チョッピングライトのレノックスルイス!スマッシュのラドックを圧殺K.O!
チョッピング・ライト
ボクシング関係者ボクシングファン、そういった方たちにとっては至極当たり前の、ただの数あるパンチの1つと見る場合もあるかもしれない。
だが私にとってはこのパンチはかなり思い入れがあるものだったりする。
極真空手はそれなりにやってきて、拳、そこを用いる打撃と言うものは、正拳突き、下突き、鉤突き、主にそれらに分類されて、しっかりと脇をしめて、腰の回転で、一直線に放つものだった。
それに対してチョッピングライトは、その名前からして非常に興味深かったでした。
チョップ、どうしてもそれで連想されるのは、空手チョップなど、芸人のツッコミに類似した動きだ。
それをパンチにくっつけると言うのは、最初はどうしても馴染めずに、なんだかかっこ悪い印象を覚えていた。
しかしそれが一変して、すっかり当たり前に定着して、むしろ必殺技のようにかっこいいもののように映る、私にとってのボクシングの教科書のような漫画でのキャラクターがいた。
間柴了。
言うまでもなく、はじめの一歩の中で、その長いリーチを生かしたフリッカージャブを中心とした中間距離の組み立て、死神としての立ち位置を確立して、そしてロープに貼り付けるしての放たれるその技こそが、チョッピングサイトだった。
振りかぶり、その身長差、天から振り下ろす鉄槌。
その一撃で、相手は本当にもうマットに叩きつけられ、ピクリとも動かなくなる。
通常の右ストレートとは違い、そのフォーム、劇的さ、それにすっかり魅了されてしまった。
そしてそのチョッピングライト見事に使いこなす人間は、モデルは今回紹介する、レノックス・クラウディス・ルイスだ。
ルイスは1988年から代表としてソウルオリンピックスーパーヘビー級で金メダルを獲得、翌年プロデビューを果たし、1990年にはEBU欧州ヘビー級王座を獲得。
そのまま順調に英国、英連邦ヘビー級王座を獲得して最終的に、WBA、WBC、IBF、IBC、IBOでの世界ヘビー級王座に君臨した、偉大なるボクサーである。
趣味はチェスだといい、引退がコメンテーターを務めており、その戦略には1日の長があると言えるだろう。
そんな彼が、1992年10月31日、WBC世界ヘビー級挑戦決定戦を兼ねた、英連邦王座初防衛戦で戦ったのか、あのドノバン"レーザー"ラドックなのだ。
ドノバン・"レーザー"・ラドック
ラドックは私のチャンネルでもいちど取り上げさせていただいており、あのはじめの一歩の千堂武士の必殺技、スマッシュのモデルとなっており、そのあまりにも強烈すぎて、鮮烈すぎる一撃は、文字通り衝撃的であり、皆様にもその凄まじさを伝わったものと思われる。
その頃はホリフィールドと、リディック・ボウの2人を加えた4人で4強時代と言われており、当時の映像によると、その4人でヘビー級新4強トーナメントと言うものが開催されており、さらにはスマッシュの使い手である彼との戦いと言うことで、大変な注目が集められていただろう。
会場はレノックスルイスの地元、ロンドンはアールズコート、その当時、WBCのランキングではドノヴァン・レーザー・ラドックが1位、レノックスルイスが2位、ランキングも含めた、完全なる頂上決戦。
先にレノックス・ルイスが入場、当時の映像では"英国の誇り"と紹介されており、27歳、21戦全勝18 KO、英国紳士然とした堂々たるリングイン。
対するドノバン・レーザー・ラドック、カミソリの異名、28歳、31戦27勝20KOの3敗1引き分け、さすがに敵地と言うことで、かなりのブーイングも聞かれた入場だった。
1万人の大観衆が見守る中、身長差はレノックス・ルイスが195センチに対して、ラドックが190センチ、リーチはほぼ同じ、体重は逆に2キロほどラドックの方が重いと言うところだろうか。
ドノバン・レーザー・ラドックのほうは体を激しく動かし、紹介されるにつれ両手を挙げて、どんどん気持ちを高めて、テンション上げてに行こうと言う気概が見て取れた。
対するレノックス・ルイスはあくまで静かに、顔を上げずに、無表情で、ただわずかに顔を傾けるだけの、恐ろしいまでの両極端な面持ちとなった。
