“剛拳”三瓶啓二 体重差40kgの中村誠、松井章圭に増田章を寄せ付けずウィリーへ挑戦状を叩き付け遂に実現した史上初全日本二連覇の偉業!

2024年4月9日

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空足

かつて大山倍達は自らが得意とすると言う左下突きをして、こう語っていた。

この突きで倒れなかったものはいなかった。

しかしその後様々な検証が行われた結果、大山倍達が最も得意としていたのは右の正拳逆突きであり、その破壊力があまりに強く、人間相手にフルパワーで当てることが憚られるためにそう語っていたことが明らかになったと言う。

さらに大山倍達は著書にてこう語っていた。

極真空手を、空足、にしてはならない。

手による顔面攻撃は禁止なので、必然顔面カバーをがおろそかになり、ならばとひっきょう足による攻撃が主体になる。

それに対して大山倍達は、極真空手はキックボクシングともカポエラとも違う。

どこまでも空手であって空足でない。

もう一度原点であるべきところの拳を主体にした攻撃に立ち戻らなければならない。

拳の破壊力を増せば、顔面は別として、胸でも腹でも一発叩き込んで敵をマットに沈めることは十分可能である。

それができないのは、拳に威力が足りないからである。

大山倍達が、その彼が作り出した極真空手が目指す究極のところ、正拳による胸部、腹部への打撃による、必倒。

しかしそれはたやすいものではなく、自然皆様々な工夫を暮らし、独自の強みを生かし、その中で相手より上まろとする。

しかしそんな中、拳による打倒を成し遂げた、文字通り剛拳とも呼ぶべき空手家がいる。

佐藤勝昭に、二宮城光、中山猛夫に中村誠、ウィリーウィリアムスらと反則などを踏まえたあまりにも激しい死闘を広げ、頂点まであと1歩のところで届かず、しかしその不撓不屈の心を微塵も揺るがすことなく三瓶啓二は、第2回世界大会の翌年に開催された、第12回全日本空手道選手権大会に挑んだ。

4回戦で後に城西支部をチャンピオン製造工場へと導く山田雅稔と戦いながら、準々決勝に進出。

そこで相対したのは、必殺の右上段廻し蹴りを武器に、第3回世界大会結上を果たしベスト16進出を果たしている、本部の若獅子寮で内弟子として過ごしたスウェーデンのミカエル・ソーデルクヴィスト。

じっくりと詰めていき冷静に後ろ回し蹴り、下段廻し蹴りをさばく。

そこからいっぱつで左内股を効かせ、前蹴りをさばいての下段膝蹴り。

さらに左内股、内股でダメージを積み重ね、さばいての膝蹴り、相手に全く何もさせずに勝利。

そして準決勝では後に全日本2連覇、第4回世界大会優勝を果たす松井章圭と対決。

開始早々左上段回し蹴りをさばいての下段廻し蹴りで、いきなり深いダメージ、それまでの戦いもあるだろうが、早々にアドバンテージを奪い、そこから右の下突き、右の下段廻し蹴り連打。

上段蹴りをさばいての下段廻し蹴り、膝蹴りが非常に有効で、一気に松井章圭がバランスを崩す。

後の先に徹し、確実にダメージを積み重ね、そこからものすごい左正拳からの右の下突き!

右下段、左内股、さらにそこから突きにつなげて、ひっくり返し、そこから右の下突き下突き下突きで半回転!

最後の正拳突き、下突き、下段廻し蹴りのつるべ打ちで、ボディー・足ともに完全に圧倒しての勝利。

そして決勝で相対するのは4度目の対決となる、中村誠、現世界王者。

体重さは30キロにも40キロにも及ぶといわれ、それまでの戦績は全て中村誠の勝利、しかし三瓶啓二の試合前の表情は、たぎるもので爆発寸前のようだった。

現世界王者中村誠との四度目の激突

開始早々から左の正拳右の下突き左中段廻し蹴りで押して押して押しまくる中村誠。

しかしそこで堪えて堪えて場外に出されず、2度目の角に追い詰められたときに、左の内股下段二連発が炸裂。

一瞬止まる中村誠、さらに追撃の内股。

ガクッとなる。

3連打。

さらに右下段も加えて、足が跳ね上がる。

パンチに合わせての確実なカウンター。

パンチをさばいて内股内股内股。

崩されてもすぐさま立ち上がり、とにかく内股をカウンターで決め続ける。

ローキックはきちんと脛受けして、押されてもさばいて回って叩き出されず、完全に中村誠の突進対策を確立させる。

お互いの拳が顔面に直撃し、双方の道着が赤く染まる凄絶な戦い。

中村誠の正拳も、下突きも、左中段廻し蹴りも堪え、とにかくその出足に左内股。

肉を蹴らせて骨を断つ。

無尽蔵のスタミナで蹴りまくり、延長3回を戦い抜き、惜しくも2対0で1本足りなかったが間違いなく試合内容としても上回り、ついに4度目の対決にして体重試したり両方で、三瓶啓二が中村誠を破った。

その翌年、第13回全日本空手道選手権大会。

当初は今大会に、2年前の第二回世界大会で反則負けとなっていたウィリーウィリアムスに三瓶啓二が挑戦状を叩きつけるような形で大山倍達館長に直訴し、それに応じる形で出場が決まり、ついに決着戦が行われるのではないかとも噂されていたが、それはウィリーの坐骨神経痛が完治せずと言う診断書提出により叶うことなく、しかしそれに迫るとも言えるほどの熱戦が繰り広げられることになる。

