儚さ

2020年3月10日

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 恐怖に、彼女の答えが来ることに、心臓が高鳴る。
 手の平の汗を握り潰す。

 彼女はしばらくは考えるような様子を見せていたが、突然閃いたように携帯を取り出し、熱心に何かを打ち込み始めた。
 と、思った次の瞬間、ポケットの携帯がメールの着信を告げた。
 急いで取り出す。

 送信元は、やはり目の前の彼女だった。
 覚悟を決めて、本文を読む。

『それも、私のことを知りたいから?』

 心臓が跳ねる。
 最初の出会いの、骨のような白い棒状の物がフラッシュバックする。

 心臓が跳ねる。
 さっき不意に抱きしめてしまった時の、彼女の錯乱状態がフラッシュバックする。

 心臓が跳ねる。知りたい――でも……

 心臓が跳ねる。
 心臓が跳ねる。
 心臓が跳ねる。
 心臓が跳ねる。

 …………恐い。
 恐さと、あの日以来刻まれてしまった弱気な自分が、まともに意識の表層に表れる。

 ――知ってしまったとして……後戻りは、できるのか?
 暴れ狂う心臓の音は、まるで打ち鳴らされる早鐘のようだった。
 ずっと携帯の画面を睨んでた顔からも、冷や汗が吹き出してくる。

 意識と、答えを聞かなければならない義務感がせめぎあい、僕はそれから逃れるように、彼女の顔を見た。

 感情、というものがまるで宿っていないかのような冷たい瞳が、試すようにこちらを見つめていた。

 それは――骨のことを聞いた時の、去り際のように
 放っておけばまた、踵を返して去ってしまいそうな――

 どくん、
 そんな冷めたような、でも、どこか儚さを秘めたような姿に、心臓が波打つ。


 ――なんで。
 彼女の言葉がフラッシュバックする。
 僕の行動一つ一つに『なんで』を繰り返し送ってきた、彼女。

 ……もし、彼女が一人で苦しんできたなら、

 心を、決めようと思った。

 それが何でなのか……知りたい。

 答えは出た。
 覚悟、なんて大それたものじゃないけど、このまま、はい、さよなら出来ないことも、わかった。

『うん』

 一言だけ打ち込み、送信する。
 彼女を見る。
 彼女は頭を下げて携帯を見て、少しだけ驚いたような顔をこちらに向けて、下ろして、またすぐにメールを打った。
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