“松井章圭を骨折”光川勝 後蹴りで13kg差跳ね返す2級の一撃! 伏線、奇跡の一瞬を目に焼き付けよ!

2024年4月9日

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松井章圭

初出場の第12回全日本空手道選手権大会で若干17歳ながら4位入賞を果たし、主に優勝者となる三瓶啓二に行方を阻まれる以外は順調に勝ち進み、出場した第3回世界大会も含めてその三瓶と中村誠に続いての3位の座を保持し続け、そして続く第17回、18回全日本大会を2連覇し、第4回世界大会優勝を果たした、松井章圭。

そんな彼が1度、ある種大きな不覚を取った試合、そして大会。

それこそが第15回全日本大会、3回戦である。

松井章圭はそれまでの試合を得意の足払い、前蹴り、上段回し蹴り、後ろ回し蹴りを中心に、危なげなく相手を完封し、まさに危なげのない試合運びを見せつける。

そして最後は後ろ蹴りで腹を効かせ、下突きで追撃、体をくの字に曲げて顔を下に向けさせておいての痛烈な右上段回し蹴りでマットに沈めるという圧巻の一本勝ち。

さらには続く戦いも足払い、前蹴り、足払いでひっくり返した上に場外に叩き出すという激しさ。

下段後ろ回し蹴りでカーフを蹴り、三日月蹴りが腹に突き刺さり、再びの足払いでのひっくり返し場外!

中村誠が欠場、そして後に三瓶啓二が大西靖人に延長に次ぐ延長の末に敗れるということを考えれば、まず間違いなく優勝候補といっていい盤石の勝ち上がりぶり。

話によると、

今回の大会は2ヵ月後に世界大会を控えているため、過去の大会で相応の実績をあげたりして世界大会の候補を目される選手についてはこれをシード選手とし,大会初日の1回戦、2回戦は不戦勝となった。

ただ例外は松井。

彼は不戦勝ということを好まず、あえて1回限から出場の旨を解長に直訴し、それが認められたのだった。

というそれがここまでは功を奏した流れだったといえるだろう。

しかし3回戦。

ここに思わぬ伏兵が潜んでいた。

大山達からその空前絶後の偉業である3連覇を讃えられ、まず大山倍達が直々に三瓶啓二に送られた後繰り広げられた闘い。

光川勝

23歳、二級、5年、175センチ、67キロ、福井出身。

2級、茶帯であり、さらには80キロであるという松井章圭とは13キロもの体重差がある。

まずこの時点で松井章圭の勝利を疑うものがいなかったろうし、何だったら今までのような圧倒、一本勝ちを期待しているものも多かったかもしれない。

しかし開始前からじっと見せるその視線には、臆したところが感じられないといえるかもしれない。

前に出した、開いた手のひらを相手に向け、さらにその右手を添える。

夫婦手、という言葉をふと思い出した。

何という、何という独特な構えをするのだろうか。

松井が近づいても微動だにせず、ほんのわずかに距離を微調整。

ファーストヒットは松井章圭の左中段回し蹴り、それをしっかり肘で受ける。

続いての足払いで崩され、大会後の出会い頭にとんでもない後ろ回し蹴り!?

タイミングはピタリと合っており松井章圭もそれに足払いを合わせたとはいえ、なかなか驚愕といえるだろう。

今度は松井章圭が飛び後ろ回し蹴りでお返し、そういった意味では、もしかしたら徐々にペースは握り始めていたといえるのか。

下段の応酬、前蹴り、突きで、場外に叩き出されるも、ギリギリのところで飛び後ろ回し蹴りを返す。

さすがの地力の差か?

やはり再び場外ギリギリで後ろ回し切れを繰り出され、さらに前蹴り、再び後ろ回しに下段を合わせられる。

ここまでかと思われた直後。

出会い頭、幾度かの後ろ回し蹴りかと思われ、それに松井も下段も合わせたそこに、まさかの今度は中段の後ろ蹴り!

完全にタイミングが狂わされ、それが脇腹をかすめる。

松井章圭の表情が曇る。

試合上中央でにらみ合う両者。

高まる緊張感。

なんと14秒もの間、お互いに動きがなかった。

異様な空気に、会場からヨイショオという掛け声が上がる。

いや違う、驚くべきことその掛け声の元は、押されている、圧倒的下馬評の不利の中対峙している、光川勝の口元から挙げられていた。

そしてこの均衡を破ったのもまた劣性とされる、光川勝。

強烈な下段回し蹴り、それに松井章圭が脛受けして、その足でそのまま前蹴り。

下がっていき飛び後ろ回し蹴り。

再開後またもや光川勝の掛け声、そして8秒ものにらみ合い。

今度は松井章圭が先に手を出し、左上段回し蹴り。

松井章圭の蹴りをかいくぐり、下突きで潜り込み後ろ回し蹴り。

妙が、そこにはあった。

判定勝ちはおそらく狙っていない、ただ1つ、壱発、効かせる、倒す、そこを。

さらに左の外回しを側頭部に当てたところで押し出され、またもやにらみ合いから松井章圭が下段、そして後ろ回し蹴りで振り払い、そこから左上段回し蹴りを繰り出した、その瞬間。

スイッチ。

後ろ蹴り

それにぴったりと合わせて体を沈み込ませ、松井章圭のタイミングに合わせて共に体を浮かび上がらせ、その左足が伸びきるそれと全く同時に放たれた飛び後ろ蹴りが、松井章圭の脇腹、肋骨に、直撃していた。

まともに喰らい派手に尻餅をつく松井章圭。

果たして何人の人間が気づいていただろうか。

松井が肋骨を骨折していたことを。

その本数は2本とも3本ともいわれ、そのダメージを見せない松井章圭の気力は見事の一語だが、再びの後ろ蹴りが文字通りの超高速で、それがまたもや松井章圭の腹部を捉え、後ろに吹っ飛ぶ!

ほんとすごいなこの人の後ろ蹴り!?

延長に入り、松井章圭が時折やはり無理をしているせいだろうか妙な動きを見せながらも前に出るところに、みたび後ろ蹴りがどてっ腹を捉える!

ざわつく場内、さらに続いて超高速の後ろ回し蹴り!

まるでかまいたちや、一瞬のつむじ風のよう!

しかもスローで見てさらなる衝撃。

この人後ろ見てない。

まさに空間把握能力、感覚で当てている、そりゃ相手もモーション取れないはずだ!

このままでは松井危うしと思われたその時、上段廻し蹴りを捌きざまの踏み込んでる前足の左上段回し蹴りが顔面にパチンと派手な音を立て、光川勝は1回転。

その一撃が効いたのか、その後は光川勝精彩なく、松井は私が勝利を収めたようだった。

その後松井章圭が文字通り気迫で4回戦、2年後に同じく松井章圭を追い詰めることになる堺貞夫を破った本部の怪物七戸康博相手に下段で技ありを奪い世界大会出場権を獲得するも、そこでドクターストップ、キャリアで唯一のベストエイトに甘んじる結果となる。

まさに見事。

狙いに狙い、問いすました一撃で、一失報い、後の王者を追い詰めた光川勝。

その唯一無二の構え、尋常ならざる視線、覚悟、その技の切れ味を私は忘れる事はないだろう。

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