは巨大な西洋風の、盾。
 もはや壁じみたそれは、オルビナの身体を完全に覆い隠す。

 それにあとから追いついたロプロスは、両の爪を突き立て、

「く――ぎぃぃいいいい」

 盾を穿ち、引き、裂いた。
 そこから他の六匹と共に、中を覗き込み、

【――svele gia(照準、完了)】

 巨大な砲台が、逆にこちらを狙っていた。

【gitodemia(轟音と破壊の、王)】

 赤と緑の魔法陣が煌々と輝き、高速回転。

 それに伴い重厚で豪奢な、央代(なかよ)の攻城兵器を思わせるその砲台が、振動、地面が陥没し、轟音と共に半径五メートルには及ぶ光の砲弾が、ロプロスに急速接近――

「ぬ――ぐ、ぎいぃいいぃいいいいいッ!!」

 心臓を引き裂くような、絶叫。
 同時にロプロスの姿が掻き消え――軌道上を半身を切った状態で、その右翼をもがれた姿が、現れた。

「ギッ!」

 そして、殺意のみが込められた血走った眼でオルビナを睨みつけ、その姿が再び掻き消え――オルビナの目の前に、現れる。

 以前見た、あのなめくじお化けと同じ動きだった。
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