“雷神の槌”アレキサンダーピチュクノフ ニコラスペタスを瞬殺! グラウベ、ビターゼタリエルを粉砕し初出場で世界3位にまで上り詰めた驚愕のトールハンマー!

2024年4月9日

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第7回世界大会

アレキサンダーピチュクノフ。

極真の長い歴史においても、彼ほどあまりにも鮮烈と言える世界的なデビューを果たした選手というのは珍しいのではないだろうか。

彼が我々の前に姿を見せたのは、1999年11月5日から7日にかけて開催された、第7回全世界空手道選手権大会でのこと。

その大会、目玉となっていたのは前回大会で日本の絶対的なエースである数見肇を徹底的に苦しめたグラウベフェイトーザと、一撃と呼ばれK-1で凄まじいノックアウトの山を見せ、同じく前回大会で3位に入賞している、フランシスコフィリオらを筆頭とするブラジル勢と言われていた。

そしてそこにヨーロッパ王者であったニコラスペタスを加えるという構図、正直それ以外の地域は全くノーマークといった状況だったと言える。

そんな中、身長195センチ体重94キロと言うデータ上ではそのグラウベフェイトーザすら上回る、開会式ではそれこそ他の選手と比べて頭1つ抜ける体格で、一回戦。

カナダのダニエル選手を相手に豪快な、天空から振り下ろされるようなかかと落としを見せ、そこからやはり天から叩きつけられるような正拳突き、さらに接近しては左右の鉤突きで追い込みそこから下から突き上げる膝蹴り。

左上段廻し蹴りで弾き飛ばし、すべての間合で有効な打撃を出せる懐の広さを見せつけた。

2回戦はチリのエルナンを相手に、飛び込んでくるときに冷静な左下段、そして上段廻し蹴りのカウンター。

それを効かせ、ぐらつかせ、全く態勢がブレすぎ繰り出せるところが脅威だと言えるが、そこからさらに左中段廻し蹴りで腹、膝蹴りからの鉤突き下突きのめった打ち!

まさに圧倒と言う試合内容。

3回戦の相手は全日本ウェイト制重量級で2連覇中の強豪、志田清之。

まさに今最も勢いがある男との対戦と言えたが、それを相手に中間距離からの上段前蹴りで牽制し、強烈な胸の正拳突きの連打。

下段の連弾を浴びるが前に出て打ち合い、戦いは延長戦へ。

そこでは文字通り振り回すような胸への正拳突きというか鉤突きが猛威をふるい、さらにそれが鳩尾へ!

胸から脾臓、そして鳩尾の連打を防ぎきらせないような形で、アレクサンダーピチュクノフは拳の力で4回戦へ進出。

4回戦はリングスでも活躍している、194センチ112キロと言う超巨漢、タリエルビターゼと対決。

やはり得意なのか左上段回し蹴りで牽制し、間合いを保ち慎重な立ち上がり。

左の鉤突き、左中段廻し蹴りと肝臓を中心に攻め立て、左上段回し蹴りに合わせられ転倒させられなどしながらも、そこから今度は逆に詰めて下突きを連打連打。

その圧力で112キロが下がり、場外に叩き出される。

反撃の下段もうまくさばき、パンチは腕で受けて、巧みさも見せ、その左の鉤突きでついに胸を効かせ、それを嫌い胸をくっつけるビターての肝臓を狙ってラッシュを仕掛け、体格差をものともしない1本勝ちを奪う。

すごい、まさに骨太な骨格と言われる、ロシアのそのパンチ力の恐ろしさを見せつけた戦い…

続く戦いは過去二度の全日本ウェイト制重量級優勝、三度の無差別準優勝、さらには優勝も果たしている日本の大将格の1人とも言える、田村悦宏。

延長戦、やはり豪快なかかと落としで踏み出し、そこから下突きの連打で磔!

田村悦宏に自分の組手をさせない。

下段廻し蹴りの打ち合いも互角以上に対応し、戦いは再延長戦までもつれ、試合中がっぷり四つの大激闘!

