“KOアーティスト”成嶋竜 軽量級で必殺左上段で富山県大会全試合一本、第11回ウェイト制で四つものKOを奪ったその逸話!

2024年4月9日

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圧倒的なまでのKO率

極真空手家の一撃の竜である成嶋竜

父である成嶋弘毅。

彼が叶えられなかった大山倍達への弟子入り、極真会館への入門を果たし、そしてその大山倍達が提唱せし一撃必殺の体現を成し遂げた、恐るべきとも言える軽量級選手である。

私はかつて、これほどまで高いKO率を誇る選手というの選手を見たことがないかもしれない。

ただ1人重量級の超大型選手ミッシェルエーデルに関して言えば、その勝利した試合全てが1本勝ちと言う恐るべき実績があるが、それもあくまで私が知る限りの彼が出場した第18回全日本大会及び第3回、第4回世界大会のことであり、身長197センチ体重104キロと言う体格も関係している事は間違いないだろう。

それに比べて成嶋竜の身長は168センチ、体重は68キロ、紛れもない軽量級。

一般的に体重が大きければ多いほど破壊力と言うのは増し、必然的に重量級よりは中量級が、中量級よりは軽量級が1本勝ち、技ありの数が減っていく傾向にあり、さらには無差別の大会においてはそれはより顕著になる。

しかし、成嶋竜は、そのような空手、格闘技の常識を打ち破るようなあまりにも鮮烈な試合を見せていた。

第8回全日本ウェイト制大会軽量級に出場した成嶋竜は、2回戦、猛烈に左右の正拳突きと下突きで圧力をかけてくる相手に対して、下がることも回り込むこともせずに、少しずつポイントをずらして左の上段膝蹴り。

それが掠め、一瞬相手がひるんだところに思いっきり左足を下げて、ためと間合いを作っての左上段回し蹴りをこめかみに!

もろに決まり、相手はピンボールのように跳ね飛んでマットに叩きつけられる。

わずか10秒の、あまりにも鮮烈なデビューと言えるだろう。

その後1993年9月12日に行われた、第11回富山県大会出場。

第11回富山県大会

その2回戦、やはりパンチで強烈に圧力をかけられながらも、耐え忍び、私先に膝蹴り、後回し蹴りを返す。

そして左右に盛り込みながら下突き、下段廻し蹴りに繋げ、効かせ、左中段廻し蹴りからの鉤突き、最後は右下段で意識を反対側に持っておいての左鉤突きで技あり、全く同じコンビネーションで1本勝ちを奪う。

3回戦、低く構える相手に左手を当ててからスイッチしての左後ろ回し蹴りで早々の1本勝ち。

準々決勝も超接近戦となるが、左の鉤突で腹を効かせ、さらに左中段廻し蹴りも交えて連打、膝蹴り、鉤突で技あり。

蹴り返してくる相手にやはり左の拳を当ててスイッチして、今度は左後ろ蹴りでどてっ腹に穴を開けるような技あり一本勝ち。

まじテクニカル、ほんとテクニカル、そして半端じゃない地力。

準決勝も早々にスイッチしての後ろ回し蹴りが炸裂するが、猛烈な圧力をかけられ、左上段廻し蹴りも狙うがガードされ、なかなか厳しい展開。

しかし右下段、左下突きという1本勝ちを奪ったコンビネーションからのステップバックしてスイッチしての左三日月蹴りが肝臓をえぐる!

一瞬にして、いっぱつで、文字通り一撃での必殺を見せつける。

化粧は体格的に大きく上回る相手。

そうそうの三日月蹴りも全く意に介する様子なく、どんどん詰めてローキック、パンチを放ってくる。

さすがに今までのようにはいかないかと思っていたところ、やはりステップしてスイッチしての左三日月蹴りが、相手やや効いたような素振りを見せる。

連打、下段で崩されるが持ち直し、さらに左中段廻し蹴りと右下突きが強烈だが、強い胸のパンチで突き放した。

そう思っていた。

そう思っていた次の瞬間、いつの間にかスイッチして放たれた一瞬の左上段廻し蹴りが、その巨漢の顎を完璧な形で、撃ち抜いていた。

おおおおおおあおあああおおおおお

思わず咆哮していた、それぐらい、それぐらいそれぐらいそれぐらい、この1本勝ちは、凄まじいものがあった。

実際会場も大変な歓声が沸き起こっていた。

信じられん。

本当に本当に信じられん、何と言う勝ち方をするんだろうこの人は、そして鉤突き、後ろ回し蹴り、後ろ蹴り、三日月蹴り、左上段廻し蹴りと、ありとあらゆる技、というか軽量級の常識である上段が中心ではなく、腹、さらにはそこに至るまで突きでしっかりと効かせると言うガチンコスタイル。

