【平本蓮の師】岩崎達也 黒澤浩樹、数見肇のローキックを跳ね返した名勝負! K-1からRIZINに飛翔したその極真空手、剛毅會宗師の秘密に刮目せよ！
極真史上最強クラスの下段廻し蹴りを持つ男
そう考えた場合に私の頭には4人の男たちが浮かぶのだが、しかしその中でも群を抜いてネームバリューが高いといえるのが、この2人といえるだろう。
“格闘マシーン"黒澤浩樹。
“現代の侍"数見肇。
正しく無双の下段廻し蹴りにより、全日本大会初出場初優勝最年少記録、そしてすべての大会で決勝進出という金字塔を打ち立てた、歴史に残る空手家。
その下段廻し蹴りは凄ましく、対戦相手はダメージを隠すことが愚か、その場にとどまることも許されず、押し出され、マットの上に沈んでいくものも多かったという。
しかしそんな2人の下段回し蹴りに対して、全く臆するどころが、むしろ跳ね返し、名勝負を演じた空手家がいる。
岩崎達也。
全日本大会2度の入賞、全日本ウェイト制大会2度の優勝という輝かしい戦績を隠す彼は身長175センチにして体重95キロを誇り、そのパンパンに張り詰めたゴムまりのような体はまるで鎧をまとった重装歩兵のように、凄まじい圧力はかけながら間合いを詰め、その胸へのパンチで吹き飛ばし、下段、上段の蹴りを炸裂させたという。
現在では剛毅會総帥、あのK-1、RIZINで活躍する"華麗なるドブネズミ"平本蓮の師として知られる岩崎達也がまず"格闘マシーン"、黒澤浩樹とその名勝負を繰り広げたのが、1995年に開催された第12回全日本ウェイト制活動選手権大会重量級準決勝。
田村悦宏や小笠原和彦、木村靖明に近藤博和などのチャンピオンクラスや100キロをはるかに超える超重量級の選手たちが集結したこの大会において、延長までもつれた3回戦、左下段からの左上段、右上段で上段廻し蹴りで1本勝ちなどを奪いながら勝ち上がり、対する黒澤浩樹もまた怒涛の勢いで勝ち上がっていた。
開始と同時にやはり黒澤浩樹が右の下段を話すが、そこに岩崎達也は左の前蹴りを合わせる。
ここから得意の左のリードパンチ。
黒澤浩樹のパンチと下段をどっしりと受け止め、やはり左の前蹴り。
逆に右の下段を効かせて左の内股を返し、さらに同じくパンチを合わせる。
あの黒澤浩樹の下段を誘っている。
下谷にパンチを合わせる作戦が功を奏し、体が浮いた瞬間に狙われるために腹に力が入れずらく、これはかなり有効といえるだろう。
さらに左のリードパンチから後ろ蹴り。
左中段回し蹴りの返しをもらっても微動だにせず、逆に左のリードパンチで押し込んでいく。
完全に後の先。
対策を確立し、左のリードパンチを話し、中段に狙いを定めると見せかけても、まさかの左の上段回し蹴り！
それがパチンと派手な音を立て、近づき黒澤浩樹の攻撃を無力化し、誘い、来なければ左のリードパンチからの左の前蹴り。
後ろ蹴りすらもともせずに右の鉤突きを開始、さらに左の中段回し蹴り。
効いたか！？
あの黒澤浩樹が、中段で？
やはり岩崎達也も気づいたが、左の中段回し入り連打。
さらに左上段回し入れから前蹴り。
黒澤浩樹が確実に失速。
後ろ蹴りの追撃、前蹴り、リードパンチ、下突き、膝蹴り、左下段、右上段回し蹴り、そして重たい右の下段押し蹴り2連打！
それで崩し、3連打、中段回し蹴り、上段回し蹴り、左中段前蹴り。
あの黒澤浩樹をガタガタにし、下段回し蹴りを全く寄せ付けず完勝という形で下してしまうという、衝撃の試合内容とした。
そして1997年に開催された、第29回全日本空手道選手権大会。
この大会、岩崎達也は気合が入っていたといえるだろう。
前回大会屈辱の1本負けを喫した野地竜太を破った佐藤修を粉砕したオセアニア最強誇るウォルターシュナーベルとの、その嵐のような上段を捌き切り、詰めて詰めて下段下段、その連打で足を使い物にならなくしての完勝を決めての準々決勝進出。
