第49話「とっこう」
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本編
隼人は今日の写真部であった一幕を話す。
大体最初僕らの話題はこの辺から始まる。
それに僕は声を上げた。
「へえ、写真部でも揉めたりすんのか」
文系で、しかも隼人が部長をしているということでそういうイメージがなかった僕は、意外に思った。
「ま、その辺は文系サークル特有の水面下というか、粘着質な確執はいっぱいあるけどね」
「ふーん。やっぱ部長って大変なんだな」
粘着質な確執、という響きに面倒なものを感じる。
よくよく考えてみれば体育会系はなんでもさっぱりと割り切るのに対して、文系はそういうものかもしれない。
「まぁね。でも、それでも好きだからやれるってところはあるんだけどね」
そう言って柔らかく笑う。
時折思う。
こいつは柔らかくなよなよしてるようなイメージがあるけど、芯の部分は僕たちの誰より強いものがあるんじゃないかって。
「ま、それはともかくさ。なんか最近あっちゃん」
あっちゃんとは切間のことだ。
切間敦(あつし)だから、あっちゃんと隼人は呼んでいる。
「と色々やってるみたいじゃない?」
「あれ? 知ってんの?」
隼人に話したっけ、この話?
「なんかあっちゃんと余暇経営の授業中に、すっごい退屈だったから、あ。そういえばその時あっちゃん、『この時間こそ、もっと有意義にするべくビジネスをすべきだよな』って言ってて。うまいこと言うなぁって思って」
「はやと、はやと。話、ズレてる」
「あ、ごめんごめん」
また頬を緩めて、
「で。その時いつものように『隼人は最近何か面白いネタねぇの?』って振ってきて。ないよーって答えたら、にやぁ、って感じで笑って、しんやが女の子に特攻してるって」
「と、とっこう……」
言われて、切間が僕のことをどう思ってるのか理解した。
……鼻、明かしてやろうじゃねえの。
「で。今日もその子に"とっこう"したの?」
『とっこう』にアクセントを置いて楽しそうに訊いてくる隼人にも、先ほど切間にしたのと同じように今日の出来事を大まかに報告をした。
それを聞いて隼人は楽しそうに笑って、それで僕も肩の力が抜けて隼人からも最近の写真撮影の調子とかを聞いてる内に、今度は生きがいについての話に移行した。
それは楽しいことをするだけが人生の意義か、という論争に発展し、最後はなぜか哲学の話にまで至ったところで駅に着いた。
相変わらず僕はこの自由人と話してると話の展開が縦横無尽になるなと苦笑し、そこで別れた。
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