双方全く一歩も引かない戦いは体重判定までもつれ、そこでこの接戦を見事制することとなる。

そして重量級2連覇の強豪、リングスの刺客や、ついには全日本王者まで下して至った準々決勝の舞台で待っていたのは、ひげを蓄え侍の風格を携え円で流れる水のような組手で危なげなく上がってきた前回世界大会ベスト8にしてヨーロッパ王者、ニコラスペタス。

ニコラスペタスを秒殺

前評判下馬票では間違いなくにニコラスペタス、準決勝での前回大会について再びのフランシスコフィリオとの激突を期待していた観客がほとんどだったと思われる中、アレクサンダーピチュクノフはやや固めに構え、それにニコラスペタスは柔らかく相対し、双方慎重に間合いを図り、ペタスがまずは奥足への下段、そして鮮やかなステップワークで左に回り込み、再び踏み込んで左下段廻し蹴り――

パチンと言う音がした気がした。

そして次の瞬間ニコラスペタスは天を仰ぎ、そしてマットに崩れ落ちていた。

その瞬間、すぐに何が起こったのか理解できたものがどれほどいると言うのだろうか。

遅れてやってきた、まるで遠雷のような大歓声。

ペタスが再び奥足への下段廻し蹴りを叩き込もうと踏み込んだその瞬間、ピチュクノフはほとんどためもモーションすら見せず、前足のふくらはぎと膝のバネだけで直線的に放された左上段廻し蹴りで、それこそニコラスペタスの無防備の顎を一瞬のうちに弾き飛ばし、その戦闘能力を、奪っていた。

残心。

ぺタスはまだ動けない。

動こうとするがそれに体がついてこない。

ようやく立ち上がるが、しかしその時にもすでに、真横にふられた旗が天に向けられていた。

一本負け。

唇を噛み締め、天を仰ぐニコラスぺタス。

あまりに、それはあまりに一瞬の、開始わずか16秒での出来事だった。

その左上段廻し蹴りはいわゆるパンチで言うて家のように見えて、その瞬間見事なまでに全身が一体化し、腰が入っている。

叫ぶニコラスペタスだが、この一瞬でここまで的確に顎を狙える、その技術にこれは感服するしかないと言えるだろう。

準々決勝はゼッケン1番、優勝候最右翼、ブラジルのフランシスコフィリオと激突。

好勝負が期待されたが、フィリオは最初から間合いをつぶし、相手の長い手足を一切生かさせない場合での必要な膝上の急所を狙っての下段廻し蹴り、足払い、そして突きで押し込むという戦法を選択。

これは先のニコラスペタス戦での左上段回し蹴りを警戒してたのことでもあるのだろうが、ここまでくっつかれるとピチュクノフの得意の左鉤突きを胸へ放てず、脇腹へのそれは的確に巧みに捌かれ、逆に間合いをあけられ下突きを食い込まされ、その試合巧者ぶり、他力の差に屈することとなる。

そして最後に向かいし、3位決定戦。

迎えるのはブラジルの怪物、人間凶器と恐れられ、その戦慄のブラジリアンキックで1本勝ちの山を築いていた、グラウベフェイトーザ。

グラウベフェイト―ザを粉砕

果たしてこの1戦で先のニコラスペタス戦での勝利がフロックだったのかどうかだ試される試金石的な一戦といえたが、まずは双方得意とする左上段廻し蹴りの交錯から始まり、グラウべのそれがピチュクノフの頬をかすめる。

そして強烈な下段廻し蹴りを浴び、そこからのブラジリアンキックが首付近を吸収し、やはり一気にクラブペースかと思われたが、そこら相手の蹴りをさばいての豪快な右の鉤突き、中間距離からの下突き、胸の正拳突きと繋げ、パンチ力で圧倒。

散々グラウベに蹴らせておいての突きのカウンターを多用し、まさに肉を切らせて骨を断つ。

戦いは死闘の様相を帯びていき、そんな中鉤突き、左中段廻し蹴りの肝臓への連撃が、グラウベフェイトーザの動きを止める。

そこから肝臓に狙いを集中させ、連打連打連打連打膝蹴り。

完全にペースをつかみ、グラウベに反撃すら許さず、左上段回し蹴りも繰り出し、その力が本物中の本物であること、それを世間に、世界に完全に証明しきってみせた。

その一撃まさに北欧神話、雷神トールが持つというミョルニル――自在に大きさを変えられ、投げても的を外さず再び手元に戻る、古ノルド語でいうところの粉砕するという意味を持つという雷神の槌、トールハンマーの如き恐るべきものであったと言えるだろう。

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