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ⅩⅣ/悪魔憑き①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 二年が経ち、ハントスは活気を取り戻していた。
 いやその言い方では語弊があった。

 ハントスは、前以上に栄えていた。
 目抜き通りが出来て、両側は様々な店が軒を連ねていた。

 主に食べ物がメイン。
 たっぷりの肌色のスープにゴロゴロした肉が入った大かめ。

 ベトはひとつ、貰うことにした。
 愛想良く店主に苦笑いを返し、一口すする。

 感動。

「……うっ、めぇ」

 静かに漏れた感想は、本物だった。
 普段自分が食べているものがいかに手抜きで粗野で材料に近いかということを思い知らされてしまった。

 ていうか美味すぎた。
 気づいたら、皿空だったし。

「あー……もっぱいくれるか?」

「あいよっ」

 愛想がいいパンパンな男のそれに、なぜかお節介な育ての親を連想してそれを打ち消すように今度は肉の方から齧った。

「肉汁が……肉汁が、肉が柔らっ……うめー!」

 さらにそのあと腸詰め肉にチーズがのったパン、赤いしょっぱいスープを飲みつつ、目的地に向かった。

 サミオール大聖堂は、目抜き通りの突き当たりにあった。
 太陽が真上にある時間帯に、多くの人間がまるで砂糖にたかる蟻のように集まっていた。
 それにベトはソーセージを噛みながら、苦笑いを浮かべる。

 人ごみは、苦手だった
 いつどこで、敵の奇襲を受けるともしれないからだ。

「ちっ……はいはーい、ちょっとどいてねー」


「って、な、なんだ若造?」

「はいはいごめんなさいねおじいちゃーん」

「った、なによ若いの?」

「はいはい、ごめんねおばあちゃーん」

「ッ、ンだこらてめぇ!」

「――っせぇよ、あ?」

 年寄り二人をやんわりおしのけたあとぶかった血気盛んな男の叫び声に、ベトは僅かに殺気を開放する。

 眼。
 黒目をすべて解放し、瞳孔を開き、その中央に相手の姿を収める。
 重心は完全に中央に持ってきて、いつでも動かせるように手足の力は抜く。

「ひっ……!」

 これだけで、相手は獣に獲物として目をつけられた気分になった。
 男は情けない声を漏らし、脱兎のごとく逃げ出していった。

 それにベトは瞳を閉じて、肩をすくめる。周りのじいちゃんばあちゃんは気づいておらず、呆気にとられたように逃げた男を見つめていた。
 もちろん真似すれば誰でも同じ効用が発揮されるというわけでもない。
 何人も手にかけてきた、ベトならではの効果だ。

「さって、人垣が割れたな。これで幾分進みやすく――」

 視線を、開け放たれた聖堂の扉の向こうにむける。
 思いがけず、想っていた人物がそこには立っていた。

「――よォ、せんせい」

 その言葉に、人物――中背のベトより頭三つは大きい長身の、白と赤を基調とした司祭服は、その瞳を大きくした。

「まさか……ベトか?」

 二年ぶりの再会は、こうして始まった。
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