その2回戦、後に城西の爆撃機と呼ばれ、全日本大会上位入賞の常連、第22回を制し、世界大会4回連続の出場、ミッシェルエーデルやジェラルドゴールドらの強豪外国人を止め、第5回世界大会では準優勝に輝く増田章と対戦し、再々延長に及ぶ激闘を繰り広げことになるのだ。

足を蹴っても、腹をついても食い下がる増田章の奮闘ぶりに、試合後福島からわざわざ応援に来た自分の生徒に、

増田を見たか。あいつは19歳だ。

みんなだって、やればできるんだ。

増田をみんな、見習えよ、と賞賛したと言う。

しかしその後、三瓶啓二はこうつけ足したとも言う。

心配するなって、明日は頑張る。

倒れるまで俺はやるから、心配するなって。

極真史上初の全日本大会二連覇

その時点で三瓶啓二の両足は内出血を起こしていたと言うが、3回戦で広島の巨象、次の世界大会で偶然にもにもそのウィリーウィリアムスを日本人として唯一破ることになる田原敬三を判定で下し、4回戦では第14回全日本大会準優勝、15回大会6位、16回大会3位に入り、あの南米の星アデミールダコスタとの2度の死闘も記憶に深い水口敏夫と対戦し、というかほんとこのブロックきつすぎなんですけどまじで!

延長3回にもつれる大熱戦となるも、最後は突進しての右の下突き、下段廻し蹴りをまくしたて、相手の下段廻し蹴りは体を軽やかに反転させて空振りさせ、最後の延長戦では得意の左内股が炸裂!

無尽蔵のスタミナを見せつけ、最後は前蹴りをさばいての右下段廻し蹴りで技ありを奪っての勝利。

こうしてみると本当に三瓶啓二は豪快な印象が強いように思われるが、実際のところ後の先、さばいての返し技が妙義に達していると言える。

続いて対戦したのは、大山倍達をして風格ある他流派と評する、ここまで全日本大会に挑戦し続け、ついにベスト8入賞までこぎつけた、田中正文。

元来は1回戦でウィリーウィリアムスと当たる所からここまできたところもやはり奇妙な運命を感じるが、果たしてその戦いは力が入る田中正文に対して開始直後から三瓶啓二が接近しての右の下突きを連打。

左内股を挟んで、やはり右の下突き下突き左の正拳突きを挟んでの下突き下突き下突き下突き。

6連打から回り込んで、途中左の下突きも加え、脅威怒涛の28連打!

それが田中正文の動きを止め、棒立ちさせ、そしてついにマットの上に轟沈させるに至った。

わずか46秒の秒殺劇。

そして準決勝は再び激突、松井章圭。

小刻みに体動かしながら蹴りを交わして下突きを打ち込み、その繰り返しで完全に自分の制空権を確保する。

そのうちの一発、左の下突きが右正拳突きのカウンターとなり、松井章圭がウッとなる。

効いた。

そのまま後ろ回しを蹴って倒れ込む、多分だけど、休んでる。

その後の下突き連打に抗う術はない。

ほとんど一方的な展開、これが松井章圭との、そして準決勝だとは思えない差がある。

迎えた決勝戦、その直前に三瓶啓二はただ一言だけこう話していたと言う。

ポツリと、

倒れるまでやる。

憮然とした表情、そして俯き、握手し、開手と拳で向かい合う。

昨年のようにへ中村誠が出てこない、その腹へものすごい正拳突きがぶち込まれる!

いや、下突きか、ちょっと高ぶってしまいました(笑

前に出てこようとすると左内股左内股、完全に対策が確立している。

中村誠が出てこない。

対策が練られている、左内股を狙われている、さすがにそれを察しているのだろう。

だがそれは、三瓶啓二の間合いだった。

逆に左内股を蹴らせてのカウンターを狙われていると刺した三瓶啓二は、腰を落としての下突きに移行。

体重差は40キロにも及ぶといわれるが、それを全く感じさせない打ち合い、ニヤリと笑い、正拳突きからの下突き二連打。

内股からの下突き下突き、さらに正拳突きからの下突き下突き、下突き下突き下突き、中村誠動きが止まる。

さらには正拳突きからの下突きで、あの巨大がくの字に曲がる。

信じられない、あの中村誠が、腹を効かされている。

なんというなんていう何と言う、何と言うパンチ力か。

中村誠の攻撃に力がない、引き分け、延長戦、やはり三瓶啓二は腰を落とし、中村誠の突きに対して下突きを合わせる。

拳の力。

それを存分に見せつける。

下突き下突き下突き、笑い、体を振り、勢いをたっぷりつける。

人はここまで、極めればここまで体重差があっても、これほどまでの破壊力を拳に宿すとができるのか――

気合い一閃。

押してるのは明らかに、小さい三瓶啓二だった。

中間距離で突きで飛び込む、まるで伝統派空手のような、山崎照朝vs盧山初雄のような戦い。

気迫の戦いは、その拳は中村誠の顔をゆがませ、最初の延長線では2対0で惜しいところまで行くが4度目の延長までもつれ、ついに最後は判定5対0で、中村誠を完膚なきまでに下すことに成功した。

不撓不屈の心に加えて、その鍛えに鍛え抜いて極めた剛拳により、ついに極真史上初の全日本大会2連覇は、成ったのである。

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