ラドックは筋骨隆々としており、盛り上がった筋肉が凄まじいが、ルイスはシャープな体つきで、一見すると差があるように感じられるが、無駄なものがない引き締まった真四角の体格は、スナイパーのような凄みを秘めている。
1ラウンド、開始直後からラドックが体を激しく振りながらのジャブで攻勢に出る。
それに対してレノックス・ルイスはスタンスを大きく取り、カウンター及び、強烈なパンチを狙っていると言う迎え撃つスタイル。
レノックス・ルイスはかなり体を正面に構えて、右を狙っており、ラドックは体を斜に構えて、左のスマッシュを狙っている。
いつ、どちらのパンチが、交錯するか。
序盤はお互いジャブを差し、タイミングと間合いを図り、その時を待っているようだった。
2分近くになったときに、ラドックの左フックが軽くレノックスルイスの顎を捉え、クリンチで開始し、ここまでの戦況はややラドック優勢と言うところだろうか。
戦前の予想でも、実力ナンバーワンと言われており、そのスマッシュの破壊力はマイクタイソンをグラつかせたとされており、やはり下馬評ではそうだったのだろう。
そこまでは左の探り合いだったが、レノックス・ルイスがラドックの圧力に下がる場面が見られ、それで戦法に切り替えたのか、ラドックの左が止まり、圧力をかける前に出るような戦い方に変わる。
そして残りわずか20秒のところで、飛び込んでる大振りの左からの右ストレートで、倒そうと襲いかかる。
そこを捌き、レノックスルイスはクリンチでいちど仕切り直し、リスタートしてしばらくしたことだった。
ラドックがいつものように、動物のように体を固め、ボディーに向かってだろう左ジャブを放ってきたその瞬間。
何気ない、しかし最短距離を取る、素早い左ジャブ。
それによって振り払われた形になったラドックのその頭に向かって、まるでハンマーのようにその右は、降り下された。
雷神のトールハンマー
一瞬の出来事、ラドックは足を後ろに持っていかれながらも体勢を立て直そうとするが、膝が全く言うことを聞かず、そのまま前のめりに崩れるようにダウン。
ものすごい効いてる。
信じられない位効いてる、というか信じられないのはこっちの方だった、どっちかっていうと押していたのはドックだったはずなのに、なんだこれ、なんだこれ、なんだこの一瞬の逆転劇!?
なんだこのチョッピングライトのどうかしている破壊力は!?
ラドックは何とか立ち上がり、1ラウンド終了。
完全にゴングに救われた形。
スローモーションを見てさらに衝撃、まるでバズーカ砲、上からドカン、それに吹っ飛ばされる形、正直ラドックには憧れがあって好きだったので、多少そういう意味でもショックを隠せない。
第2ラウンド。
なりふり構わずは自分のペースに戻そうと、飛び込み、スマッシュを、自分の必殺技を出そうと言う気概は見てとれるのだが――
今度は左ジャブからの、ストレート気味のチョッピングライト!
体を固めていて、モーションがそういう形なのでそう称させてもらったが、それによりラドックがまたも後方に吹き飛ぶ。
強すぎだろ、レノックスルイス…!?
そこに畳み掛けてダウン、なんとか立ち上がる、しかしダメージが深刻なことは傍目にも明らか。
ラドックは畳み掛けられ、アッパーをくらいながらも、体勢が作れないながらもスマッシュ、そしてアッパーを返すが――
レノックスのワンツー、そしてクリンチに行ったはずの状態からの、ガードの上から巻き込むようなチョッピングライト、そしてそれごとなぎ倒すようなチョッピングライトにより、前のめりにぶっ倒された。
絶句。
2ラウンド46秒、TKO勝利。
すんげえ…。
究極の左、スマッシュを持つ相手に対して、冷静に対処していて一瞬の隙をついての、右のチョッピングライト。
中間距離でも、そしてクリンチほど接近されても、どのような状況でも使えると言う利点は大きいと言わざるを得ないだろう。
そしてその破壊力たるや、まるで雷神の、トールハンマー。
恐るべき拳闘紳士、英国の誇り、レノックスルイス。
間柴了のチョッピングサイト、それをも遥かに超えた一撃に、胸が揺さぶられる心地だった。
はじめの一歩 Rising Blu-ray BOX partI
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