恐るべき地力も、証明している結果となった。

そんな成嶋竜は大山倍達追悼大会として開催された、第11回オープントーナメント全日本ウェイト制空手道選手権大会軽量級の部に出場。

第11回全日本ウェイト制大会

1回戦、早々に左中段廻し蹴り、鉤突を効かせ、さらに上段回し蹴り、胸への突きも加え、最後は左中段廻し蹴りで貫禄の1本勝ち。

3回戦はお互いの手を持ち合っての中段膝蹴りからの伸び上がるやな上段膝蹴り。

4回戦は自ら懐に飛び込んでいき、下突き下突き右下段からの後ろ回し蹴りを見せ、上段膝蹴り、次の上段膝蹴りでまたもう1本1本1本の嵐。

準々決勝では延長戦に突入するが、正拳突きから右、左上段廻し蹴りから鉤突、下突き、膝蹴りを文字通りのつるべ打ち、そこからの後ろ回し蹴りを顔面にブチ当て、左上段回し蹴りを貫き、背中まで回りこむような左鉤突き、右下段も完全に効かせ、さらに左中段廻し蹴りも追加、そこから高野選手の猛烈なパンチでの反撃に遭うが、最後は下段にダメージを集中させて勝利。

準決勝では第12回及び第13回全日本ウェイト制軽量級準優勝、第15回大会軽中量級3位、体重別の世界大会である第1回カラテ手ワールドカップの日本代表にも選抜される、茂木浩之と対戦。

茂木浩之はその直前の今西俊彦との再延長にも及ぶ激闘の影響もあったのだろうが、開始早々は中間距離での中段、上段の蹴り合い、そこから下段廻し蹴りの応酬、またも探り合いとなり、ここからゆっくりと詰めて体重が後ろ脚に残っているところを狙っての冷静な右下段廻し蹴り。

ダメージが深いことを確認し、下突きを交えての下段廻し蹴り、茂木浩之も何とか粘ろうと脛受けしようとするのだが、巧みにそれを避けられ、最後はそのそれの上から叩き込んでの技ありを奪い、追撃の下段で容赦のない1本勝ち。

ここまで4つもの1本勝ち。

あまりに圧倒的な感さえあるが、しかしその決勝の舞台で立ち塞がったのは、あまりにも巨大で、あまりにも恐るべき男だった。

人間風車、谷川光。

全日本ウェイト制4度の優勝、無差別級の全日本大会4度の入賞、および三度のベスト4進出、体重別の世界大会であるカラテワールドカップ軽量級を2度制覇、第6回世界大会体重わずか69キロにもかかわらず、3位入賞。

そんな軽量級史上最強クラスとも言える、あまりにも破格な男を相手に、戦いはまず誘導間合いから、非常に静かな展開から始まり、そこから成嶋竜の膝蹴り後ろ回し蹴り、そして鈎突きと言う得意技から口火を切ることになる。

パンチの交換、お互い拳の力にも自信があり、さらに華麗な蹴りの応酬、お互い壱発を持っているだけあって、押しながらも常に狙っているような緊張感が壇上を支配している。

下突きを打てば下突き、内股を打てば内股、しかし体の力の坂、徐々に谷川光が押し込みながらの膝蹴りを放つようになっていく。

それに成嶋竜が回り込もうとするが、その動きは谷川光の代名詞、風車戦法が上手。

やがて戦いは超接近戦となり、お互いでお互いの拳を押さえつけ、そしてパンチからの下段を効かされ、左右突きからの上段膝蹴り、右下段から左上段廻し蹴りの対角線上の攻撃を狙うが外され、その後の一瞬の隙、それを内股でさらに強調され、誘導されての、突き抜けるような上段膝蹴り。

それが顎に炸裂し、成嶋竜はなすすべなくマットに崩れ落ちた。

一本負け。

自らが信条とする、自らよりどころとするその一撃での、しかもそれまで体格差を乗り越えてきた成嶋竜が、同体格の男に、決勝の舞台で喫してしまったその、不覚。

それを成嶋竜本人は凄いショックだったと語っているが、同時にあれがきっかけで頑張れたんじゃないかとも振り返っている。

あそこが始まりだったな、余計なものを排除して、空手だけに夢中になれて、頑張って来れた。

そしてその言葉通り、成島龍の本当の一撃必殺を極める戦いが、ここから始まることになる。

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