勇利アルバチャコフのホワイトファング!はじめの一歩ヴォルグの必殺技、その衝撃映像を目に焼き付けよ!
ヴォルグ・ザンギエフ
超本格ボクシング漫画、はじめの一歩。
その中でも私が特にお気に入りとするキャラクターが存在する。
ソ連崩壊後、病気の母の治療費を稼ぐためにアマチュア世界王者からプロに転向し、主人公幕ノ内一歩のA級ボクサー賞金トーナメント決勝戦で立ちふさがり、徹底的なまでに追い詰めるもアマ出身のスタミナ不足のために惜しくも敗れると言う強キャラぶり。
さらには日本フェザー級暫定王者決定戦でも、圧倒的なまでの野生の強さを見せつけていたスマッシュの千堂武士を追い詰め、ほとんど良いところを出させずホームタウンデジションで敗れ去り、グローブを幕ノ内一歩に託し、さよならの一言で帰るところなどは涙なしには見られなかった。
それから紆余曲折を経てやはり信じられないような逆境の中世界王者になった時も、個人的にはじめの一歩の中のBEST BOUTだと考えられるほどの感動ぶりだった。
そんなヴォルグザンギエフのモデルとされる、勇利・アルバチャコフ。
そのドキュメンタリー映像の中で勇利・アルバチャコフは、
「母はアマチュア時代でさえボクシング何かやめろと言っていました、今はプロになっちゃったからなおさら心配しているみたい――」
しかしその言葉を経てもなお、
「まず世界チャンピオンになって家族を助けたいと」、正しく漫画の中のヴォルグと同じ境遇、同じ気持ちを抱いていることを実感させてくれた。
1989年11月に、ペレストロイカの風に乗って北の大地ロシアから4人のアマチュアボクサーが来日した、その中の1人が勇利・アルバチャコフだった。
13歳から学校のクラブで炭鉱夫からボクシングを習い、15歳で初試合初勝利、ロシア共和国チャンピオン、ソ連及びヨーロッパチャンピオン、世界選手権51キロ級優勝、アマチュア戦績186戦165勝21敗と言う脅威のレコードをひっさげてプロデビュー。
チャコフ・ユーリ
チャコフユーリ、ユーリ海老原、というリングネームを経て最終的にユーリアルバチャコフ、勇利アルバチャコフとして戦い、日本フライ級王者を一度、WBC世界フライ級王者を9度防衛、24戦23勝16KO1敗、三度の年間最高試合に選ばれると言う輝かしい栄養を獲得することになる。
そんな勇利アルバチャコフの名勝負の中からでも、今回取り上げさせていただきたいのは1992年4月20日に行われた、世界フライ級タイトルマッチ前哨戦、スバチャイ・チャレームスリとの戦いである。
その時点で勇利ユーリアルバチャコフは優里海老原のリングネームで活躍しており、11戦全勝10KOと、現在の井上尚弥を彷仏させるような凄まじいレコードを記録しており、わずか1ヵ月前の同年の3月に行われたわずか1ヵ月前の前哨戦で初の判定になるまでは全てノックアウトで勝利しており、さらにそのまたもわずか2ヶ月後には世界タイトルマッチを控えていると言う、非常に濃密なスケジュールの中の、重要中の重要な一戦といえた。
そんな中迎えた対戦相手のスバチャイチャレームスリはタイ国フライ級5位、ムエタイ同様にコーナーにじっくりとお祈りを捧げ、ゆっくりと中央でグローブタッチ。
お互い軽いジャブの応酬だと思っていたところ、30秒過ぎにスバチャイの猛烈な左右のフック。
さすがにムエタイを主戦場とするタイの戦士、気の強さと体の強さは折り紙付きと言うところだろうか。
事実としてこのスバチャイ、戦績が12戦9勝3敗2KOとし、しかしその敗北も全て判定負けと言う、プロに転向して1度もダウン経験がなく、ムエタイも50戦こなしていると言うタフガイだったという。
左左左右左と、体のバランスが崩すほど振り回していくスバチャイ。
攻撃をさばきながら、勇利が一瞬の隙をつき1分過ぎに左ボディ。
さらにクロスカウンターのようなフェイントも見せ、丁寧にさばきながら狙いは右ストレートと言うところだろうか。
左を低く構え、ジャブを突き刺し、獲物を狙う獣のように-
2分前に再びの左ボディ。
効いたか!?
下がりながら的確な左ボディー、右ストレート合わせて1ラウンド終了。
そのコンビネーションは間違いのない、はじめの一歩ヴォルクザンギエフのホワイトファンクそのもの…血が湧くぜ…!
2ラウンド、開始早々から右ストレートでおそいかかる勇利アルバチャコフ。
小さく小さい左ジャブを連発し、大振りのフックを的確にさばいていく。
ロープギアに押し付けられても、さすがはアマチュアの世界チャンピオンと言うテクニックで全く危なげなく脱出。
そしてボディーにアッパーアッパーアッパー、その後に顔面へ、頭がつくほどの接近戦に持ち込まれてもガチャガチャとせずに、華麗なるテクニックを披露。
そして大振りの右左フックを外した瞬間、ギリギリ間に合ったかのようなクロスカウンター気味の右ストレート。
そこから左ボディー、右ストレート、左右アッパーのつるべ打ち!
相手の反撃も的確に外し、距離をとってライトクロス。
右ストレートのダブルかの連打でぐらつかせ、左右フック左右フック右ストレート右ストレート!
それでも前に出てくるスバチャイ。
ホワイトファング炸裂!
3ラウンド、開始と同時に素早い左ジャブで踏み込み、右ストレートに繋げ、左フック、そこからワンツー、右ストレート、左右ボディ、鮮やかなコンビネーションから、左ボディアッパー。
鋭い左アッパーがガードの隙間を通り抜けるシーンなどが見られながら、ワンツーワンツーの右を当て、左ボディ左ボディ。
そしてくっついて一発の右アッパー、それでぐらつき離れたところ、隙を見逃さず右ストレート。
左ボディー左右フック右フック、さらに左右フックでダウン!
文字通り、マットに叩きつけるような連打、一撃だった。
スバチャイ、プロに入って初のダウン。
のしのしやってくるところを左アッパーからの右フックと言う変則ホワイトファング、さらに右ストレート、右フックでぐらつかせ、というかクロスカウンターぐらつかせ、右フック左ボディー、右左アッパー、チョッピングライト!
ホワイトファング!
千鳥足になったところを追いかけ、追撃しようとしたところレフェリーが入り、ついにストップ!
衝撃と言うよりは鮮烈、鮮やか見事。
まさしくチェスで言うチェックメイトまでの完璧なる数字を見せつけた、天才肌、その妙技だといえた。
それまで1度もダウン経験がない男を切って落とした、そしてその最後の技として選ばれたのがはじめの一歩ヴォルグザンギエフの、白い牙。
相手は血まみれにしながら、ほとんど自分は無傷と言う、狼の様相、それを彷仏とさせるファイトだったといえる。
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