対する"現代の侍"数見肇は直近の第6回世界大会でブラジルのグラウベフェイトーザ、フランシスコフィリオを破っての準優勝、昨年の第28回全日本大会では決勝でオーストラリアのギャリーオニールを破っての25回に続いての2度目の全日本大会制覇を決めており、間違いのない第6回世界大会優勝者の八巻建志が引退したその時点においても、最強者。
同門の初対決
試合上中央、まるで鏡合わせのような構えでどっしりと構え、まずは数見肇が左のリードパンチから左に回り込む。
そして右の下段を放ってきたそれにほぼかぶせるように左の2連打。
左のリードパンチ。
数見肇のたたきつけるような左の下段が岩崎達也の膝の付近を襲うが、しかし崩れることなく。
同じ左足の膝の周辺の急所を狙って左右の下段回しが叩き込まれる。
岩崎達也のスタンスが高くなる。
待つ。
先に打つと狙い打たれると考えたのだろうか、遠間から内股を連打。
そこから前足である左足を使った、まるでボクシングのジャブの交換のような展開となる。
接近戦で、手を出していないに関わらずひりついた空気。
左左左左。
下手右を出せば左で合わせられてしまう。
しかしその最中数見肇の右の上段から中段に変化した回し蹴りでで初めて岩崎達也が腰をつく。
数見肇、再開後の一瞬の隙をついた左の月からの左下段左下段。
左の交換左の交換。
そんな中徐々に岩崎達也が左足を蹴らせての反撃という、肉を切らせて骨を立つ戦法に移行していく。
左の差し合いでは、引き出しの違いで差が出てしまうと判断してのことだろうか。
自分の肉体の強さを信じたか。
左の前蹴りに突きを合わせられてまたも腰をつく。
立ち上がったその表情には覚悟が見えるようだった。
打たせて打たせて打たせて前に出て。
左右の下、鉤突きから下段というオーソドックスにして強力なコンビネーション。
延長では狙われているのに気づいた数見肇が下段を封印、上段への蹴りで岩崎達也の左の鼻から鮮血が流れる。
岩崎達也はそこから狙いをパンチに絞る、それに気づいた数見肇は接近されてからの下段を返す戦法に。
お互いの狙いが交錯し、戦局は目まぐるしく移り変わる。
徐々にそこから数見肇の右の下段がめり込む場面が見られ始めるが、しかし岩崎達也は効いた素振りは決して見せない。
気合を込めた右の鉤突きが鈍い音を立てる。
0対2で辛くも引き分け。
再延長。
数見肇は今回試し割りを失敗しており、枚数はわずか12枚。
ここをしのげればあるいは──
恐ろしいまでの静かな展開から、今度は数見肇の左の前蹴りに岩崎達也の右の下段。
数見肇の右の下段が強烈に食い込み、岩崎達也の左のリードパンチで体が吹き飛ぶ。
数見肇下段下段、岩崎達也パンチパンチ。
伯仲。
お互いの間に火花が見えるようだった。
ラスト30、数見肇の下突きからの右の下段が食い込む。
効いていない事は無いのだろう、ほんのわずかではあるがその足の運びが重たくなったような気がしなくもない気がするわからないが。
しかし最後の最後は数見肇得意の円の動き。
相手の攻撃を外して、透かして、回り込んで自分の攻撃を当てて離脱。
それにより前に前に出ているのだが、有効打撃数の差が出てしまったためか、副審二本までは止めたのだが、それを初心が取ってしまい、本当に惜しいところまで追い詰めたのだが、ここで岩崎達也は破れてしまうこととなった。
時代を作りし2人の下段回し蹴り使い。
その2人に対して、全くひるむことなく、堂々とその下段回しで受け止め、自らの組み手を展開した、打撃の格闘技であるK-1から総合格闘技のRIZINに挑む平本蓮のその原点があると見て間違いないと考えられるだろう。
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