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#fin「ぼくの人生の、意味」

2020年10月7日

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「成海さん、よい顔になられましたなあ」

 初めてそう言われ、ぼくは驚き、そして相好を崩す。

「そうですか? ありがとうございます」

「いや、実によい。彼女が現れてから、あなたは本当に変わられましたなあ」

 やはり、そうだったのだろうか?

「なにが、違いましたか?」

 彼がぼくに声をかけてくれたのは、彼女が現れてからだ。
 その間にいったい、ぼくにどんな変化が訪れたのだろうか?

「特になにも?」

 しかし彼は、飄々と答えた。
 ぼくがその答えに呆気に取られていると、

「ただ、なんといいますかな……なにかを、持っていると」

「持っている、ですか?」

「はい。だからわしは、それを見せて欲しいと思っただけですな」

 持っていた。
 ぼくは、もう、持っていた。

「……棚多さん」

「なんですかな?」

「今まで色々と教えていただき、ありがとうございました。後の日々は、どうか――お幸せに」

 棚多さんはそこで初めて、こちらを見た。
 それは視線というよりは、心をこちらの心に標準を合わせたというか。

 その瞳には、微かに悲しみが宿っていた。

「……ゆくのですかな?」

「はい、残念ながら……母と、裕子さんと、渡河辺先生と、みんなに……どうか、お元気でと」

「わかりました。成海さん……」

 なんと言うのだろう、と思った。
 お元気ではなく、幸せにでもあり得ず、これからいくひとに、彼はいったい――

「彼女と、うまくやりなさい」

 彼はそういって、親指を立てた。
 笑っていた。
 にこやかに。

 やはり最後の会話の相手が彼で、良かったと思う。
 病気に食い尽されようと、ぼくはこうしたかった。

「はい、頑張ります」

 ぼくもそれに、親指を立て返す。
 ぼくはこうして笑って、いきたかったから。

「遼」





 振り返ると、彼女がいた。
 見慣れた青いワンピースに、絹のような透き通る髪。
 そしてぼくの心を溶かすような、柔らかな笑顔。

 案内人がきみだなんて、ぼくはついてるな。

「無理言って、きたの」

 そうなんだ。
 きみもやるね。

「遼ほどじゃないよ」

 ハハ、そっか。
 じゃあ、いこうか。

「うん」

 ぼくは彼女と手を握り、光を目指し、昇っていく。
 一歩一歩、踏みしめるように。

 まるでぼくの人生のようだと思った。
 いつもいつも、手探りだ。
 一気になんていけない。

 そのもどかしさにいつも苦しい想いをしていた。
 なんで自分は、みんなのように生きていけないのだろうと。

 今ならその不自由さにすら、意味があったのだと思う。
 いやもっといえば、理解できる。

 持たない、出来ないからこそ、手にすることができるものがあるということを。

「遼」

 彼女がぼくの、名を呼ぶ。
 それにぼくはにっこりと笑い、振り返る。

 ぼくが最期の最後に手にすることが出来た、掛け替えのない、大切なもの。

 なに?

「手、握ってる?」

 うん、握ってるよ。

 ぎゅっ、と握り返す。
 ひとり、いればいい。
 誰か一緒に、歩いてくれる人がいれば。

 ただそれだけで、世界は姿を変える。
 それを、教えてくれた。

 ぼくの人生に、意味はあった。

 悲しくなるくらい、切なく、尊い意味が。

 最後に一度だけ、振り返った。
 棚多さんが手を振り、ぼくたちを見送ってくれていた。
 それにぼくは笑顔と、会釈を返した。

 天と地は、意味合いを、変えた。
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