赤井英和奇跡の1R3分9秒KO!武藤巳治に勝利したミサイルの如き右ストレート!
浪速のロッキー
この名で登場し主人公幕ノ内一歩のライバルとして活躍し、そして現在未だ一線級として、いやそれどころか主人公格として活躍し、劇中最強の男であるリカルドマルチネスに挑もうとしている男。
千堂武士。
私は過去にその千堂武士が得意とし必殺技としているスマッシュ、その使い手としてモデルとなっていたドノバン・レーザー・ラドックを紹介させていただいた。
そして今回は、その千堂武士そのもののモデル、実際に大阪で浪速のロッキーと呼ばれていたボクサー、赤井英和を取り上げさせていただきたいと思います。
赤井英和のあり方はまさに千堂武士そのものと言われ、学生時代は喧嘩に負けた事はなく、その名は大阪に轟き渡り、弱い者には手を出さず、常に1番つよい奴との戦いを求めていたとされる。
そんな彼は高校入学と同時にボクシング部での活躍を見せ、3年生でインターハイ、アジアジュニアアマチュアボクシング選手権を優勝し、その後近畿大学在学時にオリンピック有力候補であったが日本のボイコットが決まり、学生プロボクサーに転向。
プロ4戦目で全日本新人を獲得し、その後も1ラウンドKOを連発、12連続ノックアウト勝利と言う金字塔も打ち立て、その激しい試合スタイルから浪速のロッキーと言う愛称がつけられたと言う。
その彼の試合で今回取り上げさせていただきたいのは、1983年2月21日に行われた、武藤巳治戦だ。
武藤巳治
武藤巳治は1981年の東日本新人王を獲得しており、その時点で日本ランキング4位と言う間違いのない強豪、さらには映画ロッキーを見てボクシングの門を叩いたと言うところもあるし運命的なものがあったと言えるかもしれない。
その時点で赤井英和は13連勝12KO、圧倒的な実力はみなが認めるところで、世界タイトル挑戦も秒読みとされ、その2ヶ月半後に実際その舞台が用意されている、そういったある意味もっともと言えるほど充実していた時期だった。
第1ラウンド、試合前から体を左右にゆすり、両腕をぐるぐると回し、まさしくはじめの一歩の千堂武士のような仕草を見せる赤井英和。
ゴングと同時にお互いグローブを合わせるような仕草を見せるが、しかし武藤巳治はそのまま距離をとり、サークリングを始める。
赤井英和はのしのしと間合いを詰めて、それに武藤巳治がジャブを打とう打とうとするが、フェイントに止める。
豪快な右フックで距離を詰め、それが武藤巳治の頭部をかすめるが、うまくいなされて転ばされてしまう。
右手を前に出し、おそらくは来い、と挑発しているのだろうか。
赤井英和のジャブはこう言ってはなんだがその身に見合わないほどに鋭く、直線的で、まるで棍棒のようだ。
ジャブの差し合い、武藤巳治のジャブがその顔面を捉えても、赤井英和はびくともしない、まさしく文字通りの実写版千堂武士。
そのまま詰めていって、赤井英和の右がとらえたりするが、クリーンヒットではなく、クリンチになり、膠着状態。
赤井英和が追いかけ、武藤巳治がかわす。
なかなか打ち合いにならず、噛み合っていない様子が見受けられる。
さらには上から拳を打ち下ろす、というか鉄槌を打ち落とすような、これいいのか?と言うな動作も見せるが、それも捉えられず。
すると赤井英和が両の手のひらを相手に向けるようにして、ほぼノーガード。
はじめの一歩ファンならたまらない、これも千堂武士が相手を追い詰める時に見せる仕草だ。
ジャブを躱して放つアッパーが、まるで千堂武士のスマッシュ。
天空まで届きそうな勢いに、背筋がぞくりとする。
しかしここまでクリーンヒットと言うクリーンヒットはなく、当然ダメージと言うダメージもなく、このまま1ラウンドが終わるのかと思いきや、終盤で武藤巳治が左右の細かい三連打。
そこを追いかけ大きい左、ロープ際に突き飛ばすような右、さらに追いかけての右ジャブ、飛び込んできた武藤巳治を突き放すような細かい右アッパー、左フック、そして距離が空いたところにへ前傾し、まるで相手に倒れ込むように、ロケットのように飛び出すように放たれた右ストレート!
残り一秒の衝撃!
まさかの距離、まさかのタイミングで、まさかの一撃。
しかも時間が、残り1秒、2分59秒!
すでにゴングは鳴らされていたが、しかしギリギリ滑り込んだタイミングだったために、カウントは続行。
武道巳治は座り込んだような状態から、体をゆっくりと動かすと、ぐにゃりとその体勢を崩し、マットに倒れこみ、そのままじわじわと立ち上がったが、しかしレフェリーは両手を交差して、試合終了。
その時の解説の言葉が非常に印象的だった。
ハプニングが起こりました!
赤井英和、右1発のノックアウト勝ち!
正式ノックアウトタイムを待ちたいと思いますが、3分を超えていたのは確実ですね!
その時のテロップもまた、大変印象的なものだった。
1ラウンド3分09秒KO
通常ならばまずありえないような光景と言えるだろう。
3分ギリギリに打ち込んだために、勝利時間が3分を超えると言う、まさしくハプニングとも言える事態。
さらにはそれまでほとんどクリーンヒットどころか当たった回数すらなく、ダメージがゼロに近い状態から、たった1発で全てをひっくり返し、立ち上がらせなくなるそのゲームメイキングと、破壊力。
あまりにも劇的な展開。
試合後のインタビューで、まだ体は今日の試合、ボクシングしたがってませんかと聞かれ、
「ええ、もう1試合でもしたい感じ、冗談」
とそこで初めて表情を綻ばせる場面がまた印象的だった。
人柄の良さが表れているというか。
みんなに愛される秘訣が、そこにあるというか-
その後の赤井英和はその後の世界戦について聞かれ、
「今日はまだ全国放送やから、あんまりでっかい能書きも言わんときます」
明日の朝おはよう朝日で好きなこと言いますから、皆を笑わせていた
まさしく天真爛漫にして、天性の勘を働かせ、野獣の如き一撃を繰り出す、千堂武士のモデル、赤井英和。
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