“リアルはじめの一歩”内藤大助衝のデンプシーロール21連打!

2024年4月9日

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内藤大助

WBC世界フライ級王者にして日本フライ級王座、OPBF東洋太平洋フライ級王座を獲得した日本の誇るべき偉大なるチャンピオン――

なのだが、どうしても世間的には、浪速乃闘拳、浪速乃弁慶と言われた亀田興毅、亀田大毅との対戦が印象に残っているように感じられ、それに伴ってというか、タレントの一面や、いじめられっ子だったなどの過去、そこにクローズアップされているように思われる。

しかしその彼の変則ファイト、KO率7割と言われる確かな実力、それに裏打ちされた輝かしい実績、何よりその必殺技、そこを今回は紹介していきたいと思う。

YouTube上で見かけた、CM。

内藤大助が、紹介されるアニメ、漫画が原作のはじめの一歩の、主人公幕ノ内一歩に伏して、その名場面である日本タイトルを取った、浪速のロッキー千堂武士の必殺技スマッシュを避けて、リバーブローを決めてからの、デンプシーロールを放つこの1連の動き。

CMで、お仕事とは言え、なんかすごいはまってるというか、やる気になっているというか、見事にこなしているというか、そういう感じを受けていて、見ていてニヤニヤしていた。

だからその試合を見たとき、その結末を見たとき、このシーエムが伏線になっているとは、思いもしなかった。

以前、現実に日本でデンプシーロールの使い手が存在していて、それは長谷川穂積の引退試合で発現したと紹介させていただいたが、それに次いで私にとって彼はふたりめの日本でのデンプシーロールの使い手と言えるだろう。

それは2008年12月23日、WBC世界フライ級3度目の防衛戦、対山口真吾戦でのことだった。

山口真吾

山口慎吾は、その時WBC世界フライ級13位、23勝5敗2分9KO、デビュー戦とその次の試合を2連敗し、一度は次の試合での引退も考えたと言うが、そこから引き分けを挟み10連勝し、世界ランク入りまで果たし、2003年にはOPBF東洋太平洋ライトフライ級王座も獲得し、この試合9ヶ月前にはWBAの世界フライ級タイトルマッチにも挑戦していると言う世界レベルの強豪だった。

開始直後から内藤大助は低い構えから強烈なワンツーを放っていき攻撃的に動き、対する山口真吾は幕ノ内一歩のピーカーブースタイルのようにがっちりとテンプルと顎を守り、慎重なスタイルだった。

戦前の予想が、内藤大助圧倒的有利、テレビ中継も入り、その期待に応えようと序盤からのKOを狙っていたのかもしれない。

しかし山口慎吾の後ろら大きく振り回してくるフックは、まるで木村達也のドラゴンフィッシュブローのようだ。

山口真吾が飛び込んで、内藤大助は足を使っての、右のフックが交錯する、この試合、焦点となるのはこの技になるだろうか。

山口慎吾はガードが固く、内藤大助は目が良いために、お互いなかなかクリーンヒットしない、これは我慢比べ、テクニカルな一戦になりそうだった。

まるで将棋のようなに2手先3手先4手先を読まなければクリーンヒットは得られない、そんな頭脳戦が展開していた4ラウンドの中盤。

内藤大助が懐に飛び込まれて、ボディーの連打を食って、そこで歯を食いしばり、しっかりと重心を落とした、インファイターの構えへと移行する。

そこから大振りのフックを連打するが、やはり当たらず、再び内藤大助は元のスタイルに戻り、またじっとチャンスを待つ展開。

5ラウンド中盤から、内藤大助は入ってきたところを右フック、山口真吾はボディーからのアッパーと、その狙いを定めつつあった。

7ラウンド中盤から内藤大助のパンチが立て続けに山口真吾の顔面を捉え、鼻血が吹き出す場面も見られたが、それでも山口真吾はひるむことなく前へ出続け、渾身の拳を振っていく。

8ラウンド、1分過ぎに内藤大助のお返しと言わんばかりの体を大きく下げての変則のドラゴンフィッシュブローのような一撃が顔面を捉え、そこからのラッシュが立て続けにクリーンヒットしたが、今度は2分、山口慎吾のドラゴンフィッシュブローがクリーンヒットし、そこからのラッシュが内藤大助の顔面をとらえる。

熱い、熱すぎる、漢の戦いがここにある。

9ラウンドの中盤で、山口真吾の一転したアッパーの連続で、内藤大助がまともに後退する場面が見られる。

さらに10ラウンドの中盤でも、初めて近く見せた山口真吾の小さなボディー連打からの右ストレートがまともに内藤大助の顔面を捉え、確かに内藤大助がポイントリードしているのだが、その存在感を示し続けた。

実写版デンプシーロール

そして11ラウンド、劇的な瞬間は突然訪れた。

やはり山口慎吾がどんどん前に出てきて、内藤大助が躱しながらジャブを出して、そんな展開が繰り広げられていた、30秒すぎ。

右のオーバーハンドフックに合わせた、チョッピングレフト。

そこからかち上げるようなアッパーからの左。

それが山口真吾の左に対する、カウンターとなった。

グラついたところを見逃さず、右ストレートからの、追い打ちのチョッピングライト。

倒れた。

カウンターと言うことや、コンビネーションもあったのだろうが、ここまでの積み上げ、それが結実した結果と言えるのかもしれない。

立ち上がり、内藤大助おそいかかり、左右の連打お見舞いして、それに山口慎吾も答えて、そこからついに出た!

体を左右に振りながら、たっぷりとタメて、叩きつける、ウィービングしながらの左右のフック、デンプシーロールの衝撃脅威の21連打!

その連打を山口真吾はよけずに、左右のアッパーで応えると言う驚愕。

しかし内藤大助はそれにもひるまず、さらに3発を加えたところで、ついに山口真吾は失速、怯み、のけぞったところで、レフェリーがストップ。

内藤大助の勝利。

衝撃、絶句。

凄まじい、凄まじいデンプシーロール、そして、それを全て、受けて、耐えて、倒れることなく、打ち合いに応じ続けた。

なんだ、なんだこれは、何なんだこの試合は?

もう、なんか、何だったら漫画超えてないか?

この人美人だな、あ奥さんの真由美さんですね、すんげえ美人びっくり、あ失礼しました。

勝利した内藤大助も泣いている、当然と言えば当然だろう、それだけの、それだけの凄まじい試合、それだけの凄まじい打ち合いだった。

長谷川穂積が、命を投げ出し、テクニックを極め、まるで宮田一朗が混ざったようなデンプシーロールだったのに対して、こちらはまさに本家本元の、幕ノ内一歩のような、強敵の相手の心をへし折るような、泥臭い徹底した連打だった。

こちらもこちらで、1つの究極形、完成形と言えるだろう。

2人のデンプシーロールの使い手、内藤大助。

いや、もしかしたら、実際鴨川会長も言われているように日本の元祖藤猛という方もいると言うし、日本にも、そして世界にも、まだまだそういった漫画の中の伝説的な技を使えてというのはいるかもしれない。

そういった世界のボクシングの深さに思いを馳せると、ワクワクが止まらないサイヤ人のような気持ちになってしまう今日この頃だった。

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