“倒す内回し”塚本徳臣 鞭の如く唸る一撃、その影響は格闘技界に及んだ発端フィリオのブラジリアンキック対策!?
内回し
元来極真空手の基本稽古の中で、親指を上に上げて他の指の下に曲げて現れる足刀を使って膝はピンと伸ばしたまま内側から外側に向けて円を描く、そういう概要の技である。
膝のスナップなど用いないため、基本的には股関節の柔軟性を高めたり、その方向性に対する筋肉を鍛えたり、体を温めたり、そういった概要のものだと思われる。
それは、組み手の中で使い、あまつさえ倒すところまで昇華させた男。
空手革命児、塚本徳臣。
後に全日本大会を5度制覇し、世界大会を最年少及び最年長優勝を果たし、空手革命家と呼ばれるその男が開発した新技術。
それが炸裂したのがその半年後に行われる第6回世界大会に出場が決まっていたというのに参戦したという、第10回全九州空手道選手権大会。
地元の長崎開催ということでプレッシャーが大きく1週間前から点滴を打ちながらの出場という話だったというが、一本一本技あり一本一本一本と、他を寄せ付けないどころじゃない強さを発揮したというその大会の準々決勝、数々の実績を残すという鹿児島の強豪中津浜康照。
注目すべき1戦といわれたこの戦いで、パンチに入ってくる中津浜選手のそれを躱わして回り込み、さて仕切り直しかと思われたその瞬間、空手の試合でまず聞かれないようなものすごい音がする。
瞬間的にまっすぐ上がった膝の軌道で前蹴りかと思ったその膝、ガードの隙間を縫って、内回し蹴りが顔面に炸裂、場内に響き当たるほどに聞いている皆は旋律、最初前蹴りなのかという話も聞かれたその衝撃のお披露目といえただろう。
このときのインタビューで塚本徳臣は、
今までは全然退がらない組手でしたが、今回は捌いたり、踵落としとか変化のある攻撃を心掛けてみようと思ったのですが、あまりそれもできなくて。
世界大会用というと大きくなってしまいますが、フランシスコ・フィリョの戦い方を研究して、前足の上段廻し蹴りにカウンターできるのは何かということで内廻し蹴り気味の前足の上段前蹴りが有効かなと思って練習しているんですけど、まだまだ思うようにはできません。
と語っているようで、その4ヶ月前に手合わせした百人組手がそのきっかけになっているといえるのかもしれない。
さらにその後第6回世界大会ではその時優勝候補筆頭として名を挙げられていた第5回世界大会準優勝の増田章に、ローキックからの頷き、手を下げて、拍手を打って惹きつけてブラインドしての一撃でその顔面を捉えており、それが世界的な初披露といえたのかもしれない。
蹴撃王
その後翌年に開催された第28回全日本空手道選手権大会では4回戦、井上正志選手を相手に中段前蹴り、回し蹴りで相手を寄せ付けず、鮮やかなステップワークで制空権を確保し、そこから右の下段が来ると見せかけての内回し蹴り一閃!
完全に頬を捉え、そのまま井上選手は後ろに吹き飛ぶという脅威の破壊力を見せつけ、聞かせる、倒せる内回しというものを世界に証明した瞬間といえるかもしれない。
その大会一本一本技あり一本一本と圧倒的強さを見せる中、唯一再延長までもつれる激戦となった岡本徹との戦いで、前蹴りから入ってくるところにうち回しのカウンターを決め、その一撃で顎をへし折ってしまったというから壮絶といえる!
さらにはグランドスラムがかかった第15回全日本ウェイト制大会準々決勝、正田泰基との戦いにおいて、ほぼ開始早々、探り合いの前の計り合いの最中、踏み込んでその足をフェイントのようにして放たれた一撃、それで正田選手はものすごいのけぞり、なんとそれにより歯が2、3本吹っ飛んでしまったというのだ!
さらにはその2年後に開催された17回大会でも猛威を奮い、その緒戦、白蓮会館の山崎直也を相手に豪快な内回しかかと落としから、相手が前足を上げて入ってくるところ狙い済ました右内回し蹴りのカウンター!
それで相手の髪が逆立つほどの衝撃を与え完全にマットに沈め、さらに2回戦は共感の西村選手を飛び膝蹴りで脳震盪を起こさせるという衝撃を巻き起こし、続く3回戦、長嶋賢司を相手に延長で押し込んでの突き上げるような内回し蹴りで技あり!
さらに準々決勝では後に第9回世界王者となる塚越孝行を相手にその内回し切りを含めたマッハ蹴りなどの上段回し蹴りを当て、塚越孝行はその日の夜の焼肉は口が痛くて食べられなかったという話だ。
この後の咆哮からも、塚本徳臣にとってもこの試合がどれだけ苦しかったか見て取れるというものだろう。
その後塚本徳臣は徐々に新開発した縦回転の胴廻し回転蹴り、飛び膝蹴りの輝きが眩くなったといえるかもしれないが、しかしその内回しの集大成ともいえるものが見られたのが、最後の戦いとなった第10回全世界空手道選手権大会。
第10回全世界空手道選手権大会
第21回全日本ウェイト制では頭をつけたの膝対下段の超絶ガチンコ対決の末最終延長にて3対2の超薄氷を踏む接戦の勝利であり、第23回ウェイト戦の準決勝では戦いの最中足の指を骨折してしまい延長0対3で敗れているという相手。
またもやとんでもないガチンコ勝負が繰り広げられるかと思いきや、戦いは塚本徳臣がステップを踏みながらの前蹴り、ヴァレリーキック、それをフェイントにしての外回しという軽やかな組み手を見せ、それが頭部にヒットし、それをこらえた野本尚裕が相手の目をまっすぐ見据え、決して視線は下げず、上段はもらわないぞという意気込みを見せた直後。
左の前蹴りが腹に刺さり、そしてそのまっすぐ向いた視線のその真下の──皮肉にもそれらの伏線により作り出された死角から、かち上げられた内回しで、野本尚裕はその顎を鮮やかに、打ち抜かれていた。
何とかその道着の裾をつかんでマットに膝をつく事は拒否したものの、技ありの判定。
まるで蛇や鞭のように唸り、しなる、その激しくも美しい軌道。
そして意識を刈り取る破壊力。
フランシスコフィリオのブラジリアンキック対策として開発された元来は基本稽古である内回しという技を、まさに芸術的な技として昇華させ、空手界、そして格闘技界に広めた功績は、皆に知られ、称えられるべきといえるかもしれない。
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